信託業務システムは、管理する資産や契約条件、会計・計算の複雑さ、連携・統制の範囲によって、業務基盤の構成が変わります。
機能と種類、開発方式、開発の進め方、費用の目安、開発会社の選び方、発注時の確認事項を、この順に解説します。
▼関連記事一覧
・信託業務システム開発の進め方
・信託業務システム開発でおすすめの開発会社6選と選び方
・信託業務システム開発の見積相場・費用
・信託業務システム開発の発注・外注・委託方法
・業務システム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「業務システム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
・スクラッチシステム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「スクラッチシステム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
信託業務システムの定義
信託業務システムは、委託財産を契約に沿って管理し、受益者への配分や報告を行うシステムです。一般の顧客管理・会計ソフトと違い、信託契約のルールや受託者責任、資産分別、日次・月次・決算の処理も扱います。
導入の目的は事務効率化だけに置かず、正確性・説明可能性・継続性を高める業務基盤として捉えます。
信託業務システムの役割
信託業務システムは、契約の成立から報告までのデータを一つにまとめて管理します。
- 業務データの連携:資産の受入から取引・決済、評価、収益計算、配分、決算までを、データでつなぎます。
- 変更履歴の追跡:登録・承認・訂正の担当者と時点を記録し、Excelや個別台帳で起きやすい残高不一致や履歴の不透明さを抑えられます。
- 計算根拠の説明:時価、評価差額、仕訳、報告書を結び、元データから出力帳票まで追跡できる状態にします。
刷新や新規開発が必要になる背景
刷新や新規開発は、保守の限界だけでなく、業務の変化や運用上のリスクをきっかけに検討されます。
- 業務範囲の変化:商品や資産種類の追加、報告書の電子化、外部連携、監査対応などが該当します。
- 属人化:計算手順を特定の担当者しか説明できず、業務を続けることに不安がある状態です。
- 改修・手作業の負担:制度改正のたびに大規模な改修が必要になる、または連携ファイルを手作業で加工している状態です。
刷新では、現行機能を移すだけでなく、手作業や例外処理、二重入力、承認漏れも洗い出します。
そのうえで、発注側と開発会社で、残す業務と変える業務を決めておきます。新規開発の場合も、業務フローと責任分界を先に固めておくと、依頼内容と受入テストの基準がはっきりします。
信託業務システムの主な機能と種類
機能は信託会計の範囲にとどまらず、契約・顧客・受益者や受託資産、取引・決済を、一つの業務サイクルとして設計します。評価や報告も、同じサイクルに含めます。権限と外部連携は、内部統制と連携後の追跡を支えます。
画面一覧より先に、データがいつ確定し、誰が扱い、どの帳票に出るかを整理しておくと、要件の漏れを減らせます。
契約・顧客・受託資産の管理
契約条件と資産情報は、変更履歴や基準日を含めて管理します。
- 契約情報:委託者、受託者、受益者、期間、報酬、配分、解約・償還条件。
- 条件変更:変更前後の内容と適用日を記録しておきます。
- 資産台帳:国内外の有価証券、現預金、不動産、年金資産などの残高・簿価・時価・評価差額。
- 照合キー:銘柄、口座、通貨、保管場所、信託契約、基準日の組み合わせで、属性と残高単位を特定します。
同じ資産が複数の契約や勘定でどう見えるかを定義しておくと、そのデータを残高照会や監査、決算などで再利用できます。
取引・決済・信託会計・報告
取引・決済から会計、報告までの処理と検証の範囲を、一貫して設計します。
- 取引・決済:売買、入出金、利息、配当、償還、コーポレートアクションを受け付け、証券会社や銀行、カストディアンなどとの連携結果を管理します。
- 失敗時の処理:再送できるか、手動での訂正が必要か、訂正後に再計算する範囲はどこまでかを決めます。
- 信託会計・帳票:伝票、勘定精査、日計表、ファンド決算、報酬・配分、基準価額・単価。
- 異常系テスト:休日や為替差損益、評価不能、取引取消、遅延データも検証します。
