IFS導入の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

IFS導入は、構想策定から運用定着までの5つのフェーズで進みます。進め方で重視するのは、標準機能に業務を合わせる判断、データ整備、現場教育の3つです。

全体像は、IFS導入の完全ガイドもあわせてご覧ください。

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IFSの全体像:製造業・フィールドサービス特化ERPとしての強み

IFS Cloudを中心に、製造管理やフィールドサービス管理など5つの業務領域を結んだ図解。
領域ごとに異なる業務を支える機能が並びます。

IFS Cloudは、産業特有の業務プロセスを深くカバーするERPです。

対象は製造業、航空宇宙・防衛、エネルギー、建設、フィールドサービスです。

SAPやOracleは汎用ERP市場で圧倒的なシェアを持っています。一方でIFSは、特定業種の標準機能を備える点で差別化されています。

IFS Cloudの主要機能と業種別強み

IFS Cloudは、業種ごとの業務を領域別の機能で支えています。

  • 製造管理:MES連携、プロジェクト型製造、受注製造への対応。
  • フィールドサービス管理(FSM):保守や点検の計画、技術者の配置、現場作業の支援。
  • MROマネジメント:Maintenance, Repair and Overhaulの領域で、設備保全をまとめて管理。
  • エネルギー管理:発電・送配電・石油・ガス業界の資産管理と規制対応の支援。
  • 建設・プロジェクト管理:長期プロジェクトのコスト、日程、リソースの管理。

製造管理では、航空宇宙・防衛向けの部品やシリアル番号の管理、プロジェクト原価管理に強みがあります。

FSMは保守・修繕・点検計画の自動化や技術者スケジューリング、モバイル対応による現場作業の効率化を支援します。

MROでは設備保全・予防保全・予知保全を扱います。

エネルギー領域は各業界向けの資産管理と規制対応を、建設領域は長期案件の管理を担います。

IFS CloudはコンポーザブルERPとして、必要な機能モジュールを選んで段階的に導入できます。

IFS Cloudは既存システムとのAPI連携も充実しており、IoTプラットフォームやCAD/PDMシステムとの統合にも標準的に対応しています。

IFSとSAP・Oracleとの違い:導入前に知っておくべき点

SAPとIFSを比べたときの最大の違いは、業種特化の度合いと実装の難しさのバランスです。

  • SAP:機能範囲が広いぶん、カスタマイズ費用と実装期間が膨大になりがち。
  • IFS:対象業種を絞ったうえで、Fit to Standard率を高め、カスタマイズを抑える設計。
  • プロジェクト型製造:IFSはプロジェクト管理機能が標準で強く、受注単品製造で優位に立ちやすいとされています。

ただし、日本国内のIFSパートナー企業はSAPより少なく、実装経験のあるコンサルタントやエンジニアの確保が難しい場合があります。そのため、プロジェクト体制の構築に時間がかかることもあります。

導入を検討する企業は、パートナーの選定を早い段階から始めるのがよいでしょう。

ポイント

IFSは特定業種の標準機能が強みですが、国内のパートナーはSAPより少ないため、自社の業種に合うかと、パートナーを確保できるかを合わせて見ます。

IFS導入の進め方:5つのフェーズと具体的な手順

IFS導入の5フェーズを構想策定から本番移行・運用定着まで順に示し、各期間を添えた図解。
要件定義から本番移行まで、工程ごとに必要な期間が異なります。

IFS導入は5つのフェーズで進みます。構想策定から始まり、要件定義、設計・設定、テスト・ユーザー教育を経て、本番移行・運用定着へ進むのが基本の流れです。

中堅製造業では9〜15カ月(標準的には9〜13カ月)、大企業や複数拠点では18〜30カ月が一般的な目安です。

フェーズ1:構想策定・プロジェクト組成(1〜2カ月)

発注する会社は、IFS導入の理由と達成したいことを経営レベルで文書にまとめます。

現状の業務課題を、発注する会社が洗い出し、解決する課題とKPIを決めます。

目標の例としては、保全業務の工数を30%削減することや、製造原価を見えるようにして月次報告の工数を半減することが挙げられます。

フィールドサービスでは、初回解決率を85%以上に高める目標を立てることもあります。

プロジェクトでは、オーナー、PM、各業務のキーユーザーで構成するステアリングコミッティーとチームを立ち上げます。3者は担当が異なるため、役割を分けて明確にしておきます。

  • プロジェクトオーナー:通常は経営幹部または役員が担当。
  • プロジェクトマネージャー(PM):プロジェクト全体の管理。
  • キーユーザー:製造・保全・調達・財務などの業務領域の担当者。

IFSはグローバルERPのため、英語の文書やベンダーサポートが基本になります。そのため、英語に対応できるメンバーもチームに含めます。

フェーズ2:要件定義・フィット&ギャップ分析・パートナー選定(2〜4カ月)

