試験検査管理システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

試験検査管理システムの進め方は、要件整理から定着まで6フェーズに分けると整理しやすくなります。

検体から承認済み成績書までの履歴を追える設計が大切です。品質管理システムに含める範囲は企業ごとに異なり、LIMSやQMS、MESとの境界で必要な機能も変わります。

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試験検査管理システム開発の全体像

試験検査管理システム開発の全体像を、検査記録層、試験室業務層、品質保証層、製造実行層の4層で示した図解
対象範囲を層に分けて整理

試験検査管理システムは、原材料から出荷品までの検査業務を、検査依頼から成績書の発行まで一貫して管理する仕組みです。

業務の中心は、対象ロットや検体を特定し、適用する試験方法と規格を決めて測定結果を記録することです。そのうえで、承認済みの記録として後から追跡できる状態にします。

対象範囲の4つの層への分け方

対象範囲は4つの層に分けると整理しやすくなります。検査記録層は、検査依頼、検査値、合否、成績書を扱い、紙やExcelからの移行を始めやすい領域です。さらに、試験室業務層は、検体の採取・保管、試薬、分析機器、試験スケジュール、再試験などを含みます。

品質保証層は、不適合、逸脱、是正処置、承認、監査証跡を扱います。製造実行層は、MESや生産管理と接続して、ロットの状態や出荷可否を連携します。この区分をしないまま「品質管理システムを作りたい」と依頼すると、検査担当者が欲しい入力画面と、品質保証部門が必要とする証跡機能が同じ見積項目に混ざります。

要件整理では、今回のリリースに含める層、将来連携する層、対象外にする層を明記してください。特にLIMSを導入する場合は、試験室のサンプル管理まで必要なのか、製造ラインの検査記録が中心なのかを切り分けることが重要です。

管理するデータの流れの描き方

機能一覧を集める前に、データの流れを1枚に描きます。製造指図やロット情報を受け取り、検査依頼を発行し、検体番号を付け、採取・保管・測定を行います。次に、結果を入力または装置から取り込み、規格判定、承認、成績書発行、出荷判定へ進みます。

途中で不合格、再試験、測定値の訂正、規格改訂、通信断が起きた場合に、どのデータを残すかも同じ図に入れます。たとえば、検査値だけを保存しても、どの試験方法の版を使ったか、どの機器で測定したか、誰が承認したかが分からなければ、品質記録として十分に再現できません。試験方法、規格、単位、測定機器を、担当者や時刻、変更理由と関連付けるデータモデルを、初期段階で検討します。

Thermo Fisher Scientificの製造業用SampleManager LIMSも、サンプル、機器、試薬、外部システム、監査証跡を連携させる考え方を示しています(出典: Thermo Fisher Scientific「製造業用LIMS」、2026年確認)。

ポイント

今回含める層と、将来連携する層、対象外の層を分けて判断します。データの流れも、検体から成績書まで1枚の図で追えるかを基準にします。

試験検査管理システムの進め方と6フェーズ

試験検査管理システムの進め方を、要件整理、選定、設計開発、テスト、稼働の時系列で示した図解
各フェーズの終了条件を確認して進行

試験検査管理システムは、要件を決めてすぐ開発に入るより、現場の例外処理とデータの責任範囲を先に確かめ、段階を追って進める方が安全です。

進め方は6フェーズに分け、要件整理、選定、設計開発の順に進めます。テスト、稼働、定着は、その後に続きます。

各フェーズの終了条件を決めておくと、議論が「画面を増やすかどうか」だけに偏らず、品質・費用・納期のバランスで判断できます。

フェーズ1:要件整理による現状とあるべき姿の定義

要件整理では、検査依頼から再試験までの担当者と判断を業務フローに描きます。紙やExcel、測定機器の専用ソフト、メール、基幹システムのどこで情報が生まれ、どこで転記されているかも確かめます。

ヒアリングは、検査員と品質保証の担当者を中心に行ってください。管理職や製造の担当者、情報システムや監査対応の担当者にも、同じ業務フローの中で話を聞きます。

要件定義書には、対象品目とロット数、検査項目数を書き込みます。拠点数、ユーザー数、保存期間も、同じ項目として書き込みます。

そのほか、成績書の種類、規格マスタの改訂方法、権限、承認ルート、必要な連携も記載します。さらに、装置から値を取り込めないとき、承認後に訂正が必要なとき、同じ検体を再試験するとき、規格改訂の適用日をまたぐときの処理を文章で定義します。

