配送/運送業界のシステムの選定ポイント/選び方/種類

配送/運送業界のシステムを探し始めると、配車最適化に強い製品、運行管理や法令順守を軸にした製品、荷主との情報共有に強みを持つ製品など、切り口の異なる選択肢が次々と目に入ります。機能一覧の多さや知名度だけで選んでしまうと、実際に負荷がかかっている業務には手が届かず、Excelや紙の運用が結局残ってしまうことも少なくありません。選定の出発点は、自社の業務のどこに最も大きな負荷とリスクが集中しているかを明らかにすることです。

本記事では、配送/運送業界のシステムを選ぶ前に整理すべき自社課題、システムの主な種類、製品選定で比較すべき評価軸、SaaS・パッケージ・フルスクラッチの選び分け、RFPの作り方、デモ・PoCの進め方を解説します。これから候補を探す担当者の方が、営業資料の印象に流されず、自社の業務フローに合う2〜3製品まで具体的に絞り込めるように整理しています。

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・配送/運送業界のシステム開発の完全ガイド

配送/運送業界のシステム選定前に整理すべき自社の課題

配送/運送業界のシステム選定前の課題を整理する担当者

製品カタログを集める前にすべきことは、配車の属人化、拘束時間の管理不足、荷主との情報共有の不足、請求・経営管理の遅れのうち、どこに最も大きな問題があるかを一文で説明できるようにすることです。課題を具体化できれば、比較すべき機能領域と、無理に比較しなくてよい機能領域が自然に絞られます。複数の課題が同時に存在する会社であっても、いきなりすべてを解決しようとせず、最初の1年でどこまで改善したいかという優先順位を決めておくことが、後々の機能追加の判断にも役立ちます。

配車の属人化と拘束時間管理の限界を確認します

ベテラン配車担当者の勘と経験だけで配車表を組んでいる場合、その担当者が休んだ日に配車が回らなくなるという属人化のリスクが常につきまといます。あわせて、2024年問題によるドライバーの時間外労働の上限規制に対して、拘束時間の集計を月末の給与計算まで確認していないようであれば、日々の配車計画の段階で見込み拘束時間を可視化する仕組みが優先課題になります。どちらも根が深い問題であるため、まずはどちらの症状がより経営に影響しているかを見極めることが出発点です。実際に、拘束時間の超過が発覚するのが給与計算の締め日になってからという運送会社は珍しくなく、判明した時点では既に是正のしようがないという状況を繰り返している場合、システム化の優先度は高いと判断できます。

荷主との情報共有不足と請求・経営管理の遅れを確認します

荷主から配送状況を問い合わせられるたびに、配車担当者や乗務員へ電話で確認しているようであれば、動態管理や進捗共有の仕組みが不足している可能性があります。また、運行実績を紙の日報から手作業で請求書に転記している場合、月次の締め作業に時間がかかるだけでなく、転記ミスによる金額の誤りにも気づきにくくなります。自社が抱える課題を一つに絞り込めない場合は、担当者ごとにどの業務に最も時間がかかっているかを聞き取り、共通して挙がる業務から優先順位をつけるとよいでしょう。経理担当者が締め作業のたびに残業しているのか、配車担当者が電話対応に追われているのかによって、優先すべきシステムの機能領域はまったく異なるため、部門をまたいでヒアリングすることが欠かせません。

配送/運送業界のシステムの主な種類

配送/運送業界のシステムの種類を整理する担当者

配送/運送業界のシステムは、機能の焦点によって、配車・輸送計画特化型、運行管理特化型、複数機能を束ねた統合基幹型の3つに大別できます。分類名そのものより、自社が最優先する業務を標準機能で処理できるかどうかを確認することが重要です。

配車・輸送計画特化型と運行管理特化型

配車・輸送計画特化型は、荷物と車両・ドライバーの割り当て、配送ルートの計画に強みを持ちます。配車業務の効率化そのものが課題である企業に向いています。一方、運行管理特化型は、点呼記録、アルコールチェック、デジタコによる運行記録など、法令順守を軸にした機能が充実しています。緑ナンバー事業者として監査対応の証跡を整えたい企業や、拘束時間管理を厳格に行いたい企業が優先して検討すべきタイプです。

統合基幹型(業界パッケージ)

統合基幹型は、配車、運行管理、車両・乗務員管理、請求・経営分析までを一つの製品でカバーするタイプです。個別のシステムを複数連携させる手間を減らせる一方、自社の運賃体系や帳票フォーマットが独自性の強いものである場合、標準機能だけでは対応しきれず、追加のカスタマイズ費用がかさむこともあります。自社にとって「まず何を標準化したいか」を明確にしたうえで、単機能特化型を組み合わせるか、統合型を軸に検討するかを判断します。すでに会計ソフトや給与計算システムを長く使っている会社では、統合型に一本化するよりも、既存システムとの連携を前提にした単機能特化型の組み合わせのほうが、移行の負担を抑えられる場合もあります。

