業務システムリニューアルの選定ポイント/選び方/種類

業務システムリニューアルの選定は、現場の課題と刷新の範囲を先に整理し、そのうえで製品やパートナーを評価軸で比べるのが基本です。

刷新は3つのアプローチから選び、見栄えや機能だけで決めると、選定後も使いにくさや目的とのずれが残ります。全体像を先に確認したい場合は、下のガイドも参照できます。

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・業務システムリニューアルの完全ガイド

業務システムリニューアル選定前に整理すべき自社の課題

業務上の不満を中央に置き、操作ログ・担当者の声・現場のつまずきを注釈線で結んだ図。
記録・声・実際の動作を重ねると、見えにくい不満も捉えやすくなります。

ベンダーを比べる前に、発注側が現場のどこで不満が生じているかを整理しておく必要があります。課題が具体的になると、必要な刷新の範囲と評価軸を決めやすくなります。

操作ログ分析と現場ヒアリングによる不満の洗い出し

不満は、操作ログ、現場担当者へのヒアリング、業務を横で観察するシャドーイングを組み合わせて集めると具体的になります。入力項目の多さや画面遷移、ボタンの見えにくさなど、改善対象も絞れます。

  • 操作ログ:時間や操作が集中している箇所の把握
  • ヒアリング:担当者本人の声の聞き取り
  • 現場観察:実際の業務で生じるつまずきの把握

ログには表れにくい「面倒でも我慢している」作業もあるため、ヒアリングで補う必要があります。担当者ごとに意見が違うときは、複数の声を重ね、共通する論点を優先課題とします。

UIの課題と機能・データ連携の課題の切り分け

現場の不満は、画面デザインだけでなく、機能不足や他システムとの連携不足が関係する場合もあります。そのため、UI/UXで直せることと、機能追加や連携改修が必要なことを分けて考えておきます。

たとえば、承認が遅い原因が他部門の待ち時間にあるなら、画面を作り直しても解決しません。UI、業務フロー、権限設計のどこに原因があるかは、ヒアリングで確かめておく必要があります。

ポイント

現場の不満が画面の見栄えによるものか、機能不足や連携不足によるものかを分けておくと、刷新の範囲と評価軸を決めやすくなります。原因がどこにあるかは、ヒアリングで押さえてから判断します。

業務システムリニューアルの3つのアプローチ

特定画面、複数画面、システム基盤へと対象範囲が広がる3つのリニューアル方法を並べた図。
課題が及ぶ範囲に合わせて、改修の深さを選び分けられます。

リニューアルは、対象範囲と刷新の深さから、大きく3つの進め方に分けられます。名称で選ぶよりも、自社の課題と予算に合う範囲を選ぶことが大切です。

部分改修型による特定画面の不満の素早い解消

部分改修型は、ボタンの色や見やすさ、入力フォームの項目など、特定の画面や機能を直す方法です。1回あたり10万〜50万円程度とされ、問題が特定の工程に集中している場合に始めやすい選択肢です。

始めやすい反面、改修を重ねるうちに画面ごとにルールが分かれるおそれがあります。そのため、将来のデザインシステム化を見据えて、命名やコンポーネントの使い方をそろえておくと、後の拡張に備えられます。

デザインシステム再構築型による複数画面の一貫性の確保

ブランドのトーンとマナーを定めたうえで、ボタン、カラー、タイポグラフィなどのUIコンポーネントを共通化し、複数画面に展開します。

さらに、現状調査からプロトタイプ検証まで含めると、通常の開発に1.5〜3ヶ月程度が加わる目安です。

一度ルールを作れば、画面を追加するたびにデザインを一から考えずに済み、一貫性と開発速度を保ちやすくなります。一方で、初期設計には時間がかかるため、対象範囲を絞って始める進め方が適しています。

基盤刷新型による大規模な作り直し

基盤刷新型は、画面だけでなく、システム基盤やパッケージ自体を入れ替える方法です。期間の目安は、中規模で開発3〜8ヶ月・全体6〜12ヶ月、全社基幹級で開発6ヶ月以上・全体18〜36ヶ月とされます。

UIに加えてデータ移行やシステム連携も見直すため、情報システム部門を中心に大きな体制が必要になります。規模が大きくなるほど現場の声が薄れやすいため、発注側は要件定義の段階から、ユーザーが参加する場を設けておくことが大切です。