定義した処理が曖昧なままだと、正常系のデモは通っても、本番で現場がExcelに戻る可能性が高くなります。

フェーズの終了条件は、現状と将来のフロー、対象範囲、優先順位、非機能要件、受入条件の承認です。

非機能要件には、次の項目を含めます。

  • 稼働条件:利用可能時間、バックアップ、障害時の復旧目標
  • 操作の記録:操作ログ、アクセス権限
  • 外部との境界:ネットワーク分離
  • 保管と機密:データ保存、個人情報や顧客機密の扱い

2025年にJEITAが「工場のためのセキュリティ対策策定ガイドライン」を公開しているため、クラウド接続や工場ネットワークとの境界も、要件整理の段階で確認する必要があります(出典: 一般社団法人電子情報技術産業協会「工場のためのセキュリティ対策策定ガイドライン」、2025年)。

フェーズ2:選定での標準機能と差分の見極め

選定では、SaaS、パッケージ、ローコード、フルスクラッチのどれが自社に合うかを判断します。各案が候補になるのは、次のような場合です。

  • SaaS:短期間で検査票と承認を始める場合
  • LIMSパッケージ:標準的な試験室ワークフローや監査証跡を広く使う場合
  • スクラッチ:独自の検査業務が競争力に直結し、長期運用を担える場合

実務では、品質データの中核をパッケージで管理し、固有の入力画面や帳票を追加設定して、基幹連携をAPIで行う構成も選びやすい方法です。

比較表の機能欄は、まず標準のまま使えるものと、設定で対応するものを分けます。次に、追加開発が要るもの、外部製品が要るもの、実績がないものを分けて書きます。

機能欄を「対応・非対応」だけで書くと、差が見えなくなります。

追加費用、納期、保守への影響も記録します。

株式会社ユー・エス・イーのQC-Oneは、検査値入力、規格管理、成績表出力、承認、統計分析、外部システム連携を機能単位で拡張でき、検査装置連携は装置ごとの個別開発になる場合があると説明しています(出典: 株式会社ユー・エス・イー「品質管理システム|機能一覧」、2026年確認)。

デモでは、実データに近い条件で、正常な検査登録、装置のデータ形式、検査依頼との紐付けを確かめます。規格の上限・下限、複数単位、再試験も、同じ条件で見ます。結果訂正、承認後のロック、成績書の再発行も確かめます。

製品名より、自社の装置と既存システムを、どの方式で、誰が、どの費用で接続するかを選定の中心に据えます。

フェーズ3:設計開発での入力と証跡の両立

設計では、現場が迷わず入力できる画面と、後から検証できるデータ構造を両立させます。検査員向けの画面には、対象ロット、検査項目、単位を一画面にまとめます。規格と入力値、合否も、その画面で扱えるようにします。

注意事項も、同じ画面で確認できるようにします。

バーコードやQRコードで検体番号を呼び出せるようにすると、転記を減らせます。

品質保証向けには、承認待ちと逸脱、再試験の状況を一覧にします。規格改訂や未処理の検査も、一覧に入れます。

マスタ設計では、品目、ロット、検体、検査項目、試験方法を分けます。

規格、単位、装置、試薬も分け、担当者、権限、成績書様式とともに、版数と適用開始日を持たせます。

規格を上書きする設計では、過去の検査結果を再現できません。承認後の変更は、次の内容を履歴に残します。

  • 変更内容:変更前後の値と、変更の理由
  • 誰がいつ:変更者と変更日時
  • 承認し直し:再承認の有無

元データは削除しない設計にします。装置連携では、通信方式、ファイル形式、測定値の単位、エラーコード、再送方法を機器ごとに設計します。

また、重複取込の防止と、通信断時の一時保存も設計します。ERPやMESとの連携では、どのシステムを正とするか、欠損や不整合が起きたときに誰が直すかまで決めます。

設計レビューの終了条件は、画面・帳票・データ項目・連携仕様が、権限・例外処理・受入テスト項目と対応付けられていることです。

フェーズ4:テストでの異常系の実データ検証

テストは、画面が表示されるかだけでなく、業務の最初から最後まで記録がつながるかを確認します。

単体テスト、連携テスト、業務シナリオテスト、性能テストを分けて実施します。さらに、権限テスト、セキュリティテスト、受入テストも分け、誰が何を確認したかを記録します。

