「AIエージェントを業務に取り入れたいが、実際にどんな場面で使われているのかイメージがつかない」——そう感じているビジネスパーソンは少なくありません。AIエージェントは従来の生成AIと異なり、指示を受けるだけでなく、自ら判断・実行・フィードバックを繰り返す自律型のシステムです。2026年現在、その活用は試験段階を超え、営業・カスタマーサポート・製造・人事など幅広い業務で実績が積み重なっています。
本記事では、業務別・業界別にAIエージェントの活用事例を10選厳選し、それぞれの導入背景・取り組み内容・具体的な成果を詳しく解説します。「自社でも使えそうか」を判断する材料として、ぜひ最後までご一読ください。
AIエージェント開発・活用の全体像は、以下の完全ガイドで体系的に解説しています。
▼全体ガイドの記事
・AIエージェント開発/構築の完全ガイド
AIエージェントとは何か——従来の生成AIとの違い

AIエージェントとは、ユーザーから与えられた目標に対して、計画立案・ツール操作・外部情報収集・フィードバックによる自己修正を繰り返しながら、自律的にタスクを完遂するAIシステムです。単に質問に回答するだけの従来型チャットボットや、プロンプトに応じてテキストを生成する生成AIとは、根本的な動作原理が異なります。
従来の生成AIとの本質的な違い
従来の生成AIは「プロンプトを入力すると回答が返ってくる」という一問一答型の構造でした。一方AIエージェントは、目標を設定すると自分でサブタスクに分解し、必要なツール(Web検索・データベース照会・コード実行など)を選択・操作しながら段階的に問題を解決していきます。人間が途中で指示を出し続けなくても、自律的にゴールに向かって動き続けるのが最大の特徴です。
たとえば「来月のマーケティングレポートを作成して」という指示を受けたとき、従来の生成AIは「そのためにすべきステップ」を提案するにとどまりますが、AIエージェントはそのステップを自ら実行し、最終的なレポートのドラフトまでを自動で仕上げます。この「実行力」こそが、業務効率化における大きな差異を生み出しています。
AIエージェントを支える3つのコア機能
AIエージェントの動作を支えるのは、「計画(Planning)」「記憶(Memory)」「行動(Action)」という3つの機能です。計画機能によって目標を複数のサブタスクに分解し、記憶機能によって過去のやり取りや学習内容を保持し、行動機能によって外部ツールやAPIを操作します。この3つが組み合わさることで、人間の介在を最小限にしながら複雑な業務フローを自動化できます。日本国内でも2026年時点でAIエージェント市場は急拡大しており、Grand View Researchの調査によれば日本市場は2025年に3億6,160万ドルを記録し、2033年には88億8,010万ドルに達する見込みです。
カスタマーサポート領域での活用事例

AIエージェントの活用が最も進んでいる領域のひとつがカスタマーサポートです。24時間365日対応・多言語処理・過去履歴の即時参照といった特性が、サポート業務の課題と高い親和性を持っています。
事例1:Klarna——問題解決時間を11分から2分未満へ
スウェーデン発のフィンテック企業Klarnaは、AIエージェントをカスタマーサポートに導入した結果、顧客の問題解決時間を平均11分から2分未満に短縮することに成功しました。さらに、従来700名分に相当する業務量をAIエージェントが処理し、繰り返し問い合わせを25%削減。年間4,000万ドルの利益改善という具体的な成果を上げています。
Klarnaの取り組みで特筆すべきは、AIエージェントが単に「定型回答を返す」にとどまらず、顧客の購入履歴・過去の問い合わせ内容・現在の取引状況をリアルタイムで照会しながら、最適な解決策を自律的に判断している点です。人間のエージェントが対応すべき複雑なケースと、AIで自動解決できるケースを動的に振り分ける仕組みも構築されており、顧客満足度と業務効率の両立を実現しています。
事例2:アサヒグループ——年間7万2,000件の問い合わせ対応を自動化
アサヒグループホールディングスでは、社内ヘルプデスクにAIエージェントを導入し、年間72,000件にのぼる問い合わせへの対応を自動化しました。その結果、応答率は従来の50%から70%へと大幅に改善され、24時間365日の対応体制を確立することができました。
この事例が示すのは、AIエージェントが「外部向けカスタマーサポート」にとどまらず、「社内向けヘルプデスク」においても高い効果を発揮するという点です。ITシステムの使い方、経費申請の手順、社内規定の確認など、繰り返し発生する社内問い合わせをAIが自律的に処理することで、IT部門や総務部門の負荷を大幅に削減できます。
営業・マーケティング領域での活用事例

