旅行・観光業界のシステムのパッケージ/クラウド製品一覧

旅行・観光業界のシステムは、GDS(グローバル流通システム)、地域データ基盤、周遊・インバウンド支援の3つに分けて見ると、課題に合う製品を選びやすくなります。

提供形態、主要製品、課題別の絞り込み方の順に見ていきます。各テーマの詳細は関連記事でも確認できます。

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・旅行・観光業界のシステム開発の完全ガイド

パッケージ型とクラウド型 旅行・観光業界のシステムの違い

パッケージ型の自社運用とクラウド型のベンダー運用を左右に比べた図解
運用体制を決めると、検討する方式を絞り込めます。

パッケージ型は、自社環境への導入や個別構築を含む広い意味で使われる言葉です。一方で、クラウド型は、ベンダーが運用するサービスをインターネット経由で利用する方式です。両者の違いは、運用を担う側が自社かベンダーかにあります。

旅行・観光業界では、GDSやDMO向け基盤のように、クラウド型・SaaS型が比較の中心になります。そのため、ここでは公式情報で確認できるクラウド型・SaaS型のサービスを扱います。

パッケージ型・個別構築の論点は自社運用と独自要件への対応

たとえば、旅行会社が独自の予約フローやダイナミックパッケージングを自社サーバーに構築するケースがあります。地域が独自の税制や集計ロジックを組み込む個別開発も、この形態に近いものです。

自由度が高い一方で、サーバーや監視、バックアップの運用に加えて、法改正への追随も自社で担う範囲が広がります。そのため、改修を続ける体制と費用もあらかじめ見込んでおく必要があります。

クラウド型の強みと注意点:外部連携の維持と短期導入

GDSやDMO向け基盤は、自社でサーバーを調達しなくても使い始めやすいクラウド型・SaaS型です。また、ベンダーによる機能更新や、外部システムの仕様変更への追随も受けられます。

ただし、導入しただけで業務が自動的に整うわけではありません。旅程パターンや地域の事業者構成を整理して、システムのワークフローに落とし込む作業が欠かせません。

ポイント

運用を自社で担える体制があるかを先に決めると、パッケージ型とクラウド型のどちらを検討するかが絞り込めます。独自の予約フローや税制への対応が必須なら、改修と運用の費用も比べると判断しやすくなります。

製品を比較するときの共通軸

対象領域、外部連携、地域支援、対応・料金の4軸をカードで示した図解
同じ四つの観点をそろえると、候補間の見落としを減らせます。

製品が自社・自地域の業務に合うかは、機能一覧を読むだけでは見極めにくいものです。そこで、候補を同じ条件で比べられるよう、共通の質問を用意しておきます。

  • 対象領域:必要な業務・データをどこまで扱えるか
  • 外部連携:必要な接続実績や連携方式があるか
  • 地域支援:事業者間の合意形成や伴走支援に対応するか
  • 対応・料金:多言語対応と料金体系が要件に合うか

対象領域と外部連携の実績

「GDS連携」と一口にいっても、航空券だけを扱うのか、宿泊や現地アクティビティも含むのかで、旅程造成に使える範囲は変わります。そのため、自社の旅程に必要な対象が含まれるかを確認しておきます。

DMO向け基盤では、宿泊・訪問・消費動向のどこまでを確認できるかが比べるポイントになります。あわせて、他地域とのベンチマーク比較ができるかも、実際の画面で確かめます。

合意形成支援と導入後のサポート体制

DMOの地域データ連携では、地域事業者からデータ提供の合意を得られるかどうかが、導入の前提になります。そのため、伴走支援やコンサルティングの対応範囲も確認しておきます。

導入後の問い合わせ窓口も、資料の記載だけで判断せず、担当者に直接質問して確かめます。詳しい評価の手順は、旅行・観光業界のシステムの選定ポイント・選び方・種類で整理しています。

ポイント

候補を比べる前に4つの軸をそろえておくと、機能一覧の見た目だけで判断することを避けられます。軸は、自社・自地域の業務範囲に合わせて決めます。

旅行・観光業界のシステムの主要製品

2026年7月時点で公式ページから現行の事業内容を確認できた5製品を紹介します。掲載順は優劣を示すランキングではありません。ただし、旅行会社・OTA基幹向けと、DMO・自治体向けの地域データ・インバウンド支援では、比べるポイントが異なります。

