ワークフローシステム開発の保守・運用費用・ランニングコストについて

保守・運用費は、提供形態によって大きく変わります。クラウド型なら1人あたり月額300円〜1,000円程度、オンプレミス型なら年間保守費が初期費用の15%程度、フルスクラッチ型なら初期費用500万円以上が目安です。金額を左右するのは、提供形態、利用人数、外部連携と保守範囲です。

▼全体ガイドの記事
・ワークフローシステム開発の完全ガイド

ワークフローシステムのランニングコストの全体像

ワークフローシステムのランニングコストを、クラウド型、オンプレミス型、フルスクラッチ型、追加機能に分類した図。
提供形態と追加機能の両方から費用を見渡せます。

ワークフローシステムは、稟議申請・経費精算・購買申請などを電子化する独立したBPMエンジンです。グループウェアの簡易承認機能と違い、多段階ルートや条件分岐を設定できます。さらに、会計・人事システムとの連携APIを備え、業務プロセス全般をカスタム設計できます。

ランニングコストは、4つの費用に分類できます。クラウド型は初期費用を抑えやすい一方、ユーザー数に応じて月額費用が増えます。

  • クラウド型:SaaSの月額利用料が中心です。
  • オンプレミス型:パッケージの保守サポート費用がかかります。
  • フルスクラッチ型:独自開発したシステムの維持費が必要です。
  • 追加機能:外部連携やカスタマイズの費用が加わります。

なお、数百名規模では、定額制のパッケージ型が割安になる場合があります。

オンプレミス型とフルスクラッチ型は、初期費用が高い一方で、長期利用や大規模利用ではTCOを抑えやすい選択肢です。月額費用は、自社で保守体制を持つことで調整しやすくなります。

承認ルートは組織改編や業務変化に応じて見直しが続くため、初期費用だけでは費用の全体像をつかみにくくなります。そこで、3年・5年のTCOを試算して比べます。

独立したBPMエンジンには、会計や人事システムとの連携APIがあります。また、電子契約サービスとの連携や帳票出力は、必要に応じて追加できます。費用は基本料金だけでなく、追加するオプションによっても変わります。

ランニングコストの4つの分類

費用構造を比べるには、まず提供形態ごとの違いを押さえておく必要があります。

  • クラウド型:ユーザー数に応じた月額課金が基本です。
  • オンプレミス型:購入費用に加えて年間保守費用が発生します。
  • フルスクラッチ型:保守体制によって月額費用が変わります。
  • オプション:連携や帳票出力を追加するたびに加算されます。

クラウド型では、サーバー保守とバージョンアップをベンダーが担います。そのため、自社で追加の保守費用が生じにくい構造になっています。

オンプレミス型では、購入費用に対する一定の割合が保守費用になるのが一般的です。一方、フルスクラッチ型は、内製かベンダー委託かによって月々の費用が変わります。どの形態でも、必要な機能を見極めることが費用を抑えることにつながります。

総保有コスト(TCO)で考える重要性

提供形態を選ぶときは、初期費用以外の条件も比べる必要があります。

  • 利用規模:クラウド型は人数が増えるほど月額が増えます。
  • 利用継続年数:長期利用では初期費用の影響が変わります。
  • 複数年のTCO:単年度ではなく3年・5年で総額を比べます。

クラウド型は、少人数では低コストに見える場合があります。全社展開で数百名規模になると、月額数十万円が恒常的に発生します。さらに、3年・5年で見ると、買い切り型の費用を上回ることがあります。

フルスクラッチ型やオンプレミス型は初期費用が高額ですが、長期利用では1年あたりの費用負担が相対的に軽くなる傾向があります。利用規模と継続年数を見込み、複数年のTCOで比べると、提供形態ごとの差がはっきりします。

ポイント

利用人数が100名規模を超えそうなら、パッケージ型との比較が欠かせません。迷ったときは、初期費用より3年・5年の総額で比べると判断しやすくなります。

クラウド型の月額費用と規模別シミュレーション

クラウド型の5年総額を利用規模別に示し、30名規模は900,000円、100名規模は3,000,000円、500名規模は15,000,000円と並べた図。
利用規模が大きくなるほど、5年間の総額も段階的に増えます。