営業・マーケティング領域では、見込み顧客の発掘から商談記録の管理、フォローアップメールの送信まで、一連の業務フローをAIエージェントが自律的に実行する事例が増えています。人間の営業担当者が本来注力すべき「関係構築」や「クロージング」に集中できる環境が整いつつあります。
事例3:Salesforce Agentforce——商談記録入力とネクストアクション提案の自動化
Salesforceが提供するAIエージェントプラットフォーム「Agentforce」を活用する企業では、商談後の記録入力・顧客ステータス更新・次回アクションの提案をすべてAIエージェントが自律的に実行しています。営業担当者が商談内容を簡単にメモするだけで、AIが正式な商談記録を整形し、CRMへの登録、フォローアップリマインダーの設定、最適な提案資料のレコメンドまでを一気通貫で行います。
これにより、従来は営業担当者が1日あたり1〜2時間費やしていた事務作業が大幅に削減され、実際の商談活動に充てられる時間が増加します。特に大規模営業チームでは、AIエージェントによる業務標準化が、チーム全体のパフォーマンス底上げにも貢献しています。
事例4:博報堂テクノロジーズ——マルチエージェントによるアイデア創出
博報堂テクノロジーズが開発した「Nomatica」は、複数のAIエージェントが自律的に議論を行い、商品コンセプト段階から多様性と実現性を考慮したマーケティングアイデアを創出するシステムです。単一のAIが答えを出すのではなく、異なる視点を持つ複数エージェントが意見を出し合い、アイデアをブラッシュアップするマルチエージェントアーキテクチャが特徴です。
このアプローチにより、従来は数週間かかっていたコンセプト策定のプロセスが大幅に短縮され、より多くのアイデア候補を短期間で検討できるようになりました。広告・マーケティング業界における創造的業務へのAI活用という点で、先進的な事例として注目されています。
人事・採用領域での活用事例

人事・採用領域は、応募対応・書類選考・面接調整・入社後フォローアップと業務範囲が広く、担当者の負荷が集中しやすい分野です。AIエージェントは応募者とのコミュニケーション自動化から評価レポートの生成まで、幅広い業務を自律的に処理できます。
事例5:日総工産——LINE経由の月間応募数が約3倍に
製造業・物流業向け人材サービスを展開する日総工産は、AIエージェント「Mico Engage AI」を導入し、LINE経由での採用コミュニケーションを自動化しました。その結果、LINE経由の月間応募数が約3倍に急増し、連絡手段の9割がLINEへ移行。応募者への返信タイムラグが解消されたことで、他社への流出防止にも大きく貢献しています。
人材業界では応募から採用決定まで「いかに迅速に対応するか」が採用競争力を左右します。AIエージェントが24時間リアルタイムで応募者とコミュニケーションを取り続けることで、人事担当者の業務時間外でも機会損失が発生しない仕組みを実現した点が高く評価されています。
事例6:明治安田生命——3万6,000人の営業職の訪問準備を支援
明治安田生命は約36,000人の営業職員向けにAIエージェントを導入し、顧客訪問前の準備作業と訪問後の報告作業を自動化しました。顧客の契約状況・過去の相談内容・ライフステージの変化を自動でサマリーし、最適な提案内容のドラフトを生成することで、営業担当者が本来の対話に集中できる環境を整えています。
全国規模の大企業において、数万人単位の営業職にAIエージェントを展開した先進事例として注目されています。統一された品質基準での顧客対応が可能になり、新人営業員と経験豊富な担当者との間のパフォーマンス差を縮小する効果も報告されています。
金融・経理領域での活用事例