決算や税務、当局向けの帳票、委託者・受益者向けの資料では、出力の根拠となる計算結果を追跡できるようにします。
ワークフロー・権限・外部連携
承認の流れと外部接続の仕様をはっきりさせ、内部統制と、連携後の追跡を支えます。
- 承認フロー:指図の受付から確認、承認、再鑑、実行、完了確認までを設計します。
- 権限・例外:職務分掌や不在時の代行、緊急処理、差戻し、訂正承認、操作履歴を定めます。
- 接続仕様:API、固定長、CSV、SFTPごとの責任分界と項目、文字コード、精度、再送、通知、締め時刻。
- 分析用データ:DWH・BI・経営報告に使う場合は画面用のデータと分け、履歴を保持します。
パッケージ・クラウド・スクラッチの選び方
標準業務を早く稼働させたい場合はパッケージやクラウドが、独自商品や高度な計算で差をつけたい場合はスクラッチが候補になります。信託会計を標準化して周辺だけを開発するハイブリッド型は、拡張性と費用を両立しやすい方式です。
パッケージ・クラウド型サービス
標準機能と運用面の強みを活かせます。ただし、追加機能やクラウドの統制条件は確かめておく必要があります。
- 標準機能:信託会計や契約管理を使い、要件定義や開発期間を抑えられます。
- 保守と追加開発:法改正への対応を提供側が担う場合もあります。アドオンが増えると、更新時の検証が必要になります。
- 運用負担:クラウド・ASP型では、サーバー運用やバックアップを自社で抱えず、初期投資を平準化しやすい形です。
- 安全性と責任分界:保管場所や暗号化、権限、ログ、復旧、監査、終了時の返却条件を、契約書と設計書で確かめます。
スクラッチ開発
独自の要件に合わせやすい反面、開発後の保守や運用も含めて選ぶ必要があります。
- 適合性:独自の契約や特殊な資産、複雑な配分計算、勘定系・DWHとの接続に合わせて設計できます。
- 継続負担:制度改正や脆弱性への対応、運用要員、テスト資産、開発会社の交代に、継続して対応する必要があります。
- 費用判断:初期費用に加えて、5年程度の保守や改修、インフラ、監査、教育の費用を合算します。
- 開発範囲:競争力につながる領域に絞り込み、共通機能は既存サービスや標準部品を使います。
ハイブリッドとFit&Gap
ハイブリッド型では、標準領域と独自領域を分けたうえで、Fit&Gapによって追加開発の影響を確かめます。
- 標準領域:信託会計や残高、決済を、サービスの機能で整えます。
- 独自領域:受付や承認、顧客照会、分析を、API連携で追加します。
- 適合性の分類:標準機能、設定変更、アドオン、業務見直しに分けて整理します。
- 影響評価:計算ロジック、移行、テスト、更新への影響を調べ、アドオンが多すぎる場合は導入目的を見直します。
機能の境界がはっきりするため、将来の入れ替えや段階導入にも対応しやすくなります。
信託業務システム開発の進め方

開発は、まず現状把握から始まり、要件と方式を固めたあと、テストと移行を経て段階的な稼働へ進みます。
- 現状把握と要件定義
- 方式選定と設計・実装
- テストとデータ移行
- 段階稼働
要件定義の精度は、計算結果や監査対応を左右します。そのため、画面一覧より先に業務とデータの流れを整理しておきます。締めや例外、証跡の扱いも、この段階で決めます。
企画・現状把握・要件定義
現状の業務量と課題を把握したうえで、処理の完了条件や例外時の要件まで定めます。
- 業務量の洗い出し:商品や資産種類、契約数、取引量、締め、帳票、連携、障害許容時間、保管期間、担当部署を一覧にします。
- 業務見直し:As-Isの業務を整理し、To-Beの完了条件を決めます。
- 機能要件:権限、データ項目、計算式、丸め、エラー処理、帳票、連携、ログを要件として書き出します。
- 非機能・例外:RTO・RPO、性能、バックアップ、証跡と、休日や遅延、再送、訂正、欠損、災害時の代替手順です。
現行の業務(As-Is)に、二重入力や手作業のExcel加工、承認待ち、属人的な判断が含まれていないかを探します。そのうえで、To-Beでは、誰がどのデータを確定し、どの状態を完了とするかを決めます。
方式選定・設計・PoC
方式は同じ条件で比べます。不確実な部分は、PoCで実運用に近い処理を確かめます。