クラウド型の主要製品は、1ユーザーあたり月額300円〜1,000円程度が目安です。月額300円/人の製品には、ジョブカンワークフローなどが該当します。SmartFlowや、Google Workspace等と連携するGluegent Flowも含まれます。

月額500円/人の製品には、コラボフローなどが該当します。Create!WebフローやX-point Cloudも、この価格水準に入ります。

初期費用は無料〜数万円程度に抑えられる場合があります。ただし、利用人数が増えるほど毎月の費用が積み上がります。

また、年額一括払いで1か月あたりの単価が下がるサービスもあります。たとえば、年額5,880円/人相当のプランがあります。

規模別の月額・年額・複数年総額シミュレーション

月額500円/ユーザーの標準的な価格帯で計算し、規模別の総額を比べます。人数が増えるほど年額と5年総額の差が大きく開きます。

  • 30名規模:月額15,000円、年額180,000円、5年総額900,000円です。
  • 100名規模:月額50,000円、年額600,000円、5年総額3,000,000円です。
  • 500名規模:月額250,000円、年額3,000,000円、5年総額15,000,000円です。

100名規模は、クラウド型とパッケージ型の費用が逆転しやすいラインです。そのため、これを超える規模では、パッケージ型との比較を検討します。

500名を超える場合は、個別見積もりになるケースがあります。なお、ボリュームディスカウントや年額一括払いで単価を下げられる場合もあります。

利用人数が増える見込みがあるなら、将来の規模も含めて費用を比べます。

サーバー保守・バージョンアップの取り扱い

クラウド型では、保守費用に含まれる対応範囲と、カスタマイズの制約を見ておく必要があります。

  • 保守・更新:サーバー保守や更新は月額料金に含まれます。
  • 標準機能:承認ルートや連携は提供範囲内で設定します。

また、セキュリティパッチと機能改善は、ベンダー主導で自動的に反映されます。そのため、自社にシステム保守の専任担当者を置く必要はありません。一方で、独自ルールに合わせたカスタマイズには制約があるため、標準機能で要件を満たせるかを事前に確かめておく必要があります。

ポイント

月額費用は利用人数に応じて積み上がるため、将来の増員分も含めて試算すると判断の根拠になります。単価の安さだけで選ぶと、全社展開後に費用が膨らむことがあります。

オンプレミス・フルスクラッチ型の保守費用

オンプレミス型とフルスクラッチ型は、クラウド型と費用構造が異なります。長期利用や大規模利用では、ランニングコストを抑えやすい選択肢です。また、既存の基幹システムと深く連携させたい場合にも、検討の対象になります。

クラウド型は、月額利用料に保守・運用が含まれます。一方で、オンプレミス型とフルスクラッチ型は、初期投資額に応じて年間保守費用が発生します。

パッケージ型の年間保守費用(初期ライセンス費用の15%が目安)

オンプレミス型パッケージの年間保守費用は、初期ライセンス費用の15%が目安です。同じ15%でも、初期費用の水準はプランによって大きく変わります。

  • スタンダード:最大200名で初期240万円、年間保守36万円です。
  • エンタープライズ:無制限で初期360万円、年間保守54万円です。

これは大企業向けパッケージの代表例をもとにした、おおよその水準です。保守には、更新対応、不具合修正、問い合わせサポートが含まれるのが一般的です。ただし、対応範囲は契約内容によって異なるため、見積もりの段階で保守対応の範囲を必ず確かめておく必要があります。

フルスクラッチ開発の維持費

フルスクラッチ型は、複雑な承認フローに合わせてゼロから開発する方式です。

  • 初期費用:最低でも500万円以上で、数千万円に達する場合があります。
  • サーバー管理:構築・維持を自社で継続します。
  • 保守対応:更新やルート改修を継続的に行います。

さらに、条件分岐や外部連携が複雑になるほど、初期費用は高くなります。年間保守費用の明確な相場は、まだ形成されていないため、初期費用に比例して高額な維持費が毎年発生することを想定しておく必要があります。一方で、初期費用は長く使うほど1年あたりの負担が下がるため、維持費を含めて長期で比べます。

