タレントマネジメントシステム開発のフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

市販のSaaSが独自の評価制度や後継者育成に合わない場合は、導入方式を自由度・費用・導入速度の3点で比べて選ぶと、自社の人材戦略に合わせやすくなります。

導入方式は、SaaS、パッケージ・オンプレミス、フルスクラッチとローコードの4つです。

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フルスクラッチ・オーダーメイド開発の概要

タレントマネジメントシステムを中心に、人事戦略や採用、評価などの活用領域を結んだ図
人材に関する複数の業務を一つの仕組みで扱います。

タレントマネジメントシステムは、人事戦略と経営戦略をつなぎ、人材活用を支えるシステムです。採用、配置、目標管理を一つのシステムで扱います。人事評価、育成、報酬も、同じ仕組みの中で管理します。

社員情報に加えて、キャリア志向や性格特性も蓄積します。さらに、過去の評価やエンゲージメントスコアも、データとして残します。こうしたデータは、次世代経営層の抜擢や組織全体のパフォーマンス向上に活用します。また、サクセッションプラン(後継者育成)も管理対象です。

既製品に頼らず、こうした機能を自社専用にゼロから作り上げる方法が、フルスクラッチ開発です。

スキル管理システムは、資格や専門技術、実務経験を扱います。稼働状況も扱い、現場の担当者が案件に合う人材を探して、短期の人員配置を決めるためのツールです。

一方、タレントマネジメントシステムは、定性情報も含めて人材を管理し、人事部や経営層が中長期の戦略的な意思決定に使います。こうした情報の幅と、意思決定の期間の長さの違いが、独自の評価基準や後継者育成の仕組みを作り込む動機になります。

方式を比べるときは、自由度、コスト、導入速度の3点を見ます。開発・導入方式は、SaaS(クラウド型)、パッケージ・オンプレミス型、フルスクラッチ、ローコードの4つで、それぞれこの3点のバランスが異なります。そのため、自社の要件や体制に応じて方式を選び、違いを理解しておくことが検討の前提になります。

SaaS・パッケージ・オンプレミス・ローコードとの違い

4方式は、自由度とスピード、コストのトレードオフで整理できます。自社の要件に合う方式を選ぶために、それぞれの特徴を比べます。

  • SaaS:導入が速く、初期投資を抑えやすい方式です。
  • パッケージ・オンプレミス:ライセンスを購入し、自社サーバーに導入して運用します。連携やカスタマイズがしやすい点が特徴です。
  • フルスクラッチ:既製品や雛形を使わず、要件に合わせて独自システムをゼロから設計する方式です。
  • ローコード:コード記述を最小限にし、用意された機能パーツを組み合わせて作ります。

SaaS(クラウド型)は、インターネットを通じて提供されるサービスです。業務フローは、ベンダーの仕様に合わせて調整する場合があります。さらに、独自の評価制度や後継者育成のロジックを反映できる範囲も、ベンダーの機能によります。

ローコードはSaaSより自由度が高く、パッケージやフルスクラッチより安価かつ短期間で構築できます。ただし、複雑な評価マトリクスや独自の抜擢ロジックの実装には限界があります。

フルスクラッチは、パッケージ型以上に最大の自由度を得られる方式です。一方で、コストと期間の負担も大きくなります。このため、どこまでの自由度が必要かを見極めることが、方式選びの出発点になります。

フルスクラッチを検討する前に確認すべき前提

まず、既製品では要件を満たせないかを確かめます。次の3点を順に確認すると、開発が本当に必要かを判断しやすくなります。

  • 標準機能:目標管理、多面評価、人材データ分析、後継者候補の一覧表示を確認します。
  • 不満の内容:機能が足りないのか、画面や操作性が合わないのかを切り分けます。
  • 要件の再現性:無料トライアルやデモで、独自の評価や後継者育成の運用が再現できるかを試します。

画面や操作性の不満であれば、設定変更や一部カスタマイズで解決できる場合があります。既製品の限界を確かめたうえで、フルスクラッチを候補に入れます。

この確認を省くと、既製品で満たせる要件にも多額の開発費を投じかねません。可能であれば、PoC(概念実証)や試作品を作り、ゼロから作る価値を見極めます。次に、試作の結果を踏まえて、既製品で代替できるかを経営層と事前に合意しておくことも大切です。