Amadeus

Amadeusは、航空券の在庫や価格情報を扱うGDSを中核にした旅行テクノロジー企業です。

  • 提供実績:400以上の航空会社、210の空港運営者、230を超えるツアーオペレーターへ技術基盤を提供
  • 製品群:旅行代理店向け販売プラットフォームや航空会社向け予約管理システムなどで、旅行エコシステム全体を支援
  • 連携候補:日本の旅行会社・OTAが航空券在庫を含むダイナミックパッケージングを構築する際に検討
  • 見積もり:個社との商談で決まり、扱う航空券の規模と接続範囲を明示して依頼

Sabre

Sabreは、航空会社と旅行代理店向けにテクノロジープラットフォームを提供するGDS大手です。公式サイトでは、5つの領域の製品群が紹介されています。

  • 顧客体験:旅行者との接点を支援
  • 販売・流通管理:販売と流通の支援
  • 決済:支払い面の支援
  • サービス提供:提供段階の支援
  • データ分析:旅行関連の分析

対象顧客は、OTA、TMC(法人向け旅行管理会社)、レジャー旅行会社などです。旅行会社・OTA基幹をフルスクラッチで構築する場合には、Amadeusと並ぶ連携候補になります。

料金は公開されていないため、対象範囲を提示したうえで、個別見積もりを依頼することになります。

Travelport

Travelportも、旅行商取引を支えるインフラを提供するGDS企業です。公式サイトでは、旅行代理店向けの小売プラットフォームが紹介されています。

さらに、店舗向けクラウドソリューションや、AI対応の旅行APIプラットフォームもあります。対象は、OTA、TMC、コンソリデーター、独立系代理店などです。

複数のGDSを比べる際は、接続できる航空会社・サプライヤーと、既存基幹とのAPI連携方式を同じ条件で確認します。料金は個別見積もりです。

全国観光DMP(日本観光振興協会)

全国観光DMPは、日本観光振興協会がDMOや自治体向けに提供するデータ管理基盤です。ダッシュボードは4つの視点を備えています。

  • 観光概況:地域の観光状況を把握
  • 旅行者分析:国内・訪日旅行者の属性を分析
  • 魅力分析:地域の魅力を分析
  • 比較:他地域とのベンチマークを確認

約30種類のデータをあらかじめ搭載しており、初期導入の時間とコストを抑えながら観光戦略に活用できるとされています。

2026年7月時点の公式サイトによると、2024年3月末時点で全国42都道府県に導入実績があります。また、2025年12月からは、ウェブサイトでの直接申込にも対応しました。

料金は、公開されている料金表か、個別の問い合わせで確認します。一方、地域独自のPMS統合やRPAによるデータ抽出は対象外です。そのため、その部分は個別開発や外部委託で補う前提になります。

ナビタイムジャパンは、経路探索技術とデータ分析力を生かして、自治体・官公庁・DMO向けの観光ソリューションを提供しています。

  • 訪日旅行支援:「Japan Travel by NAVITIME」を中心に、旅行前から旅行後までプロモーションと行動分析を支援
  • データ・機能:観光・交通データを提供し、経路探索結果を使った人流予測にも対応
  • 活用候補:既存の経路探索基盤で周遊促進や多言語インバウンド対応を進めたい自治体・DMO
  • 料金:個別問い合わせによる見積もり

自社・地域の課題別に候補を絞る方法

5製品を一度に細かく比べるよりも、最も大きな課題を決めてから候補を絞るほうが効率的です。基幹整備を優先するか、地域データ活用・周遊促進を優先するかで、比較の対象が変わるためです。

旅行会社・OTA基幹の整備を優先する場合

航空券在庫を含むダイナミックパッケージングや、GDS・BSP連携が課題であれば、主要GDSが候補になります。具体的には、Amadeus、Sabre、Travelportを比較対象にできます。

その際は、自社の旅程パターンを使って、接続範囲と対応スピードを比べます。各製品は自社基幹に組み込む前提のため、既存の予約・決済フローとの統合も検討しておきます。

DMOとしての地域データ活用・周遊促進を優先する場合

地域の観光概況や旅行者属性を横断的に把握したい場合は、全国観光DMPが候補です。一方で、周遊促進やインバウンド対応を補いたい場合は、NAVITIMEのような経路探索・人流データの提供元も選択肢に入ります。

まず、自地域が求める機能を、各製品がどこまでカバーするかを整理します。各製品の標準機能では対応しきれない独自のPMS統合やRPAデータ抽出は、個別開発や外部委託で補う前提です。

ポイント

最も大きな課題を先に決めると、比べる製品群は基幹整備の側か地域データ・周遊促進の側かに絞られます。迷ったら、影響の大きい課題から優先します。

料金・契約前の確認事項

GDSやDMO向け基盤の多くは料金表を公開しておらず、利用規模や接続範囲に応じた個別見積もりが前提になります。そのため、契約前に確認する項目を先にそろえておきます。