金融・経理領域では、規制対応の正確性と高い処理スピードが同時に求められます。AIエージェントはルールベースの判断と大量データ処理を得意とするため、この分野での活用が急速に進んでいます。
事例7:大和証券グループ——面談後の記録作成時間を約45%削減
大和証券グループでは、AIエージェントを顧客面談後のドキュメント作成業務に導入し、面談後の記録作成にかかる時間を約45%削減することに成功しました。さらに、コールセンターでは2万件以上の問い合わせ対応を自動化し、金融商品に関する複雑な質問にも正確に回答できる体制を整えています。
金融業界では誤った情報提供が法令違反やコンプライアンスリスクに直結するため、AIエージェントの導入にあたっては社内規程や金融関連法令をRAG(検索拡張生成)として組み込み、常に最新のルールに基づいた回答を提供できる仕組みが構築されています。
事例8:SOMPOジャパン——AIエージェント基盤「Heylix」で業務フロー自動化
SOMPOジャパンは、ノーコードで構築できるAIエージェント基盤「Heylix」を導入し、複数の業務システムと連携させることで判断を伴う業務フローまで自動化できる体制を構築しました。保険査定・書類確認・承認フローといった、従来は人間の判断が必要とされていた業務についても、ルールと事例データを組み合わせることでAIエージェントが自律的に処理できるようになっています。
経費精算においても、AIエージェントが社内規定と照合して経費承認を実行し、不備があれば不備理由とともに申請者へ自動で差し戻す仕組みが導入されています。これにより、経理担当者は異例・例外ケースの処理に集中できるようになり、定型業務の自動化率が大幅に向上しています。
製造・物流領域での活用事例

製造・物流領域では、品質検査の自動化・設備の予知保全・サプライチェーンの最適化など、AIエージェントが直接的な生産効率向上に貢献しています。日本が強みを持つ製造業での活用は特に注目度が高く、国内大手製造企業での導入実績も着実に増えています。
事例9:日立製作所——品質保証業務の検索時間を約9割削減
日立製作所は品質保証業務にAIエージェントを導入し、一部工程における情報検索時間を約90%削減、作業時間を80%短縮するという大きな成果を上げています。膨大な技術文書・品質基準・過去の不具合事例から必要な情報をAIエージェントが瞬時に検索・整理することで、品質担当者が本来注力すべき分析・改善提案業務に集中できる環境が整いました。
製造業では技術ドキュメントの量が膨大であり、必要な情報を素早く見つけることが業務効率に直結します。AIエージェントによる社内ナレッジベースの構築と自律的な情報検索は、製造業のデジタルトランスフォーメーションにおける重要なユースケースとして位置づけられています。
事例10:ウォルマート——シフト計画の時間を90分から30分へ短縮
世界最大の小売業者ウォルマートは、店舗運営にAIエージェントを組み込み、シフト管理・タスク配分・在庫補充の指示出しを自動化しました。特に注目すべき成果は、従来90分かかっていたシフト計画の作成時間を30分へと67%短縮したことです。AIエージェントは各スタッフのスキル・稼働可否・店舗繁忙状況を総合的に判断し、最適なシフトを自律的に作成します。
物流・小売業では、人員配置の最適化が顧客サービス品質に直結します。AIエージェントが日々の変動要因(急な欠勤・突発的な需要増加など)にも自律的に対応できることから、店舗マネージャーが戦略的な業務に集中できる体制の構築に大きく貢献しています。
IT・ソフトウェア開発領域での活用事例

IT・ソフトウェア開発領域は、AIエージェントの技術的特性が最もダイレクトに活かされる分野です。コード生成・テスト実行・バグ修正・ドキュメント作成を一気通貫で自動化できることから、開発生産性の劇的な向上が期待されています。
LY Corporation——2時間以内でワークフロー構築・本番稼働を実現
LY Corporation(旧LINE・Yahoo Japan)では、マルチエージェントシステムを活用した社内ワークフロー効率化に取り組み、2時間以内でのワークフロー構築・本番稼働という驚異的なスピードを実現しています。従来、新しい業務フローの構築には数週間から数か月のシステム開発期間が必要でしたが、AIエージェントが要件を解釈し、必要なコンポーネントを自律的に組み合わせることで、ほぼリアルタイムに業務プロセスを構築できるようになりました。
また、富士通では社内ITサポートデスクへのAIエージェント導入により、応対時間を従来比71.5%短縮し、人手対応の比率を67%削減することに成功しています。複数回のやり取りが必要だった問い合わせが平均1回のやり取りで解決するようになり、エンジニアやITスタッフが本来の開発・保守業務に集中できる体制が整いました。
AIコーディングエージェント——コード生成からテスト・修正まで完全自動化
GitHub CopilotやCursorに代表されるAIコーディングエージェントは、開発者が自然言語で要件を伝えるだけで、コードの生成・テスト実行・エラー検知・自己修正を自律的に繰り返します。単純なコード補完を超え、機能単位での実装からプルリクエストの作成まで、開発プロセス全体を支援するツールへと進化しています。
GitHub社の調査では、AIコーディングアシスタントを活用した開発者は、活用していない開発者と比較してコーディング速度が最大55%向上したという結果が報告されています。日本国内でも多くのIT企業がAIコーディングエージェントを開発プロセスに組み込み始めており、生産性向上と開発コスト削減の両面で大きな効果が得られています。
AIエージェント導入を成功させる3つのポイント