品質システムでは、正常系の合格データより、不合格、再試験、保留、訂正、取消、承認差し戻しの扱いが本番運用を左右します。

異常系は、条件ごとにテストを分けて一つずつ動きを確かめます。確かめる対象は次の5つです。

  • 重複・再送:検査依頼の二重登録、装置からの測定値の再送
  • 単位・規格:表記の食い違い、適用日が変わる際の判定、測定値の上限超過
  • 再試験:結果が変わった場合の扱い
  • 承認・登録:承認者が不在の場合、誤ったロットへの登録
  • 通信障害:通信が途切れた場合の対応

テストデータは、現場で実際に使う桁数、文字列、画像、添付ファイル、成績書様式を使います。

受入基準は、「使えると思う」という感覚ではなく、確認可能な条件で表します。例として、測定値の取込成功率、検査受付から承認までの時間、成績書発行時間、エラー時の復旧手順、監査ログの検索結果が挙げられます。

装置連携の成功率や処理時間は、本番相当の件数で確認します。未解決の不具合は、重大度と暫定運用を記録します。テストで現場の入力負荷が高いと分かった場合は、稼働前に画面や運用を修正することが大切です。

フェーズ5:稼働での小規模な開始と安全な切り替え

初回稼働は、全工場・全品目を一度に切り替えるより、1工場、1ライン、代表的な1製品群などに絞る方が安全です。

対象を絞ると、マスタ登録、データ移行、教育を現実的な範囲で検証できます。装置連携、帳票、問い合わせ対応も、同じ範囲で確かめます。

選定した代表フローで、検査受付から成績書発行までの処理が完結し、現場のKPIが改善したことを確認してから、対象を広げます。

切り替え前には、マスタの最終承認、ユーザーと権限の登録、旧Excelの参照方法、未完了検査の扱いを確認します。加えて、紙帳票を残す期間、障害時の連絡先、バックアップ復元、サポート窓口も確かめます。

過去データは、すべて移行するとは限りません。法令・顧客要求・監査で必要な期間と、日常参照に必要な期間を分けて決めます。移行対象、移行しない対象、アーカイブの検索方法を文書化してください。

稼働初日は、現場にシステム操作が分かる担当者を置き、次の場面を立ち会いで確認します。

  • 依頼の入口:検査依頼、装置取込
  • 確定と出力:承認、成績書発行
  • 例外:エラー対応

一定期間は旧運用と新運用を並行させる方法もあります。ただし、二重入力が長期化すると負担が増えるため、並行期間と終了条件を決めておくことが大切です。特に重大な品質記録は、障害時に紙や一時ファイルで受け付ける代替手順と、復旧後の再登録・照合手順も用意します。

フェーズ6:定着でのKPIと改善サイクルの運用

稼働後の定着では、操作説明会を一度開催して終わりにせず、利用状況と品質成果を定期的に確認します。教育は、次のように役割ごとに分けて行います。

  • 検査担当者:入力手順
  • 品質保証担当者:承認・訂正・監査ログ
  • 管理者:マスタ改訂と権限管理
  • 情報システム担当者:障害・バックアップ・連携監視

役割別の短い手順書と、よくあるエラーの解決手順を用意すると、問い合わせを減らせます。

KPIには、入力時間、検査受付から承認までのリードタイム、成績書発行までの時間を含めて確認します。転記ミス件数、承認差し戻し件数、不適合の処理期間も見ていきます。監査資料の準備時間、装置連携エラー件数、利用率も、あわせて確認します。

報告は、部門ごとの成果に結び付けます。たとえば、経営層には出荷判定の早期化や顧客回答の速さを、現場には入力負荷と手戻りの減少を、品質保証には証跡の検索性を伝えます。3か月、6か月、12か月などの節目で、未使用機能、現場の回避運用、規格改訂の負担、装置追加を確認し、権限も見直します。

AIを使う場合は、まず異常値候補の抽出、類似結果の検索、試験方法や規格文書の検索、再発傾向の分析から始めると安全です。合否判定の自動化は、その後に検討します。元データの定義、履歴、コード、単位が整っていなければ、AIの分析結果も信頼しにくいため、先にデータ品質を改善します。