課金の対象と単位

GDS料金は、予約件数や接続する航空会社・サプライヤーの範囲によって変わるのが一般的です。DMO基盤も、地域規模や利用機能に応じて変動します。

見積もりを依頼する際は、現在の取扱規模に加えて、将来の拡張規模も各社に伝えておきます。そろえた条件で見積もりを取ることが、比較の前提になります。

契約書で見るデータの取り扱いとサポート体制

扱うデータには、旅行者の個人情報や決済情報、地域事業者の経営データが含まれます。そのため、権限管理、データの保管場所、契約終了時の返却・削除の条件を、契約書で確認しておきます。

外部システムの仕様変更やAPI改定への追随方法、サポート窓口も、あわせて聞いておきます。事前に確認しておくと、導入後に想定外の追加費用が生じにくくなります。

旅行業法や消費者保護のルール改正への対応も、確認しておく必要があります。そのうえで、標準機能で対応する範囲と個別に追加開発する範囲を明確にしてから、料金を交渉します。

ポイント

見積もりは、現在と将来の取扱規模を同じ条件で各社に伝えてから比べます。条件がそろわない金額は、単純に比べないほうが安全です。

デモとPoCによる最終候補の絞り込み

候補2〜3製品を選び、実際の旅程や地域データで試し、導入前後の指標を比べる流れの図解
実データでの試行と前後の指標が、最終判断を支えます。

資料で2〜3製品まで絞ったら、実際の旅程や地域データを使ってデモ・PoCを行います。その際、旅行会社は予約・決済の担当者、DMOは地域事業者の代表にも加わってもらうと、導入後の行き違いを減らせます。

実際の旅程・地域データによる一連の流れの検証

GDSでは、実際に扱う航空券・宿泊・現地アクティビティを組み合わせて試します。検索から見積提示までを通して、応答時間や外部システムとの整合性を確認します。

DMO基盤では、実際の地域データを取り込んで試します。そのうえで、ダッシュボードの表示や他地域との比較が、自地域の分析目的に合うかを見ます。

導入前後の指標の記録と判断材料

PoCの前に、旅程造成時間や地域データ収集の工数、周遊ルート提案の精度などを記録しておきます。PoCの後に同じ指標と比べることで、効果を確かめられます。

効果は、他地域や他社の公開数値をそのまま当てはめず、自社・自地域の件数と業務量をもとに算出します。

GDSの接続手数料や従量課金分、DMO基盤の追加データ取込費用も見積もっておきます。本稼働後の想定件数をもとに継続コストを試算すると、契約後の負担を抑えやすくなります。

旅行・観光業界のシステムの製品比較で押さえておきたいポイント

製品の知名度や導入実績の数だけでなく、業務範囲と利用規模を同じ条件で比べることが出発点になります。判断が分かれやすい点も、先に洗い出しておきます。

独自要件が強い場合の個別開発という選択肢

ここで紹介した製品は、いずれもクラウド型・SaaS型です。そのため、独自の予約フローや地域固有の税制・集計ロジックには、標準機能だけでは対応しきれない場合があります。

独自要件が競争力に直結する場合は、個別開発や、クラウドサービスと基幹を組み合わせるハイブリッド構成も、比較の候補に加えます。

最優先課題で変わる製品の選び方

旅行会社・OTAの基幹整備か、DMOの地域データ活用・周遊促進かによって、適した製品は異なります。そのため、まずは自社・自地域の最優先課題を決めておきます。

必須要件で2〜3製品に絞り込んだうえで、同じシナリオのデモ・PoCで比べるのが確実な方法です。

まとめ

製品群は、GDS(Amadeus、Sabre、Travelport)、地域データ基盤(全国観光DMP)、周遊・インバウンド支援(NAVITIME)の3つに分かれます。そのため、自社・自地域の課題に合わせて選ぶことになります。

課題の優先順位づけと製品の絞り込み

まず、最優先の課題を選びます。候補は、基幹整備と、地域データ活用・周遊促進の2つです。そのうえで、対象領域と外部連携、合意形成支援を同じ質問で比べ、料金体系も合わせて確認します。

実際の旅程・地域データを使ったPoCによる最終確認

実データで一連の業務を処理できるかを確認します。資料上の機能数だけでは判断しにくいためです。そのうえで、関係者と一緒に例外ケースも試し、削減できる工数と残る運用負担を測ります。

既製のクラウドでは、独自の予約フローや地域固有のロジックに対応しきれない場合があります。そうした場合には、riplaがフルスクラッチ開発の立場から、不足機能の整理や基幹システムに合わせた個別構築を支援します。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。