10の活用事例から共通するパターンを抽出すると、AIエージェント導入を成功させるための重要な要素が浮かび上がります。単なるツール導入にとどまらず、業務変革として取り組む姿勢が成功の鍵となっています。
ポイント1:スモールスタートで業務適合性を検証する
成功事例に共通するのは、最初から全社展開を目指すのではなく、特定の業務・チームでパイロット導入を行い、実際の効果を検証してから展開範囲を広げているという点です。Klarnaも大和証券も、最初は限られたサポートチームやテスト部門での試験導入からスタートしています。スモールスタートにより、AIエージェントの挙動に対する従業員の理解を深めながら、改善サイクルを回すことができます。
導入前に「解決したい業務課題」を明確に定義し、投資対効果を測定できる指標(KPI)を設定しておくことも重要です。処理時間の短縮・エラー率の削減・担当者あたりの処理件数増加など、数値で成果を追える状態にしておくことで、本格展開へのビジネスケースを社内で説得力をもって示せます。
ポイント2:人間とAIの役割分担を明確にする
AIエージェントが最も力を発揮するのは「ルールに基づく反復的な判断」「大量データの処理・整理」「24時間対応が必要な業務」です。一方で「倫理的判断を要するケース」「クライアントとの関係構築」「創造性が求められる意思決定」は人間が担うべき領域です。この役割分担を最初に明確に設計することが、AIエージェント活用の成否を大きく左右します。
Klarnaの事例では「AIが解決できない複雑なケースを人間に確実にエスカレーションする仕組み」を構築したことが高い顧客満足度につながっています。AIエージェントを「人間の代替」ではなく「人間の能力を拡張するもの」として捉え、最適な協働モデルを設計することが重要です。
ポイント3:データ品質とセキュリティを事前に整備する
AIエージェントの性能は、アクセスできるデータの品質と量に大きく左右されます。分散した社内システム・属人化したナレッジ・整理されていない過去データをそのままAIエージェントに渡しても、期待通りの成果は得られません。導入前のデータ整備・社内ナレッジベースの構築が、導入効果を最大化するための重要な準備作業です。
また、AIエージェントが業務システムと連携するためには、適切なアクセス権管理と情報漏洩対策が不可欠です。特に金融・医療・製造業などの機密情報を扱う業界では、セキュリティポリシーの策定と定期的な監査体制の構築が導入の前提となります。ガバナンス設計を後回しにせず、技術検討と並行して進めることが成功のポイントです。
まとめ

本記事では、カスタマーサポート・営業・マーケティング・人事・金融・製造・ITという7つの業務領域にわたるAIエージェントの活用事例を10選紹介しました。Klarnaの問題解決時間83%短縮、日立製作所の作業時間80%削減、日総工産の応募数3倍増加など、いずれも数字で示せる明確な成果が上がっています。
AIエージェントは「特定の質問に答える」という域をはるかに超え、複数のシステムを横断しながら複雑な業務フローを自律的に実行・完結させる段階に到達しています。重要なのは、業界や業務の特性に合わせた適切なユースケース選定と、スモールスタートによる段階的な展開です。自社の課題に照らし合わせて「どの業務から始めるか」を検討する際の参考として、本記事の事例をぜひ活用してください。
▼全体ガイドの記事
・AIエージェント開発/構築の完全ガイド
▼業務別のAIエージェント活用事例(詳細記事)
・営業のAIエージェント活用事例|商談・インサイドセールスを変える実例
・問い合わせ対応のAIエージェント活用事例|カスタマーサポート自動化の実例
・コールセンターのAIエージェント活用事例|応対品質と効率を両立する実例
・経理のAIエージェント活用事例|請求・仕訳・経費精算を自動化する実例
・バックオフィスのAIエージェント活用事例|間接業務を効率化する実例
・人事・労務・採用のAIエージェント活用事例|HR業務を自動化する実例
・情シス・ITヘルプデスクのAIエージェント活用事例|社内問い合わせ対応の実例
・法務・契約管理のAIエージェント活用事例|契約レビュー・審査の実例
・受発注のAIエージェント活用事例|発注・受注処理を自動化する実例
・販売管理のAIエージェント活用事例|受注から売上管理までの実例
・在庫管理のAIエージェント活用事例|需要予測・在庫最適化の実例
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