- 方式比較:標準機能、アドオン率、制度改正、連携、データ持出し、保守SLA、監査、復旧を、項目ごとに見ます。
- PoCの対象:代表的な契約や資産、取引、異常系について、残高の突合、基準日をまたぐ計算、帳票、権限分離、連携エラーの再処理を試します。
- 合格条件:判定基準と、本開発へ渡す成果物を先に決め、デモだけで終わらせないようにします。
移行・テスト・段階稼働
移行の対象と合格基準を決め、テストとリハーサルを重ねたうえで、段階的に切り替えます。
- 移行範囲:契約、受益者、資産、取引履歴、残高、評価情報、帳票用の履歴を移す対象とし、対象外データの保存方法も決めます。
- 移行検証:クレンジングやコード変換、欠損について、件数・金額・残高の基準を定め、本番前に複数回リハーサルします。
- テスト:単体、連携、業務シナリオ、性能、セキュリティ、復旧、受入の順に実施します。
- 切替:受入時には、締めや決算の処理で旧新システムの結果を比べます。一括での切替が難しい場合は、照会やワークフローから会計・決済へと広げていきます。
▶ 詳細はこちら:信託業務システム開発の進め方
信託業務システムの費用相場と内訳

費用は、業務や資産の種類、取引量、連携数などの条件で変わります。移行範囲や可用性、監査要件も、費用に影響します。
公開されている統計が限られるため、一般的な相場に、信託固有の計算・統制・移行・テストを加えたモデルケースを示します。
見積もりを取るときは、同じ前提条件で複数の提案を比べます。
規模別の費用と期間の目安
規模によって目安の費用と期間は異なり、対象範囲が広がるほど、その幅も大きくなります。
- 小規模:照会・帳票・ワークフローに限定した場合で、300万円〜3,000万円程度、1〜3か月。
- 中規模:信託会計の周辺、権限管理、複数の外部連携、部署をまたぐ承認が対象で、3,000万円〜1億円程度、3〜6か月。
- 大規模:受託資産台帳、基準価額、決済、複数商品、旧システムの移行が対象で、1億円〜数十億円以上、10か月〜2年以上になる場合があります。
金額と期間は、どの工程を含むかで変わります。要件定義や設計・実装、テストに加えて、移行や教育、PM・品質管理を含むかを確かめます。
大規模案件では複数年にわたる段階稼働もあり、対象業務ごとに予算とリスクを管理します。また、小規模でも金融水準の可用性や監査資料を求めると、一般的なWebシステムより費用が上がります。
初期費用と5年TCOの内訳
初期見積もりと5年TCOは分けて考え、費用項目と対象期間をそろえて確かめます。
- 初期費用の比率例:要件定義10〜20%、設計・実装40〜50%、テスト15〜25%。
- その他の初期費用:PM・品質管理10〜15%、インフラ5〜15%、移行・教育5〜10%。
各社で項目の区切り方が異なるため、比率の合計だけで安さを判断するのは避けます。受入テストや並行稼働、移行リハーサルのほか、監査資料や制度改正対応が別費用かどうかも、確かめておきます。
5年TCOには、ライセンス・利用料やアドオンの費用を含めます。クラウド・通信、保守、監視の費用も含みます。さらに、脆弱性対応や制度改正、追加帳票の費用も、5年の期間で見込みます。
データ保管や教育、障害訓練、将来の移行費も含めて考えます。アドオンが増えると、更新時の検証や保守の負担が大きくなります。
スクラッチとパッケージは、初期費用よりも同じ期間の業務継続費で比べます。
費用を抑えるための考え方
費用を抑えるには、要件を削るのではなく、初回の範囲や移行量、見積もりの前提を整えて管理します。
- 段階導入:契約・残高・会計・承認・報告など必須の機能を先に稼働させ、分析ダッシュボードや高度な自動化は第2段階に回せます。
- 移行範囲の確認:全件を移す必要があるかを見極め、保存義務のある履歴と参照用のアーカイブを分けます。
- 見積もり前提:業務フロー、帳票、連携ファイル、件数、締め、権限、移行対象を共有します。安価な提案でも、対象外作業と変更単価、承認方法を契約前に確かめます。
▶ 詳細はこちら:信託業務システム開発の見積相場・費用
信託業務システムの開発会社・サービスの選び方
知名度や見積総額で決めるのではなく、信託会計や資産運用、金融インフラ、データ移行、クラウド運用、PMOなど、領域ごとの強みで評価します。同じRFPで提案の前提や標準機能、追加開発を比べ、運用体制や責任分界も確かめます。