ポイント

各フェーズの終了条件を満たしたかどうかで、次の段階に進むかを判断します。画面の追加だけでなく、品質・費用・納期のバランスで見てください。

試験検査管理システムの費用相場とコストの内訳

試験検査管理システムの初期費用を、SaaS、パッケージ、フルスクラッチの横棒で比較した図解
初期費用と5年TCOを分けて比較

試験検査管理システムの費用は、対象範囲や拠点数、ユーザー数、検体数、検査項目で変わります。さらに、装置や既存システムとの連携、データ移行、電子署名、監査証跡、教育、保守の範囲でも変わります。

公開価格が少ない領域のため、ここで示すのは正式見積ではなく、予算を検討するためのレンジです。

LIMSや複数工場の構成は個別条件による差が大きいため、金額だけを製品間で単純比較しないでください。

構成別の初期費用と導入期間の目安

構成ごとの初期費用と導入期間は、次の範囲を一つの検討レンジとして扱います。これらの金額は、公開されている品質管理システムの費用目安と、NotebookLMの製造業システム相場を組み合わせた予算検討用のレンジです。

  • SaaS:検査票、承認、簡単な帳票をクラウドやSaaSで小さく始める場合。初期費用30万〜100万円、月額3万〜15万円、導入期間1〜3か月程度
  • パッケージ:帳票やマスタ設定を加える場合。初期費用300万〜1,000万円、導入期間3〜6か月程度
  • パッケージ+ERP・MES・検査装置の連携:初期費用1,000万〜3,000万円、導入期間6〜12か月程度
  • 大規模構成:複数工場、多数の装置、LIMSまたはQMSの広い範囲、複数言語などを含む場合。初期費用3,000万〜8,000万円、導入期間12〜18か月程度

大規模構成は対象範囲によって幅が大きくなるため、上記の数字は目安として見てください。

独自業務をフルスクラッチで作る場合は5,000万〜1億円超、導入期間12〜24か月以上となる可能性があります。ただし、これらは公開価格ではなく、類似する製造・品質システムから推定したレンジです。

株式会社riplaが2026年に公開した品質管理システムの費用情報では、SaaS型の初期費用は数十万円〜100万円程度、月額は3万〜15万円程度とされています。国内パッケージ型は、初期費用100万〜1,000万円程度、導入期間3〜6か月が目安とされています(出典: 株式会社ripla「品質管理システム開発の保守・運用費用・ランニングコストについて」、2026年)。

試験検査領域では、装置接続、データ移行、規格・帳票の複雑さが加わるため、同じ提供形態でも上限側に寄ることがあります。

初期費用に加えた5年TCOでの比較

見積書では、次の区分ごとに分けて記載してもらいます。

  • 開発工程:要件定義、基本設計、詳細設計、画面・帳票開発、マスタ設定
  • 連携・移行・インフラ:装置連携、ERP・MES連携、データ移行、インフラ
  • テスト・教育・稼働支援・保守:それぞれ分けて記載

NotebookLMの製造・生産システム相場では、開発費の配分として次の割合が一つの確認材料になります(出典: NotebookLMリサーチノート「生産・製造」、2026年)。

要件定義は10〜12%程度、設計・環境構築は22〜24%程度です。実装は48〜50%程度、テストは15〜17%程度です。

厳密な標準比率ではありませんが、実装だけが極端に大きい見積を確認するきっかけになります。

ランニングコストは、運用・保守と、変更・拡張の2つに分けて見込みます。運用・保守には、利用料またはライセンス保守、サーバー・クラウド費、バックアップを含みます。監視や問い合わせも含みます。

変更・拡張には、OSやミドルウェア更新、規格・検査基準の改訂、帳票追加を含みます。装置増設、データ保管、教育も、ここに加わります。

SaaSは月額に更新や基盤保守が含まれる場合がある一方、パッケージやスクラッチは変更のたびに追加費用が発生しやすくなります。

5年間の初期費用、継続費、追加改修費、自社運用工数を足し、停止や品質事故のリスクも比較します。費用を抑えるには、最初のリリースで検査記録・承認・成績書に集中し、統計、不適合、装置連携、MES連携、複数拠点を段階的に追加する方法が有効です。

ただし、後から拡張できるように、ロット、検体、試験方法、規格、承認、履歴の基本データ構造は初期に設計します。画面を削ることと、将来の拡張性を削ることは別であるため、優先順位を分けて判断してください。