ポイント

方式は、自由度・費用・導入速度の3点で比べます。独自の評価制度や後継者育成にどこまで合わせたいかを先に決めると、方式を絞り込みやすくなります。

フルスクラッチのメリット・デメリット

独自制度やシステム連携への適合と、初期投資や保守体制の負担を4枚のパネルで示した図
制度への適合と社内で担う運用を並べて捉えられます。

フルスクラッチには既製品にない強みがある一方、相応の負担も伴います。導入前に、メリットとデメリットの両面を理解しておくことが大切です。

メリット:独自評価制度・サクセッションプランロジックへの完全適合とセキュリティ

フルスクラッチは、カスタマイズ性とシステム連携の自由度が高く、独自要件への適合を重視する企業で強みを発揮します。

  • 独自制度:MBO、OKR、コンピテンシー評価や部門ごとの運用に合わせて設計できます。
  • システム連携:人事基幹、勤怠管理、給与計算システムとの連携を設計します。
  • セキュリティ:外部ネットワークに依存せず、社内で管理する環境を構築できます。

複雑な条件を組み合わせた後継者育成の仕組みも、業務実態に合わせて設計・改修できます。システムの側を自社の人材マネジメントに適合させられるため、独自の評価制度や抜擢の考え方を持つ企業には大きな価値があります。また、標準的な連携の仕組みに縛られず、独自の運用要件に合う環境を作れます。

評価結果や報酬情報、後継者候補のリストは、漏えいが組織に大きな影響を及ぼしかねない機微情報です。そのため、社内管理の安心感を重視する企業もあります。

デメリット:莫大な初期投資と社内保守体制の必要性

フルスクラッチでは、SaaSのようにベンダーへ任せられない運用が社内に残ります。

  • 初期投資:既製品なら低コストの機能も、独自改修やサーバー構築、設計・実装の人件費で高額になります。
  • 保守体制:高度なITスキルを持ち、サーバー保守やセキュリティ対策を続ける専任者が必要です。
  • 継続改修:制度変更や機能追加のたびに、自社で開発を発注します。

保守体制がないと、更新が滞ったりセキュリティパッチの適用が遅れたりして、重大なリスクを抱えかねません。また、人事制度は事業環境や法令の変化に応じて見直されることが多いため、変更時の開発費は中長期の負担として見積もる必要があります。

SaaSでは、法改正への対応や機能改善、画面の改良をベンダーが行います。一方、フルスクラッチでは変更のたびに費用が発生するため、投資判断の中で慎重に検討する必要があります。

ポイント

独自の制度や連携、社内管理を重視するなら、メリットが活きます。一方で、初期投資と保守体制を社内で賄えるかが、判断の分かれ目になります。

費用・開発期間の目安

費用と期間は機能範囲で大きく変わるため、ここで示す目安は予算計画や社内稟議に役立ちます。初期費用とランニングコスト、SaaS型との費用・期間を比べます。

初期費用とランニングコストの目安

オンプレミスで構築する場合、初期費用は数百万円〜数千万円規模が一般的です。初期費用には、サーバー構築費、ソフトウェアライセンス費、カスタマイズ費用が含まれます。

完全なフルスクラッチで高機能にする場合は、評価ロジックや後継者育成の高度さ、既存システムとの連携数によって、数千万円以上になることも珍しくありません。一方、SaaSは契約後、短期間で運用を始められます。

  • 年間保守費用:月額ライセンス料はなく、維持管理費として初期費用の10%〜20%程度を毎年見込みます。
  • 開発期間:要件定義から実装、テストまで半年〜1年以上が目安です。
  • 稼働時期:人事評価サイクルに合わせ、希望時期から逆算して立ち上げます。

SaaS型との費用・期間比較

初期負担に加えて、利用人数や保有期間によって費用面の判断は変わります。従業員が少なく、スモールスタートを望む企業には、SaaSが合理的です。

  • SaaSの費用:初期費用は無料〜数十万円程度です。
  • SaaSの月額:1名あたり300円〜1,500円程度か、数十〜数百名規模で月額数万円〜数十万円程度が目安です。
  • フルスクラッチの初期費用:数百万円〜数千万円規模で、SaaSより導入時の負担が大きくなります。
  • 長期のTCO:5年〜10年で比べます。数千〜数万名の大企業では、SaaSの従量課金が積み上がり、フルスクラッチが有利な場合もあります。
  • 方式選び:導入速度も比較します。SaaSは契約後短期で始まり、フルスクラッチは半年〜1年以上かかります。