製品選定で比較すべき評価軸

配送/運送業界のシステムの評価軸を確認する担当者

候補製品は、業務範囲・法令対応・外部連携という業界特有の観点と、操作性・料金体系・セキュリティという一般的な観点の両方で比較します。同じ質問を各社へ提示し、回答とデモ結果をそろえることで、営業説明の分かりやすさに評価が引っ張られにくくなります。

業務範囲・法令対応・外部連携を確認します

まず、配車、運行管理、動態管理、請求・経営管理のうち、どこまでが標準機能で、どこからが追加開発になるかを確認します。次に、拘束時間や休息期間の管理、デジタコ連携、点呼記録といった法令対応の機能が、法改正のたびにベンダー側で更新されるのか、自社側で追加費用を払って改修するのかを確認します。あわせて、会計ソフトや給与計算システムとのAPIまたはCSV連携について、対象データ、同期のタイミング、エラー時の対応方法まで具体的に確認しておくと、導入後の二重入力を避けられます。

操作性・料金体系・セキュリティを確認します

管理画面が使いやすくても、乗務員が現場で使うスマートフォンや車載端末の画面が分かりにくいと、日報の入力が徹底されず、データの精度も下がります。料金体系は、車両台数、乗務員数、拠点数のどれに課金されるかを確認し、初期費用と月額料金に加えて、車載端末費、通信費、地図・交通情報APIの利用料といった継続費用まで含めた総保有コストで比較します。セキュリティの面では、権限管理、操作ログ、バックアップ、契約終了時のデータ返却条件を確認しておくと安心です。特に車載端末費や通信費は、車両台数が多い会社ほど月額料金以上に総コストへ影響するため、見積もり段階で台数を伝えたうえで内訳を確認しておくことをおすすめします。

SaaS・パッケージ・フルスクラッチの選び分け

SaaSとパッケージとフルスクラッチを比較する担当者

標準的な配車・請求業務と法改正への継続的な追随を重視するならクラウドSaaSが第一候補です。独自の運賃体系や複雑な承認フローが競争力に直結するならフルスクラッチ、標準業務と独自業務を分けられるならハイブリッド構成が適しています。

SaaSとフルスクラッチの判断基準

クラウドSaaSは短期間で利用を始めやすく、法改正への対応もベンダー側に任せやすい点が特徴です。ただし、利用料以外にアカウント管理、車載端末の運用、問い合わせの一次対応といった社内工数が発生します。フルスクラッチは、複雑な積付制約や多階層の運賃体系、取引先ごとに異なるEDI連携など、既製品では吸収しきれない独自の商習慣に合わせられますが、要件定義、テスト、保守、法改正への継続対応を自社側で担う体制が必要です。カスタマイズ費が製品本体価格の50%を超えるようであれば、長期的にはフルスクラッチのほうが総コストを抑えられる場合があります。3拠点以上での運用、配車業務の属人化、基幹システムの老朽化によるAPI非対応、取引先ごとに異なるEDI対応、マスタデータの未整備のうち3つ以上に該当する場合も、フルスクラッチを検討する目安になります。

ハイブリッド構成では責任分界を明確にします

複数拠点を持つ運送会社では、配車・請求など標準化しやすい業務をクラウドSaaSに任せ、確定した運行データを既存の基幹システムへ渡す連携部分だけを個別に開発する方法もあります。この構成では、SaaSと基幹システムのどちらを正のデータとするか、連携が失敗した際にどちらが復旧処理を担うかをあらかじめ決めておく必要があります。連携の工数は対象システムの仕様によって大きく異なるため、一般的な相場を前提にせず、入出力項目と例外処理を示したうえで個別に見積もることが重要です。

RFP・比較表の作り方

配送/運送業界のシステムのRFPを作成する担当者

比較表やRFPでは、機能の有無だけでなく、実際の業務シナリオと合格条件を明記します。各社に同じ条件を提示することで、営業担当者の説明の巧拙ではなく、実際の適合度で候補を評価できます。

RFPには業務シナリオと非機能要件を記載します

RFPには、対象拠点数、車両台数、ドライバー数、現在の配車・請求フロー、解決したい課題を記載します。そのうえで、実在する配送ルートや荷姿、繁忙期の配車パターンを示し、それらを標準機能で処理できるかを確認します。非機能要件には、権限管理、操作ログ、バックアップ、障害時のサポート対応、データの保管場所やエクスポート形式を含めます。要件を「必須」「望ましい」「将来対応」の3段階に分けておくと、すべてを必須にしてしまい候補が残らなくなる事態を避けられます。繁忙期と閑散期で必要な車両数が大きく変わる会社では、その季節変動をRFPに明記しておかないと、平常時の運用だけを想定した提案が返ってきてしまい、比較の前提がそろわなくなる点にも注意が必要です。