要件定義では、現行業務を詳しく洗い出し、IFS Cloudの標準機能との間でフィット&ギャップ(F&G)分析を行います。

この工程は導入の成否を左右する、最も重要なフェーズです。ここでは、Fit to Standard(標準機能に業務を合わせられるか)を評価します。

どうしても標準に合わせられない業務(Gap)は、カスタマイズと業務変更のどちらで対応するかを決めます。

  • 業務変更:標準機能に合わせて業務を変えられるかを検討。
  • カスタマイズ:標準に合わせられない業務への追加対応の判断。

パートナー選定も並行して進め、自社の業種・業態・規模に合うIFS公認パートナーを探します。対象は、Value Added Reseller / System Integratorです。

RFP(提案依頼書)を作って2〜3社から提案を受け、そのうえでデモを評価し、価格を交渉します。

パートナーを選ぶ際は、次の4点を特に重視するとよいでしょう。

  • ①IFS認定資格保有者数:導入を担う人材の資格状況。
  • ②同業種の導入実績:自社の業務に近い経験の有無。
  • ③導入後サポート体制:稼働後にどこまで支援を受けられるか。
  • ④日本語対応力:日本語で支援を受けられるかどうか。

フェーズ3:設計・設定・開発(3〜6カ月)

設計・設定・開発では、業務の流れを文書にまとめ、それをシステムの設定へ落とし込みます。

  • 設計書:F&G分析をもとに、To-Beの業務プロセスとシステム設定の仕様を文書化。
  • イベント駆動型設計:業務イベントを受けて、システムが次の処理を自動で実行する仕組み。
  • 設定とマスター:組織構造、品目、BOM、工程、取引先などの整備。
  • 追加開発:IFSの拡張フレームワーク(IFS Extension)で標準構造を保つ方法。将来の更新が容易になるため推奨されます。

イベント駆動型のアーキテクチャを理解したうえで業務を設計すると、手作業を大幅に減らせます。

製造業では、品目マスター、部品表(BOM)、工程マスターの品質が、システム全体の精度を左右します。マスターの整備を軽く見ると、本番稼働後に大量のデータ修正が発生するケースが少なくありません。そのため、早い段階から専任の担当者を置くことが必要です。

フェーズ4:テスト・ユーザー教育(2〜3カ月)

テストは、単体テスト、結合テスト、ユーザー受入テスト(UAT)の順で進めます。IFS特有の確認項目には、業務イベントのトリガー動作とマスターデータの整合性があります。そのほか、次の項目も検証します。

  • 帳票・EDI連携:帳票の出力と、EDIを通じた受け渡しの検証。
  • 外部システム連携:生産管理、MES、IoTなどとの接続の試験。
  • ユーザー受入テスト(UAT):実際の業務シナリオで、設計どおりに動くかの確認。

UATでは、キーユーザーが実際にシステムを操作します。発見した課題は、本番移行の前に必ず解決し、合格基準を設けて管理します。

教育は、管理者向けの詳しいトレーニングと、一般ユーザー向けの操作マニュアル・e-Learningを組み合わせて行います。IFS Cloudには日本語UIがありますが、マニュアル類は日本語化が不十分な場合もあります。そのため、パートナーと一緒に日本語のコンテンツを整えることが、定着の鍵になります。

フェーズ5:本番移行・運用定着(移行後3〜6カ月)

本番移行(Go-Live)から運用定着までは、データ移行、カットオーバー、ハイパーケア、KPI改善を進めます。

  • データ移行:旧システムからIFSへの初期データの載せ替え。
  • カットオーバー:当日の手順と、ロールバック計画の文書化。
  • ハイパーケア:サポートエンジニアの現場常駐、または即時対応できる体制の確保。
  • 運用定着:KPIの監視と、月次レビューでの改善策の実行。

移行する初期データは、残高、マスター、未完了のトランザクションなどです。また、リハーサルを複数回行い、計画を綿密に立てます。

ハイパーケアは、カットオーバー後の1〜3カ月です。その間は支援体制を保ち、稼働直後の混乱をできるだけ抑えます。

IFS Aurena Analyticsの標準BI機能で、製造リードタイムや保全コスト、フィールドサービスの効率などを見られるようにします。

ポイント

進め方で迷ったときは、標準機能に業務を合わせる判断を要件定義の段階で済ませます。マスターデータの整備は、設計の早い段階から専任で進めます。

IFS導入でよくある失敗と対策:グローバルERP特有の課題

IFS導入で注意するカスタマイズ、マスターデータ、英語対応、現場定着化の4領域を並べた図解。
4領域を早めに把握すると、準備する担当や対策を考えやすくなります。

IFS導入で繰り返し見られる失敗は、カスタマイズ、マスターデータ、英語対応、現場定着の4つに大別できます。

失敗①:過剰なカスタマイズによるバージョンアップ阻害

IFS Cloudは年2回のリリースサイクルで更新されるため、カスタマイズの量が更新作業の負担を大きく左右します。

  • 互換性のリスク:標準機能に業務を合わせず、既存業務に合わせて大量にカスタマイズすると、更新時に互換性問題が起きる。
  • 影響:互換性問題の発生で、追加コストと工数が膨大になる。
  • 対策:F&G分析を徹底し、カスタマイズは標準機能で対応できない業務に限る。
  • 実装ルール:IFSの拡張フレームワークの範囲内での対応。

