遺言信託管理システムの開発は、業務棚卸し、データ・権限・監査要件の定義、連携設計、段階リリースの順に進めると、長期案件の状態と証跡を一元管理できます。
費用相場や見積もりの確認点も説明します。システムの全体像は、遺言信託管理システム開発の完全ガイドもご覧ください。
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遺言信託管理システムの全体像
遺言信託管理システムは、金融機関や信託会社が受託する遺言信託・遺産整理の案件を管理するシステムです。
顧客情報、家族関係、財産、書類を一つの基盤にまとめます。そのうえで、契約、期日、承認、執行状況も同じ基盤で扱います。特に、遺言書を保管するだけの仕組みにとどまらず、長期案件の状態を担当者の記憶から切り離せる点に価値があります。
遺言信託と遺言代用信託の違い
要件定義では、遺言信託と遺言代用信託を別々の業務として扱えるよう、対象業務を分けておきます。
- 遺言信託:遺言書の作成支援・保管、定期確認、相続発生後の遺言執行を扱う業務です。
- 遺言代用信託:信託契約に基づき、委託者の死亡後に指定受取人へ財産を交付する仕組みです。
両者は契約データ、受託審査、金銭残高、決算、払出しの有無が異なるため、各段階を対象業務と対象外業務の一覧で定義します。案件は、受託前、受託中、定期照会を経て、死亡連絡後は相続発生後の段階に入ります。そこから遺言執行、会計・報告まで続きます。
境界が曖昧なままだと、文書中心の仕組みに信託会計を後から付け足したり、必要以上に大きな基盤を導入したりするおそれがあります。
ライフサイクル別に必要な機能
案件の段階ごとに管理対象を分けておくと、各段階で必要な機能を定義できます。
- 受託前:相談、委託者・受託者・相続人などの関係者、本人確認、家族図を管理します。財産、文案、書類徴求も対象です。
- 受託後:契約・遺言書の版、照会結果、財産・家族の変更、担当者の引継ぎ、次回アクションを記録します。
- 相続発生後:死亡連絡、戸籍・証明書、執行計画、稟議・決裁を追跡します。関係機関への照会、支払・払出し、完了報告も含みます。
共通機能には、期限・滞留アラート、版管理、職務分掌に応じた権限を含みます。さらに、承認履歴、操作ログ、帳票、検索、バックアップも備えます。
オービックの公式情報では、家族・財産情報の集約や台帳・関係図の出力が示されています。申込受付から定期照会、執行の稟議・決裁までの流れも載っており、自社固有の例外処理を加えるときの参考になります。
遺言信託管理システムの開発の進め方

開発は業務棚卸しから始め、データ設計、権限・監査、連携の順に進めます。その後、試作、移行、テストを経て、段階リリースへ進みます。
画面一覧を決める前に、案件の状態が変わる条件、承認者、保存する証跡を決めておきます。
業務棚卸しと要件定義
まず、現行の台帳やシステムを並べて、業務ごとの担当、期限、例外を整理します。
- 情報源:Excel、紙台帳、共有フォルダ、メール、顧客管理、文書管理が対象です。
- 業務単位:受付、遺言書作成、審査、定期照会で区切ります。死亡連絡、執行、完了報告まで整理します。
- 例外ケース:照会未実施、担当者退職、相続人の増減、財産評価資料の更新も含めます。
各業務では、入力者と承認者、期限、必要書類を決めます。あわせて、例外、保存期間、後続処理も定義します。
成果物は、業務フロー、機能・画面・帳票一覧、データ項目、権限表です。連携一覧、非機能要件、移行方針も成果物に含まれます。
金融機関では、RTO・RPOや利用可能時間、障害時の代替手順を定めます。加えて、ログ保存期間、再委託先、データ保管場所も決めておきます。こうした条件をRFPに載せると、各社の見積範囲を揃えられます。
パッケージ・クラウド・スクラッチの比較
方式ごとに、導入速度、独自対応、運用条件を比べます。そのうえで、業務との適合を確かめます。
- パッケージ:共通業務を早く導入できる方式です。
- クラウド・ASP:初期構築やバックアップ運用を抑えやすい一方、契約の中身に左右されます。
- スクラッチ:独自商品や深い連携に合わせられますが、法改正対応と保守要員が課題です。
パッケージでは、標準にない独自フローを追加し続けると、更新のたびに改修費が発生します。