ポイント

費用は、初期費用に加えて月額、保守、追加改修、自社運用の工数を合わせた5年TCOで比べます。金額は予算検討の目安として扱ってください。

見積もりを取る際のポイントとチェックリスト

試験検査管理システムの見積もりは、合計金額よりも、何を前提にした金額かを確認することが大切です。

依頼時には、業務フロー、対象品目・ロット、ユーザー・拠点を渡します。加えて、次の情報も示します。

  • 検査の中身:検査項目、帳票サンプル
  • つなぐ先:装置一覧、既存システム
  • 過去の記録:移行データ、保存期間
  • 前提の条件:権限、監査要求、希望時期

情報が足りない場合は、確定見積ではなく概算見積とし、追加調査の費用と次の見積段階を明確にします。

項目別の見積範囲と前提条件の確認

見積書で最初に確認するのは、対象範囲と対象外です。検査記録、検体管理、規格マスタの各機能が、どの区分に当たるかを確かめます。装置連携、成績書、不適合も同じように確かめます。区分は、標準機能、設定、追加開発、別途費用の4つです。統計、承認、電子署名、監査証跡、ERP・MES連携も、どこに当たるかを見てください。

特に「連携一式」「帳票対応一式」「移行一式」と書かれている項目は、対象本数、方式、テスト回数、エラー対応を質問してください。装置連携では、装置のメーカー・型式・台数、データ出力形式、接続場所を提示します。加えて、通信方式、リアルタイム性、再送、重複取込防止の扱いも伝えます。

既存システム連携では、マスタ、検査依頼、ロット、結果、出荷可否のどれを連携するか、連携頻度、失敗時の通知と再処理を決めます。データ移行では、過去何年分を移すか、欠損や重複をどう扱うか、移行後の照合を誰が行うかを分けて見積もります。

複数社の同条件での比較と実機デモ

複数社に依頼する場合は、同じ業務フロー、帳票、装置条件、連携条件を渡し、比較可能な形式で回答を求めます。評価軸は、機能適合だけでなく、同業・同規模の実績、装置連携の実績、国内サポートを含めます。さらに、導入支援の範囲、標準機能と追加開発の境界、保守の応答時間、データの所有権、契約終了時のデータ返却も見ます。

比較は、最安値ではなく、5年TCOと業務停止時の対応力で行います。デモでは、自社の代表的なロットを使って、検査依頼の受付から成績書発行までを通してもらいます。

次に、規格外、再試験、結果訂正、承認差し戻しを実演してもらいます。さらに、装置データの再送、通信断、権限不足も見せてもらいます。質問に「対応可能」と答えるだけでなく、標準機能か、設定か、追加開発か、外部連携かを区別して記録します。さらに、実際の画面・ログ・帳票で確認できたかも残します。

契約前に決める追加費用の扱いと受け持ち範囲

システム開発では、要件変更や規格改訂が追加費用につながります。装置追加、データ移行の不備、利用者教育の不足も、費用を押し上げる要因になります。

契約前には、変更管理の手順、追加見積の単価、承認者、納期への影響を確認します。さらに、瑕疵対応、保守範囲、バージョンアップ、障害時の連絡時間も確かめます。

検査基準や帳票を自社で変更できる範囲と、ベンダーに依頼する範囲も決めておくと、稼働後の予算が読みやすくなります。

受け持つ範囲は、次のように区分します。

  • 装置・基盤:装置側のデータ出力、ネットワーク、認証基盤、クラウド、バックアップ
  • データと運用:データの正確性、検査結果の承認、運用手順

工場とクラウドや外部サービスをつなぐ場合は、次の事項を要件に含めます。

アカウント管理、ネットワーク分離、アクセスログは、工場と外部をつなぐ要件として含めます。委託先の権限や、インシデント時の報告と復旧も、要件に含めます。

経済産業省は2025年に半導体デバイス工場向けOTセキュリティガイドラインを公表しており、製造現場の停止リスクを含めたセキュリティ設計が重要になっています(出典: 経済産業省「OT Security Guidelines for Semiconductor Device Factories」、2025年)。

見積比較の最終チェックでは、回答の有無を確認してください。対象範囲と、標準・設定・追加開発の区分は、回答が揃っているかを見ます。装置と基幹の連携、データ移行も、回答が揃っているかを確かめます。

テストと受入条件、教育と稼働支援、保守とSLAについても、回答を確かめます。最後に、規格改訂・帳票変更、バックアップと復旧、5年TCOの回答も確認します。

回答できない見積は、合計金額が安くても比較材料としては不十分です。

ポイント

見積もりは、合計金額より前提条件で比べます。連携や移行、教育などを一式で書いた項目は、対象本数や方式、テスト回数を質問してから判断してください。

よくある質問

導入では、対象範囲、既存システムとの違い、費用、導入期間についての質問がよく寄せられます。自社の検査業務に当てはめやすいよう、代表的な質問を取り上げます。

試験検査管理システムとLIMSやQMSは何が違いますか?

