工数管理システム開発の完全ガイド

工数管理システムは、案件やタスクに使った時間を記録する仕組みです。方式はSaaS型、パッケージ型、独自開発型に分かれ、業務の複雑さや会社の規模に応じて選ぶと、工数を原価や採算の判断に生かせます。

▼関連記事一覧
・工数管理システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順
・工数管理システム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方
・工数管理システム開発の見積相場や費用/コスト/値段について
・工数管理システム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

工数管理システムの全体像

工数管理を中心に、働いた時間、担当や進捗、費用や利益の情報を示す注釈図。
時間を案件や作業に配賦すると、各管理の情報がつながります。

工数管理システムは、時間を記録するだけでなく、遅れや原価超過を早めに見つけるために使います。そのために、案件や工程などの作業の単位と、勤務時間や単価、予算の情報を同じデータの流れで管理します。

工数管理システムで分かること

案件別、部署別に工数を集計すると、予定超過や工程負荷の偏りを把握できます。担当者別や期間別の集計も、同じデータから作れます。さらに、利益率が下がった案件も見つけられます。

  • 予定超過:設計工程が予定を20%超えた時点で、担当追加や仕様見直しの検討に入れます。
  • 案件原価:工数に人件費単価を掛けて費用を出し、売上との差から粗利を求めます。
  • 役割別の指標:経営は採算と稼働率、現場は入力のしやすさを重視します。

この使い方は、システム開発会社や受託型の事業で代表的です。なかでもPMは、予実差とリソース配分を見ます。

経理は締めと原価計算を、情シスは権限と連携を中心に扱います。そのため、画面と指標は役割ごとに分けて用意します。それが、現場に使われる仕組みを作る第一歩です。

工数管理は、勤怠管理やタスク管理、原価管理と近い情報を扱います。記録する対象の違いを、4つの項目ごとに並べて見ていきます。

  • 勤怠管理:出退勤、休憩、時間外労働など、働いた時間の事実を記録します。
  • タスク管理:作業ごとの担当、期限、進捗を一覧で追います。
  • 原価管理:費用、売上、利益の数字を扱い、採算を見るための情報です。
  • 工数管理:実際の時間を案件や作業に配賦し、上の各管理をつなぐ役割です。

勤怠の時間と工数の合計が合わない場合は、どちらを正とするかを先に決めておきます。案件に付かない休憩、社内会議、教育、営業、待機、移動などの扱いも、あらかじめ定めておきます。

ルールを決めないまま導入すると、入力者と管理者の両方に修正の手間が生じます。そのため、工数管理は業務ルールとデータの構造まで含めた業務基盤として設計します。

工数管理システムの種類と選び方

方式を選ぶときは、標準機能で解決できる範囲と、自社固有のルールに合わせる必要がある範囲を切り分けます。機能の多さで比べるより、この線引きを先に決めるほうが判断がぶれにくくなります。

比べるときは、利用人数が増えたとき、データを移行するとき、契約を終了するときまで含めて見ます。初期費用の安さは、その後の費用と並べて判断する材料になります。

標準業務を早く始めたい場合に向くSaaS型

SaaS型は、提供事業者が用意したクラウドサービスを月額または年額で使う方式です。サーバーの調達や更新の負担を抑えられるため、スマートフォン入力や承認、集計、通知を早く始められます。

  • 少人数の情シス:サーバー運用の負担を抑えられる点が効きます。
  • 小規模な試行:まず1部署で効果を確かめ、そのあと広げたい企業に合います。

一方で、独自の原価計算、複雑な権限、特殊な締め、細かな画面変更には制約があります。契約前には、APIやCSVの範囲、最低利用人数、容量を確かめます。

導入支援費と解約時の返却形式も、同じ時期に見ておく必要があります。自社の業務をどこまでサービスに合わせるかを決めておくと、追加開発が膨らむのを防げます。

管理要件と拡張性を両立しやすいパッケージ・オンプレミス型

パッケージ型は、工数や勤怠、案件、原価の製品に設定や追加開発を組み合わせる方式です。SaaSより既存の環境に合わせやすく、一から設計するより短い期間で導入できる場合もあります。

  • パッケージ型:業務知識を持つ製品が基礎になります。
  • オンプレミス型:社内ネットワークの接続経路やデータの配置を自社で管理したい場合に、候補として挙がります。

ライセンスやサーバーの費用に加え、バックアップ、更新、障害対応の費用と責任も生じます。標準機能から外れたカスタマイズを重ねるほど、将来のアップデートが難しくなります。設定、追加開発、運用のどれで対応するかは、要件定義書に残しておきます。

