Epicor導入の選定ポイント/選び方/種類

Epicor導入を検討し始めると、老朽化した基幹システムをどこまでEpicor Kineticに任せられるか、複数拠点への展開をどの順序で進めるべきかなど、判断に迷う場面が次々と出てきます。知名度やクラウドという響きだけで検討を進めると、業種テンプレートが自社の生産方式に合わず、契約後に想定外の追加カスタマイズが発生することもあります。選定の出発点は、現在どの工程で基幹システムの限界が生じているかを明らかにすることです。

本記事では、Epicor導入前に整理すべき自社課題、標準機能中心からハイブリッドまでの3つの検討パターン、製品を比較する評価軸、SaaS・オンプレミス・ハイブリッドの選び分け、RFPとデモ・PoCの進め方を解説します。これから検討を始める担当者の方が、比較の軸をそろえ、自社に合う進め方を具体的に描けるようになる内容です。

本テーマに関する全体ガイドは、以下の記事をご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・Epicor導入の完全ガイド|特徴・進め方・費用・発注方法まで徹底解説

Epicor導入前に整理すべき自社の課題

Epicor導入前に自社課題を整理する担当者

最初に行うべきは製品カタログを集めることではなく、生産管理・在庫・購買・会計のどこで基幹システムの限界が生じているかを特定することです。課題を一文で説明できれば、検討すべきパターンと不要な機能が見えやすくなります。

老朽化した基幹システムの分断を確認します

生産管理、在庫、購買、会計がそれぞれ別のシステムやExcelで管理され、月次の締め処理のたびに手作業での突合が発生している場合は、基幹統合そのものが課題です。既存システムの保守期限が近づいている、担当者しか触れない独自改修が積み重なっているといった状況も、Epicor導入を検討する重要なサインになります。

具体的には、生産現場の実績記録を紙やExcelに一度書き出してから基幹システムへ再入力している、原価計算の締めに複数部署の確認を要して結果が翌月にずれ込む、担当者の異動時に旧システムの操作方法が引き継がれずに属人化する、といった症状が典型例です。こうした症状を工程ごとに書き出しておくと、後述する評価軸で何を優先すべきかが具体的に見えてきます。

複数拠点展開のスピードという課題を切り分けます

国内外に複数拠点を持ち、拠点ごとに個別のシステムやExcel運用が残っている場合は、標準化と展開スピードが課題になります。オンプレミス型のパッケージでは拠点ごとにサーバー構築が発生しやすいため、クラウド型で標準テンプレートを素早く展開できるかどうかが、Epicor導入を検討する動機として大きな比重を占めることがあります。

複数拠点での導入では、1拠点目で標準化した運用を後続拠点にそのまま横展開できるかも重要な論点です。拠点ごとに担当者の裁量で独自の帳票や承認ルートを積み上げてしまうと、本社側で全体の状況を把握しづらくなり、標準テンプレートを採用した意味が薄れてしまいます。最初の拠点で運用ルールを固めてから展開する順序を、検討段階からあらかじめ描いておくことが大切です。

Epicor導入で検討したい3つのパターン

Epicor導入で検討する3つのパターン

Epicor導入の進め方は、標準機能中心型、業種テンプレート+低コード拡張型、一部個別開発を組み合わせるハイブリッド型の3つに大別できます。自社が最優先する要件によって、適したパターンは変わります。

標準機能中心で最短導入を狙うパターン

Kinetic Industry Solutionsが自社の生産方式に近い場合は、標準機能とテンプレートをそのまま使い、カスタマイズを最小限に抑えるパターンが有効です。数週間から1〜3ヶ月程度で稼働を始められる可能性があり、法改正やベンダー側の機能更新にも追随しやすいという利点があります。

このパターンが向いているのは、既存の生産方式が業種テンプレートの想定範囲に近く、独自の帳票や承認フローへのこだわりが比較的少ない企業です。逆に、現行の業務フローを変えたくないという意識が強いままテンプレートに合わせようとすると、現場から「以前のやり方の方が早い」という反発が出やすいため、標準機能に合わせて業務フロー自体を見直す覚悟も同時に必要になります。

テンプレート+低コード拡張で独自性を確保するパターン

標準機能だけでは対応しきれない独自の帳票や承認フローがある場合は、Application Studioで対象範囲を絞って拡張するパターンが現実的です。フルスクラッチのように何もかも作り込むのではなく、標準機能で賄える部分は極力そのまま使い、差分だけを低コードで補うという発想が、保守コストを抑えるうえで重要になります。

一部領域を個別開発と組み合わせるハイブリッドパターン

複雑な個別受注生産や、自社独自の原価管理ロジックが競争力の源泉になっている場合は、Epicor Kineticをコアの基幹業務に使いながら、特定領域だけを個別開発で補うハイブリッド構成も選択肢になります。この場合、Epicor側と個別開発側のどちらを正のデータとするか、連携のタイミングと責任分界をあらかじめ決めておくことが欠かせません。