比較表は証拠付けと保留の扱いを統一します

「会計連携あり」という回答だけでは、CSVを手動出力するのか、APIで自動同期するのかが分かりません。比較表には、各項目を「デモで確認」「仕様書で確認」「契約条項で確認」のように確認方法まで記載し、確認できていない項目は点数を付けずに保留として扱います。この方法であれば、担当者ごとの主観による点数のばらつきを抑え、選定後の認識違いも減らせます。

デモ・PoCの進め方

配送/運送業界のシステムのデモ・PoCを進める担当者

資料比較で2〜3製品まで絞ったら、実際の配車・運行シナリオを使ってデモまたはPoCを行います。管理者だけでなく、配車担当者やドライバーにも参加してもらうことで、導入後の行き違いを防げます。

実在の配車シナリオで1案件をフルパスで通します

実際に協力できる車両とドライバーを想定し、受注登録から配車計画、運行実績の記録、請求書の作成までを1件通して確認します。正常系だけでなく、急な欠車や車両故障が起きた場合のリルート、荷物量が急に増減した場合の配車の組み直しといった例外処理も試します。処理にかかった時間、手入力の回数、問い合わせが必要になった場面を記録しておくと、デモでは見えない運用負荷を候補間で比較できます。あわせて、会計ソフトへのデータ連携やCSV出力までを実際に試し、営業担当者の説明どおりに動くかを自社の担当者の目で確認しておくと、契約後に「聞いていた連携ができない」という食い違いを防げます。

ベテラン配車担当者を選定初期から巻き込みます

道路の幅員や取引先ごとの納品ルールといった暗黙知は、机上の要件定義だけでは反映しきれません。ベテラン配車担当者やドライバーをデモの段階から巻き込み、実際の業務に近い形で操作性を確認してもらうことが、導入後に「使いにくいから元の手作業に戻す」という事態を防ぐうえで欠かせません。現場の納得感を得られないまま導入を進めると、システムだけが浮いてしまい、結局は二重管理が残ります。具体的な候補製品を確認したい場合は、配送/運送業界のシステムのパッケージ・クラウド製品一覧を参照すると、共通の評価軸で比較しやすくなります。

配送/運送業界のシステム導入前に確認しておきたいポイント

配送/運送業界のシステム導入前に確認するポイントを整理する担当者

候補を絞った後も、車両台数や拠点数だけでなく、例外処理や現場の操作性まで確認することで、導入後に運用が止まるリスクを抑えられます。

車両台数が少ない事業者でも導入効果はありますか

車両台数だけでなく、拘束時間管理が手作業の限界に近づいているか、荷主からの問い合わせ対応に時間を取られているかで判断します。台数が少なくても、配車担当者が一人しかおらず属人化のリスクが高い場合は、検討する価値があります。

既存の運行管理システムは置き換える必要がありますか

必ずしも置き換える必要はありません。既存システムが取得しているデータのうち、荷主や経理部門と共有すべき情報を洗い出し、不足している連携部分だけを補う形で検討すると、投資を抑えながら課題に対応できます。すでに運行実績のデータが蓄積されている場合は、そのデータを活かせる連携方法を優先的に検討したほうが、乗務員に新しい入力の手間を強いずに済みます。

PoCには誰を参加させるべきですか

配車担当者、ドライバー、経理担当者など、実際にシステムを日々操作する現場の関係者を初期段階から参加させます。管理者の視点だけで判断すると、現場での定着が進まず、導入後に手作業へ戻ってしまうリスクが高まります。

まとめ

配送/運送業界のシステムの選び方をまとめる担当者

配送/運送業界のシステムの選定では、配車の属人化、拘束時間管理、荷主との情報共有、請求・経営管理の遅れという自社課題を先に特定し、配車・輸送計画特化型、運行管理特化型、統合基幹型から方向性を選びます。そのうえで、業務範囲・法令対応・外部連携という業界特有の評価軸と、操作性・料金体系・セキュリティという一般的な評価軸の両方で候補を比較することが重要です。

課題診断から2〜3製品への絞り込みへ

配車の属人化、拘束時間管理、荷主との情報共有、請求・経営管理のうち、最優先課題を一つに絞り込みます。そのうえで業務範囲、法令対応、外部連携、操作性、料金体系、セキュリティを同じ質問で比較すれば、広告的な知名度に左右されず候補を絞れます。

最後は実案件のPoCで確認します

資料上の機能数ではなく、受注から請求までを一気通貫で処理できるかが重要です。配車担当者やドライバーを含む関係者で例外処理まで試し、削減できる時間と残る運用工数を測ったうえで決定してください。既製のクラウド製品では独自の運賃体系や多重下請け構造に対応しきれない場合、個別開発やハイブリッド構成も検討対象になります。riplaはフルスクラッチ開発の立場から、製品比較で明らかになった不足機能の整理や、自社の商習慣に合わせたシステム構築を支援しています。

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株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。