失敗②:マスターデータの品質不足による稼働後混乱

製造業では、品目マスター、BOM、工程マスターなど数万〜数十万件のデータを扱います。旧システムでは、管理が特定の担当者に頼りきりになったり、データがあちこちに分かれていたりしがちです。

IFSへの移行を進めると、データ品質の問題が表に出てきます。そのため、開始の早い段階からデータクレンジングを専任で担うチームを設けます。そのうえで、移行データのルールと品質基準を定め、本番の前に移行リハーサルを複数回行うことが欠かせません。

失敗③:英語ベースの運用・サポートへの対応不足

技術文書、サポートチケット、コミュニティフォーラムは英語が基本です。そのため、問題にすばやく対応したり、更新情報を把握したりするには、英語での対応力が問われます。

社内に英語で対応できるシステム管理者を育てる方法があります。また、国内パートナーと保守契約し、日本語の一次サポートを受ける方法もあります。

失敗④:現場への定着化不足(変更管理の軽視)

システムが完成しても、使い方がわからなかったり、従来のやり方に戻りたいと感じたりすると、定着は進みません。特に、グローバル標準のUIは、日本の製造現場に慣れた従業員にとって学習コストが高い場合があります。

定着させるには、現場の声を設計に反映し、教育を続ける変更管理が欠かせません。

  • キーユーザーの参画:導入の初期から設計に加わり、現場の声を取り入れる。
  • 日本語マニュアル:操作マニュアルの整備。
  • 段階的な教育:トレーニングと継続的な支援。

ポイント

カスタマイズは、標準機能で対応できない業務に限るかどうかで判断します。マスターデータの整備や英語での対応も、稼働後に困らないよう早い段階から担当を決めておきます。

IFS導入期間・体制の目安

導入期間と体制の目安は、企業の規模や業態によって変わります。

規模別の導入期間目安

中堅製造業(従業員200〜500名・単一拠点)では、フェーズごとの期間を積み上げて全体を把握します。

  • フェーズ1:1〜2カ月
  • フェーズ2:2〜3カ月
  • フェーズ3:3〜4カ月
  • フェーズ4:2カ月
  • フェーズ5:移行準備1〜2カ月

この場合、合計で9〜13カ月が標準的です。一方、大企業や複数拠点、グローバル展開を含む場合は、18〜30カ月になります。また、段階的に展開するロールアウト計画では、36カ月を超えることもあります。

航空宇宙・防衛分野では、品質管理要件(AS9100等)への対応が必要で、テスト期間も長くなる傾向があります。

プロジェクト体制の目安

社内の体制では、次の役割を確保しておきます。

  • プロジェクトオーナー:経営幹部による意思決定と予算の管理。
  • プロジェクトマネージャー(PM):専任、または8割以上の工数の確保。
  • 業務リーダー・ITリーダー:業務側は製造・調達・保全・財務などの要件定義と意思決定を担当し、IT側は技術アーキテクチャとシステム連携を管理。
  • データ管理担当:マスターデータの整備と移行の管理。
  • 変更管理担当:ユーザー教育とチェンジマネジメントを担う。

中堅企業では、社内から最低5〜8名を確保しておくことが推奨されます。パートナー側からは、PM・コンサルタント・開発エンジニア・PMOによる3〜10名規模のチームが参加するのが一般的です。

ポイント

期間と体制は、展開する拠点の範囲に応じた目安から考えます。社内の役割を早めに決めておくと、後の工程で人が足りなくなるのを防げます。

まとめ:IFS導入を成功させるための重要ポイント

IFS導入を成功させるには、経営と現場が一体となって、次の5点に取り組みます。

  • 経営コミットメントとスポンサーシップ:ERPを経営の変革と位置づけ、IT部門だけに任せない体制。
  • Fit to Standard:カスタマイズを最小限にとどめ、長期的なコスト削減につなげる。
  • マスターデータ整備:品目、BOM、工程マスターの品質確保に向けた早期の投資。
  • パートナー選定:実装実績、同業種の経験、日本語サポートが充実した企業を選び、成功の確率を高める。
  • 変更管理と定着化:現場ユーザーへの継続支援と、教育への投資を続けることが、価値を引き出す鍵。

費用の詳しい目安については、IFS導入の費用相場をご覧ください。

パートナーの選び方は、IFS導入でおすすめの開発会社・ベンダーを参照してください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。