クラウドやASPでは、データの所在や接続方式、再委託を契約で確認します。加えて、復旧やデータ返却の条件も確かめておきます。
既製品で案件・文書・ワークフローを支え、独自ロジックや基幹連携はAPI・アドオンで作る段階導入も候補になります。
選定時は、初期費用だけでなく、保守・改修・移行を含む5年分の総額で比べます。
数十年空く案件を想定したテストと移行
長期保管案件では、再開から執行までを想定します。通常の登録以外の動作も、業務側の受入テストで検証します。
- 長期案件:受託10年後の担当交代、住所・家族構成の変更、財産資料の差替え、死亡連絡を試す場面です。
- 例外処理:書類不足、承認者不在、複数人操作、誤帳票の可能性を確認します。
- 移行対象:顧客・関係者・契約の情報、遺言書の版、財産、書類、照会日、承認・操作ログを移行の対象に含めます。
紙の原本は、移行後の参照方法も決めておきます。また、名寄せや重複、欠損補完の責任を決め、移行後の照合件数も定めたうえで、少量のパイロットから始めます。
リリース後は、部署や案件を限定して段階的に稼働させ、問い合わせとアラートの実態を確認します。
遺言信託管理システムの費用相場とコストの内訳

公開されている価格は多くないため、個別に算定する必要があります。算定では、対象業務や利用者数、既存連携のほか、移行量、監査・BCP水準も踏まえます。
ここで示すのは、2026年時点の一般的な業務システム相場に、信託業務の追加要件を組み合わせた概算です。正式な予算は、要件定義の後に同じ前提で複数社から取得します。
規模別の費用の幅
導入規模ごとの費用と期間を並べると、検討の初期レンジをつかめます。
- 最小クラウド:初期50万〜300万円、月額10万〜100万円程度です。
- パッケージ:標準ワークフロー、顧客・財産・書類、承認、帳票に設定変更や軽微な追加を加え、1,000万〜5,000万円程度です。
- 中規模個別開発:申込、遺言書、定期照会、財産台帳、関係図、執行を一体化します。API、監査ログも含めて、3,000万〜1億円程度です。
- 大規模刷新:複数拠点、会計・基幹連携、本人確認、文書保管、BCP、既存データ移行まで含み、1億〜数億円以上です。
目安として、パッケージ導入は6〜9か月程度、中規模開発は6〜15か月程度です。大規模刷新は、12〜24か月を超える可能性があります。
対象業務や連携が増えると、画面数よりも、データ・権限・テストの工数が増えます。
一般的な2026年相場は、小規模で100万〜300万円、中規模で500万〜1,000万円、大規模で1,000万円〜数千万円以上です。
人月単価は60万〜200万円程度とされています(出典:SIA「システム開発の費用・相場 2026年版」、2026年7月)。
遺言信託では、監査・セキュリティ・長期保守の比率が高いため、一般相場をそのまま当てはめられません。
開発費以外も含めた5年TCO
工程ごとの初期費用と運用後の継続費を分けて、5年分の総額を見積もります。
- 要件定義:初期費用の10〜20%を仮の配分とします。
- 設計・開発:40〜50%が目安です。
- テスト:15〜25%を見込みます。
- 管理・監査資料:10〜15%、インフラ・移行は10〜25%の割合です。
この比率は、会計連携や大規模移行によって変わる管理用のモデルで、固定の正解ではありません。見積書では、工程別の人月と単価を確認します。あわせて、成果物、前提、除外事項も見ておきます。
運用後は、クラウド料、保守、問い合わせ、診断、バックアップ、監視の費用が続きます。加えて、法改正・商品改定、帳票、教育、再移行の費用も発生します。
初期費用が2,000万円でも、年間保守500万円と追加改修が続けば、5年TCOは大きく変わります。そのため、平常運用や障害対応、制度変更、契約終了時のデータ返却まで含めて、5年分のキャッシュフローで比べます。
費用を押し上げる要因(連携・移行・監査)
見積もりに差が出やすい要件を整理し、業務上必要な水準を初期条件に含めます。
- 連携・帳票:API本数、基幹接続方式、帳票種類による工数の違いです。
- データ・業務:データ品質、例外フロー、権限、承認段階ごとの差です。
- 監査・継続性:ログ保存期間、可用性、災害対策が費用を左右する要素です。
たとえば、財産情報の履歴を入出金、評価、異動まで管理し、その内容を複数の帳票に反映する場合は、画面を一つ足す程度では収まりません。