ハイブリッド構成は独自性を確保しやすい反面、連携部分の保守が長期的な負担になりやすい点には注意が必要です。API連携の仕様変更や、Epicor側のバージョンアップに個別開発側が追随できず、連携が壊れるリスクも想定しておく必要があります。個別開発で対応する範囲は、本当にその企業の競争力に直結する部分だけに絞り込む姿勢が、長期的な保守コストを抑えるうえで重要になります。

製品選定で比較すべき評価軸

Epicor導入で比較すべき評価軸を整理する会議

Epicor Kinetic単体の機能一覧だけでなく、同じミッドマーケット帯の他製品とも比較する場合は、生産形態への適合度、拡張性と保守性、料金体系とTCOという3つの軸で候補をそろえることが重要です。

生産形態への適合度と業種テンプレートのカバー範囲

自社の生産方式が離散型製造業のどの業種テンプレートに近いか、テンプレートがカバーしていない工程がどこにあるかを、実際の業務データを使って確認します。「業種別テンプレートあり」という説明だけでなく、自社特有の検査工程や品質管理の記録項目まで標準機能で扱えるかを、デモで具体的に確認することが重要です。

低コード拡張の限界と料金体系・TCO

Application Studioのような低コード拡張基盤にも、対応できるカスタマイズの範囲には限界があります。複雑な計算ロジックや外部システムとの深い連携まで低コードで賄えるのか、専門的なスクリプト開発が必要になるのか、その場合の対応費用と工数の目安はどの程度かを事前に確認してください。料金面では、ユーザー数課金かモジュール単位課金かを整理し、初期費用と月額費用に加えて、教育研修やデータ移行にかかる社内工数まで含めた総保有コストで比較することが欠かせません。同じミッドマーケット帯の具体的な製品を確認したい場合は、Epicor導入のパッケージ・クラウド製品一覧を参照すると、共通軸で比較しやすくなります。

SaaS・オンプレミス・ハイブリッドの選び分け

SaaSとオンプレミスの選び分けを検討する担当者

Epicor Kineticはクラウド(SaaS)・オンプレミス・ハイブリッドのいずれの提供形態も選べますが、自社の情報セキュリティ基準や拠点展開の方針によって適した形態は変わります。

クラウド(SaaS)を選ぶ判断基準

複数拠点への迅速な展開、限られたIT人員での運用、ベンダー側の継続的な機能更新を重視するなら、クラウド型が第一候補になります。ただし、月額費用は利用を続ける限り発生し続けるため、5〜10年といった長期利用を見据えた総保有コストの試算は欠かせません。

クラウド型を選ぶ場合でも、契約形態が年額一括なのか月額の従量課金に近いのか、ユーザー数の増減にどこまで柔軟に対応できるのかを確認しておくと、拠点の増減や組織変更があった際の費用変動を見通しやすくなります。契約更新のタイミングでプラン変更ができるかどうかも、あわせて確認しておきたい点です。

オンプレミス・ハイブリッドを検討すべきケース

閉域網での運用が求められる自社固有のセキュリティ基準がある場合や、既存の生産設備との深い連携を自社側で細かく制御したい場合は、オンプレミスやハイブリッドの検討価値があります。この場合はサーバーの調達・監視・バックアップを自社側で担う範囲が広がるため、運用体制を確保できるかをあわせて確認してください。

オンプレミス型を選ぶ場合は、初期投資が大きくなる分だけ、年間保守料率やバージョンアップのタイミングを自社でコントロールしやすくなる点をメリットとして評価できます。一方で、社内に運用を担う情報システム人員が確保できない場合は、無理にオンプレミスにこだわらず、ハイブリッド構成で自社対応が必要な範囲を最小限に絞り込む方が現実的な選択になることもあります。

比較表・RFPとフィット&ギャップ分析の進め方

Epicor導入のRFPとフィット&ギャップ分析

比較表やRFPでは、機能の有無だけでなく、実際の業務シナリオと合格条件を示すことが重要です。フィット&ギャップ分析を丁寧に行うほど、契約後のカスタマイズ範囲を正確に見積もれます。

RFPには生産形態と非機能要件を明記します

RFPには、対象拠点数、利用者数、生産形態(離散型/プロセス型)、現行フロー、解決したい課題を記載します。そのうえで、権限管理、操作ログ、バックアップ、障害時対応、データ保管場所、エクスポート形式といった非機能要件を「必須」「望ましい」「将来」の3段階に分けると、要件を絞り込みやすくなります。