信託・金融業務の経験
金融システムの経験に加えて、信託業務の実務への理解も確かめます。信託会計や受託者会計、基準価額が、提案に含まれているかを見ます。配当・償還と分別管理、指図、受益者報告も、提案に入っているかを確かめます。
導入社数だけでなく、担当した業務の範囲や資産の種類、移行の件数、稼働後の保守担当を尋ねます。顧客名を開示できない場合でも、匿名化した業務範囲や体制、課題、検証方法を説明できるかを確かめます。
技術・移行・運用体制の評価
技術とデータ移行、稼働後の対応は一続きで評価し、担当と手順が具体的かどうかを確かめます。
- 技術・運用設計:連携やデータモデル、API・ファイル、認証、権限、ログ、監視、バックアップ、DRを、設計として示せるかを確かめます。
- 外部サービス:障害、攻撃、再委託、終了、データ返却の担当を、提案書と契約書で明らかにしておきます。
- 移行計画:クレンジングや変換、リハーサル、旧新突合、切戻しの手順が、具体的に示されているかを見ます。
- 稼働後の体制:不在時の対応や窓口、SLA、エスカレーション、脆弱性対応の期限、復旧訓練が決まっているかを評価します。
同じ物差しでの提案比較
各社の提案を共通の評価軸と質問で比べ、価格だけで決めない仕組みにします。
- 配点例:標準機能25点、業務理解20点、移行・テスト20点、非機能・安全性15点、保守10点、費用・契約10点。
- 具体的な質問:基準価額の異常系や、残高不一致が起きたときの責任、制度改正の調査とリリースの担当を尋ねます。
- 継続性の確認:終了時のデータ返却形式に加えて、質問の前提を確かめる姿勢も評価します。
▶ 詳細はこちら:信託業務システム開発でおすすめの開発会社6選と選び方
信託業務システムの発注・外注のポイント
外注では、業務知識とIT知識を丸ごと任せるのではなく、発注者が目的と受入基準を持ち、外部パートナーと役割を分けます。
RFPには、機能とデータ、非機能の要件を含めます。移行やテスト、運用、契約条件も盛り込みます。
RFPに含める項目
機能の範囲と業務量、移行・運用の条件をそろえて提示すると、見積もりや提案の前提のずれを減らせます。
- 業務・機能:背景、目的、対象商品、利用者、契約・顧客・受託資産、取引・決済、会計・評価・配分、帳票、ワークフロー、連携、分析、権限、証跡。
- 業務量と時期:件数、ピーク処理量、日次・月次・決算の締め、同時利用者数、保存期間、稼働希望時期、段階導入。
- 移行・非機能:移行・保存方法、旧新突合、性能、可用性、RTO・RPO、暗号化、認証、ログ、脆弱性、バックアップ、DR訓練、サポート時間。
契約方式と責任分界
作業の確定度に応じて契約方式を選び、成果物と障害時の担当を文書にして残します。
- 契約方式:成果物が明確なら請負、要件整理・調査・専門人材支援など変動が大きければ準委任。
- 契約条件:成果物、検収、変更、納期、遅延時の扱い、再委託、知的財産、秘密保持、個人情報、障害対応、終了時の引継ぎ。
- 責任分界:監視、一次対応、利用者への連絡、復旧後の残高突合の承認を決めます。関係先が複数あるなら、切り分けと報告の責任を図にして示します。
ベンダーロックインの回避
データや業務ルールを発注者側でも扱えるようにしておくと、別の開発会社へ移れる可能性も残ります。連絡体制も、契約で確保します。
- データ・成果物:所有・利用権、返却形式、API・ファイル仕様、移行支援、ソースコード・設計書の扱い。
- 知識の引継ぎ:データ辞書や計算仕様、テスト、運用手順を、発注者側にも残します。
- サービス間の調整:機能の境界は整理しつつ、窓口を一本にするか統合責任者を置いて、障害時の調整先をはっきりさせます。
▶ 詳細はこちら:信託業務システム開発の発注・外注・委託方法
セキュリティ・法規制・ITレジリエンスの考え方

機密性に加えて、正しい残高と計算結果を必要な時刻に使えることも重要です。そのため、開発・導入・運用を分けずに、リスク評価やアクセス制御、委託先管理を、ログやバックアップ、障害訓練、復旧後の業務継続とともに一体で設計します。
FISC基準と金融庁ガイドラインの要件への落とし込み
基準やガイドラインの名称を挙げるだけでなく、実装と検収の条件に落とし込みます。
- 安全対策基準:FISC基準と金融庁のガイドラインの照合を行います。