ポイント

問題が特定の工程に集中していれば部分改修、複数画面の一貫性が課題ならデザインシステム再構築が候補です。基盤まで見直す必要があれば基盤刷新を選びます。

製品・パートナー選定で比較すべき評価軸

現場適合度、既存システムとの連携、デザインシステムの拡張性、TCO・セキュリティ・体制を確認する4項目の図。
同じ観点を候補ごとに照らし合わせると、比較の軸がそろいます。

アプローチを決めたら、候補のパートナーやツールを同じ質問で比べていきます。印象や見積金額だけで決めると、導入後の効果が想定からずれるおそれがあります。

現場適合度と既存システムとの連携範囲の確認

発注側は、候補ごとに現状調査の方法、ヒアリングの進め方、プロトタイプの範囲を確かめます。既存の業務ロジックやデータベースをどこまで維持するかは、連携要件として明確にしておく必要があります。

デモは、ベンダーのサンプルではなく、自社の帳票や申請書を使って行います。その場で再現してもらうと、標準機能で対応できる範囲を具体的に確かめられます。

デザインシステムの拡張性とPoCのしやすさ

デザインシステムを他の画面や将来の機能へ広げられるか、本開発前に小さなプロトタイプを試せるかを確認します。PoCの提案がない場合は、着手後に手戻りが起きやすいと見ておく必要があります。

PoCは大規模でなくても構いません。1画面や1業務フローに絞って行っても、パートナーの提案力と対応速度を判断する材料になります。

TCO・セキュリティ・体制の実績

初期費用に加えて、保守運用費が初期構築費の年間10〜15%程度に収まるかも見ておきます。権限管理、ログ、バックアップなどの要件と、同規模の実績も比べる材料になります。

実績は、「同業種で導入した」という説明に加えて、どの課題に、どの解決策を、どの手順で提供したかまで確かめます。そうすると、自社との適合を判断しやすくなります。

ポイント

判断の目安は、現場で使えるかと、既存の業務やデータとどこまで連携できるかです。見積金額だけでなく、この2点を同じ条件で比べると判断がぶれにくくなります。

パッケージ・SaaS活用とフルスクラッチの判断基準

手段は、既存のパッケージやSaaSをカスタマイズする方法と、フルスクラッチで作る方法に分けられます。判断の軸になるのは、対象業務が自社の差別化要因かどうかです。

代替可能な業務領域でのパッケージ・SaaSのカスタマイズ

差別化が不要な業務領域であれば、パッケージやSaaSの標準機能とレイアウトを使うほうが、導入速度やコストの面で有利です。なお、テーマカラーや項目の調整程度なら、短期間で対応できる場合もあります。

独自の業務プロセスや体験が強みの場合のフルスクラッチ

独自の業務プロセスや顧客体験が強みなら、標準機能のUIカスタマイズだけでは足りない場合があります。一方で、フルスクラッチなら、操作導線や独自のデザインシステムを細かく設計できます。

費用の目安は、小〜中規模で3,000万〜1.5億円、中〜大規模で1.5億〜5億円程度です。

フルスクラッチは初期投資が大きいため、要件定義の精度が投資対効果を左右します。そこで、現状調査とプロトタイプ検証を重ね、開発前に作る機能を絞り込むことが費用対効果につながります。

ポイント

対象業務が自社の差別化要因かどうかが分かれ目です。差別化が要らない業務は標準機能で足り、独自の業務プロセスが強みならフルスクラッチが候補になります。

ベンダー・体制の選び方と選定プロセスの進め方

アプローチと評価軸が決まったら、要件定義からベンダー選定、契約までの流れを組み立てます。デザイン会社、SIer、フルスクラッチ開発会社では強みが違うため、同じ条件で比べる準備が欠かせません。

要件のRFPへの落とし込みと候補の絞り込み

RFPにまとめた内容を、同じ条件で複数の候補に提示することが基本です。見た目の刷新を重視するか、業務ロジックとの整合を重視するかによって、声をかける候補も変わります。

RFPでは、必須要件と希望要件を分けておきます。すべてを必須にすると、対応できる候補が極端に減り、比較の幅が狭くなるためです。

  • 課題と対象範囲:何を変え、どこまでを対象にするか
  • 連携と非機能:既存システムとの接続と運用条件の統一
  • 要件の優先度:どの条件を外せないかの線引き

社内の体制と意思決定者の事前決定

現場、情報システム部門、経営層のうち、誰が最終判断をするのかを先に決めておきます。そのうえで現場担当者を要件定義の段階から参加させ、実務上の使いやすさを判断基準に加えると、手戻りを抑えやすくなります。