ポイント

費用は初期費用、年間保守費用、開発期間の3つで見ます。SaaSと比べる際は、5年〜10年のTCOで考えると、判断の偏りを減らせます。

フルスクラッチが向くケース・向かないケース

フルスクラッチに向く企業の条件として、独自の人事要件、厳格なセキュリティ、強力なIT部門を示したチェックリスト
3つの条件を同じ重みで照らし合わせます。

フルスクラッチは、自社の状況によって向き不向きが分かれる方式です。状況と照らし合わせて判断できるよう、双方の特徴を並べます。

向いている企業の特徴

次の条件に当てはまる企業は、フルスクラッチの自由度を活かせます。

  • 独自の人事要件:評価制度や人材管理に特殊な要件があります。
  • 厳格なセキュリティ:機密情報をクラウドに置けず、社内管理が必要です。
  • 強力なIT部門:構築後の保守、更新、セキュリティ対策を内製する専門人材がいます。

自社の制度をシステムに合わせるのが難しく、MBO、OKR、コンピテンシー評価などの独自運用に大規模な改修が必要な場合は、一から作るほうが現場の納得を得やすくなります。

厳格なセキュリティポリシーが必要で、クラウドでの機密情報の管理が社内規定で認められない企業には、オンプレミスでの厳密な管理が適します。条件がそろう企業は、経営戦略と連動した人材活用の基盤を構築できます。

向いていない企業の特徴

初期投資や保守体制の確保が難しい企業は、フルスクラッチ以外の選択肢も検討する必要があります。

  • コストと速度を重視:中小・中堅企業や、すぐに始めたい企業です。
  • IT人材が不足:サーバー管理や保守を担う体制がありません。
  • 制度変更が多い:事業環境の変化が速く、組織や評価制度が数年単位で変わる可能性があります。

中小・中堅企業にとっては、初期費用が無料〜数十万円程度、月額が従業員1名あたり300円〜1,500円程度のクラウド型が現実的な選択肢になります。SaaSで運用を始め、必要に応じて機能を広げていく方法は、多くの企業にとって取り入れやすい進め方です。

ただし、保守体制がなければ、システムの放置やセキュリティリスクにつながります。フルスクラッチは制度変更のたびに追加費用がかかります。変更頻度が高い場合は、プランや設定を柔軟に変えられるSaaSのほうが、コストを抑えられることもあります。

判断に迷う場合は、無料トライアルなどでSaaSの限界を確かめます。要件を満たせないと分かった時点で、改めてフルスクラッチを検討します。

ポイント

独自の人事要件、厳格なセキュリティ、強力なIT部門の3条件がそろう企業に、フルスクラッチは向いています。欠ける条件がある場合は、まずSaaSで運用を始める進め方が現実的です。

まとめ

導入方式は4つあり、SaaS、パッケージ・オンプレミス、フルスクラッチとローコードから選べます。方式選びは、自由度と費用、導入速度を比べることから始まります。

フルスクラッチの初期費用は数百万円〜数千万円規模で、高機能な場合は数千万円以上になることもあります。年間保守費用は初期費用の10%〜20%程度、開発期間は半年〜1年以上が目安です。

一方、SaaSは初期費用が無料〜数十万円程度です。月額は従業員1名あたり300円〜1,500円程度ですが、5年〜10年のTCOでは、数千〜数万名の大企業で従量課金が積み上がる場合もあります。

フルスクラッチは、MBO・OKR・コンピテンシー評価や後継者育成に適合させられ、外部ネットワークに依存しない環境も構築できます。こうした要件があり、強力なIT部門で保守を完結できる企業には、フルスクラッチが適します。

コストや速度を重視する中小・中堅企業、IT人材不足や頻繁な制度変更がある企業には、SaaSでのスモールスタートが現実的です。まず、無料トライアルやデモで要件を確認しましょう。

次に、既製品で不足する点が明確になったら、複数の開発会社にフルスクラッチの相談を始めます。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。