扱う情報には、個人情報のほか、家族関係、財産、遺言内容、相続税関連情報も含まれます。
金融分野のガイドラインはアクセス制御や情報システムの監視などを示します(出典:個人情報保護委員会・金融庁「金融分野における個人情報保護に関するガイドライン」、2024年版)。
安全管理、委託先監督、内部不正対策を見積条件から外すと、後工程で追加費用が発生しやすくなります。そのため、要件定義の時点で費用に含めます。
遺言信託管理システムの見積もりを取る際のポイント

見積もりの精度は、発注側が前提条件をどこまで示せるかで決まります。誰が何をいつ登録・承認し、どの証跡を残すかまで示すと、各社の見積もりを同じ条件で比べやすくなります。
見積書では、金額に加えて、含まれる範囲と含まれない範囲を確認します。
RFPの記載内容(機能・データ・非機能)
機能、データ、非機能の3層を揃えておくと、各社の提案と見積もりを比べられます。
- 機能:顧客・関係者、家族図、財産台帳を定義します。書類版、期日アラート、定期照会も含みます。死亡連絡、執行、稟議・承認、帳票、検索、通知も必要です。
- データ:必須項目、履歴、原本との関係、保存期間、削除・訂正の手順、名寄せの取り決めです。
- 非機能:認証、権限、ログ、暗号化を定めます。復旧、委託、所在、返却形式も含めます。
遺言書は現行版と過去版を区別し、誰がいつ変更したかを追えるようにしておきます。
非機能要件には、多要素認証、職務分掌、監視、バックアップを含めます。復旧目標、脆弱性対応、障害連絡も必要です。
FISCの安全対策基準・解説書は改訂されるため、2026年時点で適用する版と、発注者の業態や重要度に応じた採用範囲をRFPに明記します。
基準名を書くだけでなく、要件、証跡、テスト方法まで記載すると、各社の提案を比べる材料になります。
複数社の同一シナリオと5年TCOでの比較
各社に同じ業務シナリオとデータ量を渡し、標準機能から保守までを共通の区分で見積もってもらいます。
- オービック:遺言信託・遺産整理の業務全体を扱う公式情報を公開しています。
- BIPROGY:TrustPORT個人信託システムで、遺言代用信託、認知症対応型金銭信託、遺贈寄付信託などの案内があります。
- NRI:BESTWAY/金銭信託を共同利用型で提供し、百数十社の利用が公表されています。
公開されている機能は比較の起点になりますが、自社への直接の実績や契約条件は提案時に確認します。
NTTデータグループは2026年4月、相続手続き一元化基盤「みらいたすく」の構築に向けた基本合意を公表しました。同基盤は、金融機関をまたぐ手続きの共通化・標準化を目指します(出典:NTTデータグループ「みらいたすく」基本合意、2026年)。
将来、外部基盤や標準APIと接続する場合に備えて、APIの所有権、仕様変更費用、終了時の移行方法を確認します。
業務側の責任者の配置
社内では、業務責任者を中心に役割を分けておきます。
- 業務責任者:信託・相続実務を理解したうえで、優先順位と受入判定を担います。
- 情報システム・セキュリティ:情報システム責任者とセキュリティ担当が、技術要件と安全管理を見ます。
- 法務・現場代表:法務・コンプライアンス担当と現場代表が、業務の内容を確認する役割です。
開発会社に任せきりにすると、社内の暗黙のルールが仕様にならないまま、終盤に追加要件が集中するおそれがあります。
要件凍結や変更承認、追加費用の扱いを契約で定めます。検収の条件を決め、障害時に誰がどこまで責任を負うかも明らかにします。
IPAの2026年の脅威順位では、組織向けの1位がランサム攻撃、2位がサプライチェーンや委託先を狙った攻撃、7位が内部不正による情報漏えいです(出典:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」、2026年)。
再委託先、アカウント、ログ監視、バックアップからの復旧訓練も、見積と契約に含めます。
よくある質問
一般的な顧客管理システムとは違い、長期保管と書類の真正性を保つ仕組みが必要になります。さらに、家族・財産情報を扱い、承認と監査を経て、相続後の執行まで担います。
導入前によくある疑問に、費用や方式、セキュリティ、期間の観点から答えます。
遺言信託管理システムの開発費用はいくらですか?