試験検査管理システムは、試験・検査の流れ全体を管理する仕組みの総称として使われます。検査依頼や検体、測定値、規格判定、承認、成績書などが対象になります。

LIMSは、試験室のサンプル、分析機器、試薬、試験ワークフロー、結果を管理する製品カテゴリです。一方、QMSは不適合、是正処置、監査、文書など品質保証全体を扱うカテゴリです。

製品によって重なる範囲があるため、名称ではなく必要な業務とデータで比較してください。

試験検査管理システムは小規模に導入できますか?

小規模な導入は可能です。まず1ラインや1製品群を対象に、検査依頼、検査結果入力、承認、成績書発行に絞り、代表的な業務が定着してから、不適合、統計、装置連携、複数拠点へ拡張する方法が現実的です。

将来の拡張に備えるため、ロット、検体、試験方法、規格、承認履歴の基本構造は、最初から再利用できるように設計します。

検査装置との連携は必ず必要ですか?

必須とは限りませんが、測定件数が多い、転記ミスが問題になっている、測定値の正確性や追跡性が重視される場合は、連携を優先的に検討します。

装置の機種、出力形式、通信方式、接続環境によって個別開発が必要になるため、見積時に装置一覧とサンプルデータを提示してください。

連携しない装置がある場合は、手入力時のダブルチェック、入力制限、元ファイルの保管、照合方法を、運用として定義します。

導入費用はどのくらいから検討できますか?

検査票・承認・帳票に絞ったSaaS型では、初期費用30万〜100万円、月額3万〜15万円程度が一つの予算検討レンジです。

次の要素を含めると、数百万円から数千万円規模になる可能性があります。

  • 製品と装置:パッケージ、装置連携
  • 基幹と拠点:ERP・MES連携、複数工場
  • 証跡と移行:監査証跡、データ移行

公開価格が少なく条件差が大きいため、本文の金額は相場の目安であり、正式な予算は対象範囲と前提条件をそろえた見積もりで確認してください。

ポイント

名称より必要な業務で比べ、小規模な範囲から始められるかを判断します。装置連携の要否は、装置一覧とサンプルデータを示して見積もりで確かめてください。

まとめ

試験検査管理システム開発の進め方は、要件整理から定着までの6フェーズに分けると見通しを立てやすくなります。

まず対象範囲を4つの層に切り分けます。そのうえで、ロットや検体、試験方法、規格がどう測定値や承認、成績書につながるかを定義します。

成功のために最後に確認する項目

成功のポイントは、機能数や初期費用だけで判断しないことです。現場の例外処理、装置・基幹システム連携、承認後の訂正、規格改訂、監査証跡を見積もりに含めます。バックアップと復旧、教育、保守も加えて、正常系と異常系の両方を実機に近い条件で確認します。

費用は、初期費用、月額・保守、追加改修、自社運用工数を合わせた5年TCOで比較します。全社を一度に対象にするより、代表的な1ラインや1製品群でPoCを行います。入力時間、承認リードタイム、転記ミス、成績書発行時間、装置連携エラー、監査資料の準備時間などのKPIを確認してください。

まず、現場が使い続けられ、品質データを追跡できる状態をつくります。そのうえで、統計、不適合、複数拠点、AI活用へ広げます。この順序が、長期的に無理のない進め方です。

最初の一歩となる業務フローと代表データの洗い出し

これから検討を始める場合は、現場で使っている検査票、成績書、Excel、試験方法、規格表、装置一覧を集め、代表的な1ロットの流れを図に描いてください。

発注側では、手作業の転記、判断が人に依存する箇所、記録を探す時間、連携したいシステム、例外処理を洗い出します。

洗い出しができれば、ベンダーへの相談内容が具体化し、過剰な機能や見積もりの抜け漏れを抑えられます。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。