保守契約では、不具合対応のみか、機能追加も含むかを明確にしておく必要があります。加えて、承認ルートの改修を含むかも、契約時に確認することが重要です。

ポイント

初期費用は高くても、長期利用や既存システムとの深い連携が前提なら候補になります。保守の対応範囲は契約によって変わるため、見積もりの段階で比べておきます。

外部連携・カスタマイズ保守の費用内訳

ランニングコストの調整方法として、ライセンス分け、段階導入、定期の見直し、支払方法を並べたチェックリスト。
契約後も利用状況や支払い方を見直す余地があります。

独立したBPMエンジンでは、外部連携と追加機能が費用の主な要因になります。たとえば、会計・人事システムとの連携APIや電子契約連携が該当します。

基本料金だけで予算を組むと、運用後に追加費用が発生する場合があります。そのため、契約前に必要なオプションを洗い出しておくことが大切です。

外部システム連携オプションの費用相場

オプション費用は、連携先ごとに課金単位が違うため、分けて確認します。

  • 外部ツール連携:1ユーザーあたり月額150円程度です。
  • 電子契約API:1環境あたり月額30,000円程度です。
  • 帳票出力:PDFやExcel出力は月額50円/人程度です。
  • 本格連携:個別開発と保守費用の見直しが必要です。

外部ツールには、kintone、Microsoft Teams、LINE WORKSがあります。また、電子契約サービスには、クラウドサインや電子印鑑GMOサインがあります。一方、会計や人事システムとの連携は、標準機能で対応できない場合があります。

初期設定・承認ルート代行作成の役務費用

初期設定やフォーム作成を代行すると、基本サポートとは別に費用がかかります。

  • 10万円程度:説明会2回、設定代行2回、申請書20枚、承認経路7経路です。
  • 15万円程度:説明会2回、設定代行3回、社内説明会1回、申請書30枚以上、承認経路20経路です。

承認ルートが多い企業ほど、初期設定の代行費用は高くなる傾向があります。また、条件分岐が複雑な場合も、費用が上がりやすい傾向があります。

見積もりを取る前に、申請書と承認ルートの数を洗い出しておきます。また、組織改編や人事異動では、ルート改修費用が発生します。そのため、改修費用が月額保守に含まれるか、都度課金かを確認しておきます。

ランニングコストを最適化する実践的な工夫

契約の段階では、費用を抑えるために次の4つの方法を検討します。

  • ライセンス分け:役割に応じた契約種別の使い分けです。
  • 段階導入:会計システム連携など、優先度の高い連携から順に追加します。
  • 定期の見直し:利用状況を定期的に確認する仕組みです。
  • 支払方法:契約期間と支払いのタイミングの選び方です。

たとえば、フルライセンスは申請・承認の権限を持つ従業員に付与します。閲覧・検索だけの従業員には、参照専用ライセンスを使います。このように使い分けることで、全社員にフルライセンスを付与しなくて済み、月額費用を抑えられます。

利用実績のないオプションは、半年〜1年に一度の周期で解約の対象にします。

多くのクラウド型は、月払いより年払いのほうが実質単価が低くなります。そのため、継続利用が確実であれば、年払いへの切り替えや複数年契約による割引を検討する価値があります。機能性を保ちながら、ランニングコストを現実的な水準にとどめられます。

ポイント

基本料金に含まれない連携やオプションは、課金単位もそれぞれ異なります。必要な連携を一覧にして、初期契約に含める範囲を決めておくと、運用後の追加費用を見通すうえで役立ちます。

まとめ

クラウド型は、1ユーザーあたり月額300円〜1,000円程度が相場です。30名規模は年額180,000円、100名規模は年額600,000円です。500名規模では年額3,000,000円、5年総額15,000,000円になります。

100名規模は、オンプレミス型との逆転を検討する分岐点です。なお、オンプレミス型の年間保守費用は、初期費用の15%程度が目安です。

フルスクラッチ型は初期費用が高く、保守体制の構築も必要です。また、連携API、電子契約、帳票出力も、独立型システムのコスト要因になります。さらに、承認ルートの作成や改修費用も、見積もりに含めて確認しておきます。

複雑な承認プロセスを持つ場合ほど、3年・5年のTCOを試算しておくことが大切です。そのうえで、外部連携と保守範囲を明確にし、複数社から見積もりを取ると比べやすくなります。

▼全体ガイドの記事
・ワークフローシステム開発の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。