- 復旧計画:コンティンジェンシープランの手引書にも目を通します。
- 検収条件:「FISC準拠」と書くだけでなく、対象項目や実装、証跡、テスト、委託先の責任まで具体化します。
FISCは安全対策基準・解説書第13版を2025年3月に公表しました。同版では、金融庁が公表したサイバーセキュリティに関するガイドラインを踏まえて、項目の新設と見直しが行われています(出典: 金融情報システムセンター「安全対策基準・解説書 第13版」、2025年)。
2025年3月には、コンティンジェンシープラン策定のための手引書第5版も公表され、オペレーショナル・レジリエンスとの関係が追記されました(出典: 金融情報システムセンター「コンティンジェンシープラン策定のための手引書 第5版」、2025年)。
アクセス・データ・委託先の統制
アクセス管理やデータ保護、委託先の統制を組み合わせ、連携先も含めて評価します。
- アクセス管理:多要素認証や特権IDの分離、最小権限、職務分掌、定期的な権限の見直し。
- データ・ログ:保存時や通信時に加えて、バックアップも本番と同じ水準で保護します。操作ログは改ざん検知できる形で残し、変更前後と承認者を追跡します。
- 委託先管理:再委託先や保管場所、脆弱性、事故報告、監査、終了時の消去・返却を確かめます。
- 外部リスク:委託先や連携先に関わるリスクも、洗い出して評価します。
金融庁の2025年度の分析では、サイバー攻撃に加えて、委託先からの情報漏えいやソフトウェア更新の不具合も論点になっています(出典: 金融庁「金融分野におけるITレジリエンスに関する分析レポート」、2025年6月)。
2026年の情報セキュリティ10大脅威では、組織向けの脅威として、委託先を狙う攻撃、AI利用をめぐるサイバーリスク、脆弱性を悪用する攻撃が挙げられています。出典は情報処理推進機構「情報セキュリティ10大脅威 2026」、2026年です。
自社内だけでなく、連携先を含めたサービス全体で評価します。
DR・復旧・訓練の設計
業務ごとに復旧の目標と代替手順を決め、訓練の結果を運用に反映します。
- 復旧目標:RTO・RPOを定め、数分以内に復旧が必要な処理と、後から再開できる照会や帳票を分けます。
- 切替計画:バックアップの頻度や遠隔地での保管、切替、手動での代替、切戻しに加えて、外部データの再取得と残高突合も決めます。
- 訓練シナリオ:年1回の形式的な訓練だけでなく、連携先の停止やデータ破損、権限侵害、クラウド障害、担当者不在を想定して訓練します。
- 訓練記録:復旧時間、未処理取引、手動処理、利用者への連絡、監査証跡、復旧後の再計算を記録します。
信託業務システム開発で起きやすい失敗と対策
失敗は技術だけでなく、業務やデータ、責任分界の整理が足りないことからも起きます。そのため、要件と契約、テスト、運用のそれぞれに対策を組み込みます。
画面中心の要件定義
画面を先に作ると、契約条件や計算、締め、例外、承認、帳票などのつながりが抜けることがあります。そこで、業務の出来事とデータの状態の移り変わりを整理し、通常・異常・訂正のシナリオを作ってから画面を設計します。
移行と突合の開始時期
移行の直前になって、コード変換や欠損、過去の履歴、金額の精度、帳票の差分などが同時に見つかると、切替の延期につながります。
要件定義の段階で対象と合格基準を決め、開発中にサンプルを検証しておきます。本番前には複数回リハーサルを重ね、件数だけでなく、残高や評価差額、収益配分、帳票の合計まで突き合わせます。
稼働後の制度改正と運用の後回し
制度変更や障害に継続して対応できる体制と、発注者へ知識を引き継ぐ仕組みは、稼働前に整えておきます。
- 変更管理:制度改正や新商品、帳票変更の検知担当と影響調査、優先順位、テスト、承認、利用者教育。
- 運用手順:管理者や業務担当者向けに、連携エラー、計算不一致、二重登録、承認者不在、手動処理の連絡先と復旧確認を記載します。
- 知識の引継ぎ:設計書、データ辞書、テストケース、ログの見方を発注者へ渡します。
信託業務システムに関するよくある質問
導入前によく相談される質問を、まとめました。答えは業務の範囲や規制上の義務によって変わるため、要件定義の段階で専門家にも確かめておく必要があります。
信託業務システムの開発費用はいくらですか?