すべての要件を必須にしてしまうと、業種テンプレートに近い製品まで候補から外れてしまうことがあります。自社の生産方式に直結する要件と、あれば望ましい程度の要件を分けて整理し、後者についてはApplication Studioのような低コード拡張で補えるかどうかも合わせて評価すると、比較の精度が上がります。

実データを使ったフィット&ギャップ分析を行います

自社の実際のBOMデータや受注パターンをベンダーに提示し、標準機能でどこまで処理できるか、Application Studioでの拡張がどこまで必要になるかを具体的に確認します。契約前にこの作業を丁寧に行うほど、契約後の高額な追加カスタマイズを防ぎやすくなります。

デモ・PoCの進め方

Epicor導入のデモとPoCを実施するチーム

資料比較で候補を絞ったら、実際の生産データを使ってデモまたはPoCを行います。現場の受容性を確認せずに導入を決めると、稼働後に定着しないリスクが高まります。

PoCで検証するスコープを絞り込みます

1工程・1製品ラインなど限定スコープでPoCを行い、現場オペレーターが実際に使いこなせるかを確認します。機能の豊富さではなく、現場が抵抗なく実績を入力できるかどうかが、その後の水平展開を左右します。

よくある失敗パターンを避ける運用設計をします

経営層や情報システム部門だけで機能・価格中心に選定し、現場を巻き込まないまま導入すると、「以前のExcelの方が使いやすい」と現場が反発し形骸化することがあります。全機能を一度に稼働させるのではなく、最初の数ヶ月は実績入力の定着に絞ったスモールスタートを徹底し、運用で解決する事項と製品設定を変える事項を週次で整理すると、不要な追加開発を抑えながら定着を進められます。

Epicor導入前に確認しておきたいポイント

Epicor導入の選定に関する確認ポイントを整理する担当者

候補を絞った後も、契約前に整理しておきたい論点がいくつかあります。ここでは選定時に判断が分かれやすいポイントを整理します。

小規模な拠点でも導入価値があるか

拠点の規模だけでなく、既存システムとの分断度合いと将来の拠点展開計画で判断します。単独拠点で既存システムに大きな不満がないなら、無理に切り替える必要はありませんが、複数拠点への展開を控えているなら、標準テンプレートの再利用性を重視する価値があります。

特に、既存システムの保守がベンダーの都合で近く終了する予定がある場合や、担当者の高齢化・退職によって独自改修の維持が難しくなりつつある場合は、規模の大小にかかわらず早めの検討が有効です。逆算して、保守終了時期の1〜2年前には比較検討を始めておくと、切迫した状況での拙速な選定を避けられます。

既存システムとの並行運用期間をどう設計するか

切り替え直後にトラブルが起きた場合に備え、一定期間は旧システムとの並行運用やデータ突合を行う設計が安全です。並行運用の期間と終了条件をあらかじめ決めておかないと、いつまでも二重運用が続き、かえって現場の負荷が増えることがあります。

ベンダーロックインへの備えも確認します

クラウド型の製品は、解約時にデータをどのような形式で取り出せるかを契約前に確認しておく必要があります。将来的な乗り換えを想定し、生産実績や原価データを一般的な形式でエクスポートできるかを、料金交渉と同じタイミングで質問しておくと安心です。

あわせて、Application Studioで拡張した独自機能が、将来的に別のクラウドサービスへ移行する際にどこまで再現できるかも考えておく価値があります。低コード拡張のロジックそのものは製品固有の仕組みに依存するため、乗り換え時には拡張部分を作り直す前提で移行コストを見積もっておくと、判断のぶれを防げます。

まとめ

Epicor導入の選び方のまとめ

Epicor導入の選定では、老朽化した基幹システムの分断や複数拠点展開のスピードといった自社課題を特定し、標準機能中心、テンプレート+低コード拡張、ハイブリッドという3つのパターンから方向性を選びます。そのうえで、生産形態への適合度、拡張性と保守性、料金体系とTCOという評価軸で候補を比較し、実データを使ったフィット&ギャップ分析とPoCで現場の受容性まで確認することが重要です。

自社課題を起点にパターンと評価軸を決めます

基幹システムの分断が課題なのか、拠点展開のスピードが課題なのかを整理したうえで、標準機能中心かハイブリッドかという進め方を選び、生産形態への適合度とTCOで候補を絞り込みます。

最後は実データを使ったPoCで最終判断します

資料上の機能数ではなく、自社の生産形態に合った運用ができるかどうかが重要です。標準機能とテンプレートで対応しきれない独自要件が多い場合、既製ERPだけでは対応が難しいこともあります。riplaはフルスクラッチ開発の立場から、選定前の要件整理や、Epicor Kineticと既存の生産設備・基幹システムをつなぐ連携、独自業務に合わせた個別開発まで支援しています。

▼全体ガイドの記事
・Epicor導入の完全ガイド|特徴・進め方・費用・発注方法まで徹底解説

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。