Gartner, Inc.は2026年8月10日、世界のAI最適化IaaS支出の予測を発表しました。
この数字は、推論向け支出だけの増加率ではありません。AI最適化IaaS全体の成長率であり、HPC資源やAIアクセラレーターなどへの支出を対象にした予測です。
企業にとっては、学習用インフラの確保だけでなく、稼働後に積み上がる推論コストをどう管理するかが、調達と投資判断の論点になります。
※本記事は2026年8月28日時点の情報です。

96.4%増の対象はAI最適化IaaS全体
Gartnerの発表で96.4%増とされる対象は、世界のAI最適化IaaS支出全体です。
AI最適化IaaSは、大規模AI処理向けのインフラを指します。
- GPU、TPU、その他のAI ASICなどのAIアクセラレーター
- 大規模AI処理向けの高性能コンピューティング資源
- 高速ネットワーキングや最適化ストレージ
AIアプリケーションのソフトウェア利用料までを含む数字として読むと、対象を広げすぎます。
IaaSは、外部ホスト型アプリケーションの展開や実行に使う計算能力を提供するサービス型モデルです。
今回の市場では、その中でも大規模AI処理に向く資源への支出が中心になります。
したがって、AI最適化IaaSの金額は、AIに関係するすべてのクラウド費用を足し上げたものではありません。
| Gartner表の欄 | AI最適化IaaS支出 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2025年 | 215億2,900万ドル(概算約3兆2,294億円) | 表に記載された成長率は180.0% |
| 2026年 | 422億7,600万ドル(概算約6兆3,414億円) | 96.4%増の見込み |
円換算は、1ドル=150円での概算です。
なお、2025年の金額は発表表の2025年欄として扱います。
2026年の金額を見るときは、金額の母数と96.4%という成長率をセットで確認します。
この2つを分けることで、AI最適化IaaS全体の市場予測と、自社の個別案件を混同しにくくなります。
ポイント
96.4%増は、推論向けでも学習向けでもなく、世界のAI最適化IaaS支出全体の2026年成長率です。
成長を支える2つの需要|学習基盤と企業アプリの実運用

GartnerのHardeep Singh氏は、AI最適化IaaSの成長要因を2つ挙げています。
- LLM訓練向けインフラ需要:大規模言語モデルの訓練を支える計算資源への需要
- 企業アプリへのAI実運用化:アプリケーションやワークフローへAIを組み込む動き
前者はモデルを作る段階の需要です。
後者は、顧客向けサービスや業務システムでモデルを継続的に動かす段階の需要です。
この2つが同じAIインフラ市場で拡大するため、投資判断では「開発用か運用用か」を分けて見る必要があります。
Gartnerは、組織がモデル開発から本番規模の展開へ移る流れを説明しています。
顧客向けサービスや業務システムに組み込まれたモデルは、継続的かつリアルタイムに実行されます。
訓練用の一時的な利用と、本番で繰り返す利用では、必要なインフラの見方が変わります。
この違いが、学習から推論へ投資の重心が移る背景の一つです。
ポイント
市場成長の背景には、LLM訓練向けの計算資源と、企業アプリ・ワークフローでAIを動かす実運用の両方があります。
2026年は推論向け支出が学習向けを上回る予測

Gartnerは、2026年の推論向け支出が学習向け支出を上回ると予測しています。
| 用途 | 2026年の支出見込み | 読み方 |
|---|---|---|
| 推論 | 233億ドル(概算約3兆4,950億円) | AI最適化IaaS全体の55% |
| 学習 | 190億ドル(概算約2兆8,500億円) | 推論向けを下回る予測 |
推論とは、学習済みモデルを顧客向けサービスや業務システムで動かし、回答や処理結果を返す段階です。
AIの利用が本番規模へ移ると、推論は継続的かつリアルタイムに実行されます。
そのため、企業のAI投資はモデルを作る費用だけでなく、使い続けるためのインフラ費用にも目を向ける局面に入ります。
なお、2026年の推論向け比率はAI最適化IaaS全体の55%を占める見込みです。
推論向けの比率は、2027年には59%に達する見込みとされています。
企業は、学習のために確保する資源と、利用量に応じて動き続ける資源を分けて把握できます。
特に本番サービスでは、推論の実行回数や継続時間がクラウド消費と結び付きます。
推論向け支出が大きくなる予測は、AIを導入して終わりにしない運用設計の重要性を示します。
ポイント
2026年は、推論向け233億ドルが学習向け190億ドルを上回る予測です。推論向けはAI最適化IaaS全体の55%を占める見込みです。
企業への含意|推論コストと調達対象を分けて管理する

