Googleは2026年9月15日、リアルタイム音声対話向けのGemini 3.8 LiveとGemini 3.8 Live Extended Thinkingを発表しました。前者は低遅延の音声エージェント、後者は会話中にバックグラウンドで推論する高推論モデルとして位置づけられています。
両モデルは音声を中心に、画像・動画の文脈、音声出力、Function callingを組み合わせます。多言語接客やコールセンターの一次受付で見るべき点は、対応言語数だけではありません。顧客との会話を止めずに処理するのか、複数システムを照会してから答えるのかで、選ぶモデルが変わります。
導入時は、即時応答を優先するLiveと、複雑な処理を会話の裏側で進めるExtended Thinkingを業務フローごとに分けます。現行ドキュメントの対応言語数、音声料金、セッション上限、認証方式、APIのGAとLive APIのPreview表記をPoCで確認することが、本番運用への出発点です。
※本記事は2026年10月14日時点の情報です。

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Gemini 3.8 Liveの概要|音声・映像・ツールを同時に扱う
Gemini 3.8 Liveのモデルコードはgemini-3.8-liveです。入力はテキスト、画像、音声、動画に対応し、出力はテキストと音声を扱えます。入力トークン上限は131,072、出力トークン上限は65,536です。
特徴は音声を文字に変換してから返答する構成に限定されない点です。Live APIで音声をストリーミングし、会話中にライブ映像を文脈として加えられます。店頭端末で商品や掲示物を見せる、現場担当者が機器の状態を見せるといった使い方に向きます。

Function callingでは、予約番号や請求番号などの英数字を含む情報を扱い、外部ツールやAPIの結果を対話へ戻せます。非同期実行なら、検索や照会が終わるまで会話を無音にせず、依頼を受け付けたことを伝えながら処理を進められます。
すべてのGemini機能を利用できるわけではありません。Function calling、Live API、Search grounding、音声生成には対応しますが、キャッシュ、コード実行、ファイル検索、画像生成、構造化出力、URL contextなどには対応していません。必要なツールを先に洗い出します。
2モデルの違い|速さを優先するか、複雑な処理を任せるか
2モデルの差は、音声の入出力そのものより、応答を返すまでの処理設計に表れます。Liveは直接的な命令と短時間で返るツールに向き、Extended Thinkingは複雑なデータ評価や複数ステップの計画に向きます。
| モデル名 | エンドポイント | 向く業務 | 推論・ツール実行 | クライアントの状態管理 | 導入時の注意 |
|---|---|---|---|---|---|
| Gemini 3.8 Live | gemini-3.8-live | 低遅延の接客、一次受付、音声検索 | interleaved reasoning。同期・非同期 | turnComplete: trueでターン終了 | thinking_levelは設定しない |
| Gemini 3.8 Live Extended Thinking | gemini-3.8-live-extended-thinking | 技術サポート、複数システム照会、予約比較 | 背景推論。非同期のみ | interaction_statusのIN_PROGRESS/IDLEを管理 | low・medium・highを選ぶ |
Liveは各ターンに単一の応答を返し、turnComplete: trueでアイドルへ戻るクライアントロジックが基本です。短い本人確認や、営業時間・在庫などをすぐ返す問い合わせなら、状態管理を複雑にせずに組み込めます。同期ツールも使えるため、数ミリ秒で結果が返るセンサー値の読み取りや機器操作にも適します。
Extended Thinkingは、複数のログやエラーコードを照合する技術サポート、フライトとホテルを並列検索する予約業務、数式やコードを確認してから説明する教育用途に向きます。ツール実行中も「確認しています」のような会話上の案内を返せるため、待ち時間を体験として設計できます。
Liveはthinking_levelを設定できず、Extended Thinkingはlow・medium・highから深さを選びます。Extended Thinkingでは非同期ツール実行だけが求められ、interaction_statusを見て通話の終了や有人転送を制御します。
ポイント
一次受付や短い照会はLive、複数システムをまたぐ調査や長いツール処理はExtended Thinkingという分け方が基本です。モデル名ではなく、1件の業務が何段階で完了するかを基準に選びます。
多言語接客・コールセンターでの使い所|97+と99の表記を分けて読む
Gemini 3.8 Liveは、会話の途中で言語を検出して切り替える機能を発表時から示していました。発表ページの表現は「97 supported languages」です。一方、2026年10月14日に確認したLive APIの現行ドキュメントは、対応言語を「99 languages」と列挙し、ネイティブ音声出力モデルは会話中に自然な言語切り替えができると説明しています。
この差は、発表時の紹介文と更新されたAPIドキュメントの数え方を同じものとして扱わないために重要です。導入資料で「97言語」と固定せず、現行ドキュメントの99言語を参照しながら、自社の対象言語、方言、アクセント、固有名詞の聞き取りを実際の会話で検証します。