最小限のクラウド導入は初期50万〜300万円程度、パッケージ導入は1,000万〜5,000万円程度、個別開発は3,000万〜1億円程度が目安です。
信託会計や勘定系連携、厳格な監査、移行、BCPを含めると、1億円を超えることがあります。公開相場は参考値のため、対象業務と5年分の保守・改修費をそろえて見積もります。
パッケージとスクラッチ開発はどちらがよいですか?
共通業務が多く、早期導入と標準保守を重視する場合は、パッケージやクラウドが候補です。
独自商品や複雑な執行、深い基幹連携が重要であれば、スクラッチやアドオンを検討します。選ぶ際は、適合度、改修性、法改正、5年TCO、直接実績を見ます。
金融機関向けのセキュリティ要件はどこまで必要ですか?
必要な水準は、業態、重要度、基幹接続、利用形態によって変わります。そのうえで、役割別の制御、多要素認証、暗号化、ログ、脆弱性管理を要件に含めます。加えて、バックアップ、復旧訓練、委託先管理も要件にします。
FISC基準や金融庁のサイバーセキュリティ指針を参照し、採用する対策と検証方法を決めます。適合の説明だけでなく、提示できる証跡と、その時期も確認します。
開発期間はどれくらいかかりますか?
導入方式や連携の規模ごとの期間は、初期計画の目安として使えます。
- クラウド:最小構成なら1〜3か月です。
- パッケージ:6〜9か月程度です。
- 個別開発:中規模は6〜15か月、大規模連携型は12〜24か月超です。
期間を短くするには、対象業務と移行範囲を絞ったうえで、標準機能を優先して段階的にリリースします。
金融・相続業務では、受入テストや監査資料を省略できません。そのため、納期だけを先に固定しないほうが安全です。
まとめ
遺言信託と遺言代用信託の範囲を分けたうえで、受託前から相続後の執行までを整理します。
顧客や家族、財産、書類の情報を、期限や承認、監査ログとあわせて、データと業務フローに落とし込みます。
発注前の対象業務と優先順位の確定
第一段階は案件、書類、期限、承認に絞り、財産評価や会計連携は第二段階に回す方法があります。
業務責任者が、標準機能に合わせる範囲と独自機能を決めておくと、開発会社との認識の差を抑えられます。
導入後の保守と引継ぎ
費用の幅は、公開相場と要件から算出した概算です。運用後の保守や引継ぎの条件とあわせて確認します。
- 費用の目安:最小クラウドは初期50万〜300万円、パッケージは1,000万〜5,000万円、個別開発は3,000万〜1億円、大規模刷新は1億〜数億円以上です。
- 5年TCO:要件定義、連携、移行、監査、保守、法改正を含む5年分の総額で判断します。
- RFPの記載事項:権限、ログ、暗号化、復旧、委託先を記載します。データ返却と検収条件も含めます。
- ベンダー比較:同じシナリオを示し、長期案件を引き継ぐ設計、相続・信託実務の理解、法改正・障害時の保守体制を確認します。
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会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