意思決定者とあわせて、進捗や課題を定期的に共有する場も設けておきます。部門間の認識ずれに早く気づければ、選定後の修正にもつなげられます。

ポイント

要件を必須と希望に分けたRFPを同じ条件で提示することが、候補を比べる土台になります。意思決定者を先に決めておくと、選定後の手戻りを抑えられます。

PoC・プロトタイプ検証の進め方

本開発の前にワイヤーフレームやクリッカブルプロトタイプを試すと、デザインの認識ずれを早く見つけられます。ここでの主な目的は、現場担当者の操作感を確かめることにあります。

ワイヤーフレームとクリッカブルプロトタイプによる操作導線の確認

まずワイヤーフレームで配置を固め、画面遷移を設定したクリッカブルプロトタイプを用意します。プログラミング前に操作フローを試せるため、要件定義とPoCには8〜16週、制作には1〜2ヶ月程度を見込む目安です。

実際に使う担当者に触ってもらい、率直な感想を集めます。開発後に修正するより、この段階で見直すほうが、工数とコストを抑えやすくなります。

ユーザビリティテストの結果を判断基準に反映する方法

滞留や誤クリックを見るユーザビリティテストと、複数案を比べるA/Bテストを行います。「見やすい」といった反応も、判断材料の一つです。

画面設計費は20万円前後で、ディレクション費は総額の10〜30%となる場合があります。さらに、外部検証には数十万〜数百万円の追加費用を見込みます。

操作に慣れた担当者だけでなく、不慣れな担当者にも参加してもらうと、評価の幅が広がります。候補製品は、業務システムリニューアルのパッケージ・クラウド製品一覧でも確認できます。

業務システムリニューアル選定前に確認しておきたいポイント

候補を絞った後も、見積金額だけで決めると、導入後の運用で行き詰まる場合があります。そのため、契約前に実務で確認しておくべき点を洗い出します。

小さな範囲から始める選定の効果

まずは不満が集中する画面や工程から始める方法もあります。範囲を絞れば比較にかかる時間を短くでき、効果を確かめてから対象を広げられます。

小規模なリニューアルは、社内の成功事例にもなります。最初の効果を示せれば、次の予算や関係者の協力も得やすくなります。

デザインの見栄えだけで決める危うさ

提案書が魅力的でも、業務フローや既存連携を確認していない候補は手戻りにつながります。そのため、必須要件を満たさない候補を除き、残りをTCOと運用面で比べます。

洗練されたプレゼンテーションと、開発体制やプロジェクト管理の力は、必ずしも一致しません。そこで、過去の進行体制と担当者の経験も質問し、実務を進める力を見ます。

導入前後の指標の同条件での計測

入力ミス、問い合わせ、操作時間などを導入前に記録し、導入後も同じ条件で比べます。判断の材料にするのは、一般的な効果ではなく、自社の実測値です。

指標が多すぎると、計測が続きません。そのため、3〜5項目程度に絞り、毎月または四半期ごとに定点観測する体制を作ります。

まとめ

業務システムの選定は、現場の課題を具体化し、3つのアプローチから適切な範囲を選ぶことから始まります。そのうえで、現場適合度、既存連携、拡張性を、同じ条件で比べます。残る4項目は、提案書や見積金額だけでは分かりにくい部分です。

  • PoC:本開発の前に小さなプロトタイプを試せるか
  • TCO:初期費用に加えた保守運用費
  • セキュリティ:権限管理、ログ、バックアップなどの要件への対応
  • 実績:同規模の実績と、どの課題にどの解決策を提供したか

プロトタイプとPoCの結果による最終判断

提案書や見積金額だけでなく、ワイヤーフレームやクリッカブルプロトタイプで現場の反応を確かめてから、最終候補を絞り込みます。

候補が僅差なら、価格だけでなく、体制や過去の実績、現場担当者の反応も合わせて判断します。

既存パッケージで対応しきれない場合のフルスクラッチ

パッケージやSaaSで独自の業務プロセスに対応しきれない場合は、フルスクラッチや既存システム連携を含む構成も候補になります。どの方法を選ぶ場合でも、業務フローと優先課題を先に一覧にしておくと、選定後のずれを抑えられます。

riplaは、要件整理、プロトタイプ検証、既存システム連携を含む開発を支援しています。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。