多言語接客では、来店時の案内や予約確認のような短い発話から評価します。複雑な予約変更や本人確認まで任せる場合は、聞き間違いと権限確認も検証します。
コールセンターの一次受付では、言語を切り替えた後も顧客情報と用件を保持できるかを確認します。解決できないときは、有人担当へ渡す条件、通話ログの保存範囲、音声からテキストへ変換した記録の扱いを先に決めます。音声AIによる電話・接客の設計を比較する際は、ChatGPT「GPT-Live」の解説も参考になります。
実装前に確認する制約|料金・セッション・認証・状態管理
料金は両モデルをまとめたGemini APIの標準有料ティアで、音声入力が100万トークンあたり3ドルまたは1分あたり0.005ドル、音声出力が100万トークンあたり12ドルまたは1分あたり0.018ドルです。無料ティアは入力・出力とも無料ですが、利用制限があります。※1ドル=150円で換算すると、トークン単価は入力約450円、出力約1,800円、分単位では入力約0.75円、出力約2.7円です。
見積もりでは入力と出力を分け、顧客が話す時間、モデルの返答時間、ツール実行、再接続や有人転送後の処理をサンプル通話で測ります。
- セッション時間:音声のみは15分、音声と動画は2分が上限です。Session managementで延長できます。
- 応答モダリティ:ネイティブ音声モデルは
AUDIOのみです。テキストが必要ならoutput audio transcriptionを使います。 - 認証方式:標準はサーバー間認証です。クライアントから接続する場合は
ephemeral tokensを使います。 - 状態管理:Liveは
turnComplete、Extended Thinkingはinteraction_statusを使い分けます。
15分を超える音声問い合わせはセッションの引き継ぎが必要です。動画は2分制限があるため、常時送るのか必要な場面だけ送るのかを決め、認証情報を置かない構成や音声ログの保存先も確認します。
現行Live APIドキュメントはPreview表記です。モデルがGemini APIでGAとして掲載されていても、APIガイドの提供段階、利用リージョン、企業契約、データガバナンスは別に確認する必要があります。人間への引き継ぎや監督を設計する際は、OpenAI「Presence」の運用論点も比較材料になります。
ポイント
料金、セッション、音声ログ、認証を個別に見積もると、音声デモと本番システムの差を把握できます。Live APIのPreview表記も、企業契約とデータガバナンスの確認項目に含めます。
提供状況と導入判断|APIのGAと企業向け提供を分けて評価する
Google AIのリリースノートでは、Gemini 3.8 LiveとGemini 3.8 Live Extended Thinkingを2026年9月15日付でGemini APIのGAとして掲載しています。開発者はGemini APIとGoogle AI Studioで検証できます。一方、Live APIの機能ドキュメントはPreview表記のため、モデルのGAとAPI機能の提供段階を同じ意味で扱わないことが大切です。
企業向けでは、Google CloudのリリースノートがGemini Enterprise Agent PlatformのGemini 3.8 Liveを2026年9月24日GAとしています。Cloud BlogはLive AvatarのGA、US・EUエンドポイント、provisioned throughput、企業向けコンプライアンスとデータガバナンスを説明しています。Extended Thinkingはprivate previewです。
企業契約や統制基盤まで検討する場合は、Gemini Enterprise Agent Platformの機能と運用ポイントも確認します。Live Avatarは音声と低遅延動画を組み合わせる追加要素であり、音声対話モデル2種の選定とは分けて評価できます。
導入前の確認は、次の順に進めると判断しやすくなります。
- 業務を分解する:一次受付、照会、複数システム検索、有人転送に分けます。
- モデルを割り当てる:応答速度を優先する工程と、複数段階の処理をLive/Extended Thinkingに割り当てます。
- 実測する:対象言語、通話時間、入力・出力トークン、ツール待ち時間、転送率を測ります。
- 本番条件を確認する:リージョン、認証、データガバナンス、提供段階、終了日の有無を契約条件と照合します。
よくある質問
Q. Gemini 3.8 LiveとExtended Thinkingはどう使い分けますか?
低遅延の一次受付や短時間の照会はGemini 3.8 Live、複雑なデータ評価、複数ステップの計画、数秒かかるツール処理はGemini 3.8 Live Extended Thinkingが向いています。
Q. Gemini Live APIは何言語に対応していますか?
発表ページは97言語、現行のLive APIドキュメントは99言語と記載しています。現行ドキュメントの99言語を参照し、対象言語と会話中の切り替えを検証します。
Q. Gemini Live APIの音声料金はいくらですか?
標準有料ティアでは音声入力が100万トークンあたり3ドルまたは1分あたり0.005ドル、音声出力が100万トークンあたり12ドルまたは1分あたり0.018ドルです。無料ティアには利用制限があります。
Q. 音声エージェントの導入前に何を検証すべきですか?
対象言語、聞き取り精度、通話時間、入力・出力コスト、ツール待ち時間、有人転送、認証、音声ログ、セッション上限、企業向け提供段階を確認します。LiveはturnComplete、Extended Thinkingはinteraction_statusを使うため、状態管理も実装前に決めます。
まとめ
Gemini 3.8 Liveは低遅延の音声対話、Extended Thinkingは背景推論と複数ステップの処理を担います。97言語と99言語の表記を分け、対象顧客の言語と会話品質をPoCで確かめます。
導入では、一次受付、照会、予約、技術サポートごとにモデルを割り当て、料金、セッション、認証、ログ、有人転送、提供段階を一つのチェックリストで確認します。
ポイント
「速く返す仕事」と「調べてから返す仕事」を分けることが、Gemini 3.8 Liveの導入判断を進める近道です。言語数やデモの印象だけで決めず、業務フローと運用制約を実測してください。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