企業が予算を検討するときは、96.4%という市場全体の数字をそのまま自社費用に置き換えないことが重要です。
まず、投資の用途を学習と推論に分けます。
次に、調達するインフラの種類を分けます。
市場全体の成長率は、調達の優先順位を考えるための外部環境です。
自社の予算では、どの業務でAIを使い、どの段階で推論が発生するかを整理します。
- 計算資源:GPU、TPU、その他のAI ASIC
- 接続と保存:高速ネットワーキング、最適化ストレージ
- 運用費用:本番で継続する推論のクラウド消費
調達時には、AI最適化IaaS全体の見込み額、用途別の構成、各インフラの必要量を別々に確認します。
GPUなどのアクセラレーターだけを見て、ネットワークやストレージを別枠にすると、対象範囲を取り違えます。
逆に、クラウドの総額だけを見て用途を分けないと、推論コストの増減を追いにくくなります。
市場統計を調達表へ落とすときは、全体、用途、インフラの3つの欄を分けると整理しやすくなります。
AIの利用料金とインフラ料金を分けて管理する視点は、AI利用コストの見直しにもつながります。
複数モデルの費用差を比べるときは、モデル別のコスト比較の考え方も参考になります。
データ基盤への投資を検討する企業は、データとAIへの投資動向と、自社の調達判断を切り分けて捉えます。
ポイント
調達では、市場全体の成長率、学習・推論の用途、計算・接続・保存の対象を分けます。特に推論は、継続利用を前提に費用を管理します。
予測を自社計画へ落とす3つの確認
Gartnerの予測を企業の計画に使うときは、数字をそのまま予算へ置き換えません。
市場の母数、AIの用途、調達対象を順番に分けて確認します。
- 母数:AI最適化IaaS全体の予測かを確認する
- 用途:学習と推論のどちらの利用かを分ける
- 対象:アクセラレーター、ネットワーク、ストレージを分ける
- 管理:本番で継続する推論コストを追える状態にする
この順番なら、市場の成長率と自社サービスの利用見込みを同じ表で比較できます。
学習向けの計算資源を確保する計画と、推論向けの継続利用を管理する計画も分けられます。
AI最適化IaaSの予測は、単なる設備投資の話ではありません。
企業アプリへのAI実運用化を、調達と費用管理へ接続するための材料として読むことができます。
学習向けの検討では、LLM訓練に必要な計算資源を確認します。
推論向けの検討では、顧客向けサービスや業務システムでの継続利用を確認します。
同じAIアクセラレーターでも、使う段階が違えば予算の見方は変わります。
高速ネットワーキングと最適化ストレージも、AI処理を支える調達対象です。
市場の数字を読む際は、計算資源だけの伸びと考えないことが大切です。
用途とインフラの組み合わせを分けることで、調達部門と利用部門の会話をそろえられます。
推論向けの支出が学習向けを上回る予測は、運用フェーズを予算管理に入れる合図になります。
Gartnerの表は、2027年のAI最適化IaaS支出を661億4,300万ドルとしています。
これは概算で約9兆9,215億円です。
2027年の成長率は56.5%で、推論向けの構成比は59%に達する見込みです。
2026年だけを見る場合でも、翌年に続く推論比率の上昇を意識できます。
ただし、企業の予算は市場全体の金額ではなく、自社の利用量と調達範囲で決まります。
市場予測と個社計画を分けることが、推論コストを管理する第一歩です。
2026年の422億7,600万ドルは、AI最適化IaaS全体の支出見込みです。
推論向け233億ドルは、その全体の内訳として示された金額です。
学習向け190億ドルも、全体の内訳として同じ表の文脈で読みます。
全体の成長率と用途別の支出額は、異なる指標です。
この区別を保つと、推論向け支出の増加率を96.4%と誤って扱わずに済みます。
調達会議では、全体、推論、学習の3つを別の行に置くと説明しやすくなります。
そのうえで、AIアクセラレーターや高速ネットワーキングの必要性を確認します。
市場の伸びを、利用部門の本番運用と調達部門の資源計画へ翻訳することが実務の課題です。
推論を継続的に使う業務では、学習時とは別の費用管理が必要になります。
その視点を持つことが、AI投資を実運用へつなげる条件です。
市場予測を読むときは、用途別の金額とインフラの対象範囲を併記します。
そうすれば、経営判断と技術調達の前提を同じ資料で確認できます。
2026年の投資シフトは、学習と推論を分けて予算化する契機になります。
調達対象を分けることで、推論コストの管理責任も明確にできます。
投資シフトを、運用費と資源計画の両面から確認します。
用途別に管理することが重要です。
ポイント
自社計画では、母数、用途、調達対象、継続する推論コストの順に分けて確認します。市場予測を実際の投資判断へつなげやすくなります。
よくある質問
Q. 96.4%増は何の支出を指しますか?
世界のAI最適化IaaS支出全体です。推論向け支出だけの増加率ではありません。
Q. 2026年は推論と学習のどちらが大きくなりますか?
推論向け233億ドルが、学習向け190億ドルを上回る予測です。
Q. AI最適化IaaSには何が含まれますか?
GPUなどのAIアクセラレーター、高性能コンピューティング、高速ネットワーキング、最適化ストレージなどです。
Q. 企業は何を調達時に確認すべきですか?
市場全体の成長率と、学習・推論の用途、計算・接続・保存の対象を分けて確認します。
まとめ
Gartnerは、2026年の世界のAI最適化IaaS支出を422億7,600万ドル、前年比96.4%増と予測しました。
背景には、LLM訓練向けインフラ需要と、企業アプリ・ワークフローへのAI実運用化があります。
2026年は推論向け支出が学習向けを上回る予測です。
企業の調達では、AI最適化IaaS全体の市場成長と、自社の推論コストを分けて管理することが重要になります。
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