特定の業務だけなら300万円〜3,000万円程度、中規模なら3,000万円〜1億円程度、大規模な基幹刷新なら1億円〜数十億円以上が、モデルケースの目安です。
公開統計に基づくものではなく、機能の範囲や資産の種類、連携数、移行、テスト、可用性を加味した推定です。
初期費用だけでなく、保守や制度改正、教育、障害訓練を含めた5年TCOで比べます。
パッケージとスクラッチ開発はどちらが向いていますか?
標準業務を早く安定して稼働させたいならパッケージ、独自商品や特殊な計算を重視するならスクラッチが候補になります。
信託会計や残高管理は標準化し、独自の受付や分析を加えるハイブリッド型という選択肢もあります。その際は、Fit&Gapでアドオンの量や5年TCO、制度改正時の保守負担を確かめます。
信託業務システムをクラウドで運用しても安全ですか?
クラウドを使えるかどうかは、機密性や可用性、委託先管理、責任分界、監査要件で評価します。保管場所や暗号化、MFA、特権IDの扱いを確かめます。ログとバックアップ、切替、返却、再委託先の確認も必要です。
FISC基準や金融庁のガイドラインを自社の要件に落とし込み、統制と証跡をもとに判断します。
既存データの移行で何を確認すべきですか?
移行の対象は、まず契約や受益者、資産を洗い出します。残高や取引履歴も、移行するかどうかを確かめます。評価情報と帳票用の過去データも、洗い出しの対象です。
そのうえで、移行、アーカイブ、廃棄を分けます。コード変換や欠損、桁・丸めの扱いを定め、日付や通貨、履歴の扱いも決めておきます。
件数や金額、残高、帳票の合計を旧システムと突き合わせ、本番前には複数回の移行リハーサルと切戻し訓練を行います。
開発会社を選ぶときに最も重要なことは何ですか?
信託・金融業務への理解と、計算や帳票、連携、移行の実績を、同じRFPで比べます。非機能と監査、稼働後の保守も、同じ条件で確かめます。
導入社数や価格だけでなく、異常系テストや旧新突合、制度改正、障害時の責任分界を、具体的に説明できるかを確かめます。
まとめ
信託業務システムは、契約や資産、取引を一体で管理します。評価や会計、報告、承認、監査証跡も、同じ仕組みで扱います。方式は、パッケージ、クラウド、スクラッチ、ハイブリッドの特徴を比べたうえで、標準化する業務と独自性を残す業務に応じて選びます。
画面より先に、業務やデータ、計算、例外、締め、権限、連携を定義します。そのうえで、移行や旧新突合、受入テスト、DR訓練まで計画します。
費用は、小規模が300万円〜3,000万円、中規模が3,000万円〜1億円、大規模が1億円〜数十億円以上がモデルケースです。5年TCOで評価します。
開発会社は、信託業務への理解や移行・テスト、安全対策、責任分界、制度改正後の保守で比べます。
RFPに前提条件と検収基準を示し、複数の提案を同じ条件で比べると、追加費用や稼働後の混乱を抑えやすくなります。
導入時の機能だけでなく、変化する脅威や制度、業務を、稼働後も継続して管理できる設計にします。
▼関連記事一覧
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・信託業務システム開発でおすすめの開発会社6選と選び方
・信託業務システム開発の見積相場・費用
・信託業務システム開発の発注・外注・委託方法
▼RFP作成前に読みたい無料ホワイトペーパー
・業務システム開発の完全ガイドブック
・スクラッチシステム開発の完全ガイドブック
・【2026年最新版】AI駆動開発の完全ガイドブック
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