独自業務を重視する場合に向く部分カスタマイズ・フルスクラッチ型

独自の案件採算や複雑な承認がある場合は、部分カスタマイズやフルスクラッチを検討します。複数の基幹システムとの連携や、外部顧客への提供がある場合も候補になります。

  • 業務に合う設計:画面やデータの構造を、現場の流れに合わせて組めます。
  • 一貫した管理:入力ルールと経営指標をそろえ、同じ基準で数字を見られます。

発注者は、要件定義と開発会社との役割分担を決めるほか、テスト、保守、異動時の引き継ぎも管理します。独自開発するのは、特殊な業務のうち将来も変わらない核の部分に絞ります。一般的な通知や認証は既存サービスに任せ、境界を設計すると、投資対効果を保てます。

ポイント

標準機能で足りる業務はSaaS、社内ルールに合わせる範囲が広い場合はパッケージや独自開発が候補になります。比べるときは、初期費用に加えて、利用人数の増加や解約時のデータ扱いまで含めて見てください。

工数管理システムに必要な機能

工数入力と承認、予実や原価の画面、データ品質とAI活用を3つのパネルで示す図。
記録・集計・データ活用の各段階を機能で支えます。

必須機能は、入力者が迷わず記録できるかと、管理者が正しい粒度で集計できるかの両面から決めます。多機能な製品でも、入力に時間がかかったり、選択肢が多すぎたり、締め後の修正ができなかったりすると、運用は止まってしまいます。

工数入力・承認・締めの一連の流れ

入力と締めは、案件や作業を選んで記録し、承認後に確定する流れで設計します。

  • 入力単位:案件、工程、タスクをマスタに登録し、日次か週次で記録します。
  • 入力補助:カレンダー連携、前日コピー、タイマー、スマートフォン、選択式入力、未入力通知で、入力の負担を軽くします。
  • 承認と締め:上長が確認して月次で締め、修正には理由と承認の記録を残します。

勤怠時間と工数時間が合わないときは、差分をエラーにするか、社内業務の工数として補うか、休暇や外出を除くかを決めておきます。

修正履歴には、承認者と承認日時、変更前後の値を記録できます。そうすれば、監査や問い合わせにもすばやく応えられます。

予実・負荷・原価を同じデータで見る画面

集計の目的は役割ごとに異なるため、画面で見せる範囲も分けます。

  • 予実と負荷:予定と実績の差、案件の消化率、メンバーの負荷が見えます。
  • 採算:未請求時間、労務費、粗利を、管理画面で追えるようにします。
  • 役割別表示:経営には月次採算、PMには今週の遅延と要員不足、現場には本人の未入力と締め状況を出し分けます。

どの画面も同じデータが元になるため、情報を過不足なく届けられます。

会計や販売管理と連携する場合は、どの時点で工数を確定し、どの単価を使い、どの期間に原価を計上するかを定めておきます。CSVだけで始める方法もありますが、手作業の再入力が残ると、二重管理になってしまいます。

API連携では、連携に失敗したときの再送や、重複の防止、差分を確認する画面まで含めて設計します。

データ品質とAI活用の前提

2026年時点では、AIを工数管理の周辺業務に組み込む考え方が広がっています。ただし、案件名の表記揺れや未入力を放置すると、AIは不正確なデータを処理することになります。

  • 入力候補:自然言語の文から、工数の候補を示します。
  • 異常検知:極端に長い工数に、早く気づけるようにします。
  • レポート作成:週次の集計を自動でまとめます。

まず、案件コードと作業分類、担当者をマスタ化します。単価と締め日もマスタに含め、入力候補は選択式にします。

AIを使う前に、案件名の揺れや勤怠との不一致も整えておきます。AIの提案は補助にとどめ、確定と承認は本人か上長が行います。

AIに渡すデータの範囲と、学習への利用の有無を要件に含めてください。ログの保存や誤提案の訂正方法も、同じ要件で決めます。

ポイント

入力者が迷わず記録できるか、管理者が正しい粒度で集計できるかを、機能を選ぶ基準にします。締め後の修正ができるかも、運用が止まらないかの判断材料になります。

工数管理システム開発・導入の進め方

現場観察、1部署・1〜3案件・1〜2か月のパイロット、方式決定、実装とデータ移行へ進む4段階の流れ図。
小さな試行の結果を、方式選定と実装計画につなげます。

導入を成功させるには、現場観察、指標定義、試行、方式決定、実装、定着の順に進めます。製品は、試行の結果を見てから決める段取りです。

特に工数管理は、システムを入れるだけでは入力の習慣が変わりにくいため、業務の棚卸しを最初に行うことが大切です。

アナログ業務を棚卸しし、デジタル化の前提を整えることを、AXと呼びます。誰が入力して誰が確認するのか、どのデータを経理や経営へ渡すのかも、業務フローに書き込みます。

  • 作業の洗い出し:Excel、紙、チャット、口頭、メール、個人メモまで、記録先を広く拾います。
  • 運用上の課題:二重入力や例外処理の実態。

予定工数と実績工数、稼働率の定義を決めます。原価と粗利の定義も欠かせません。残業時間と未入力率、承認滞留時間は、数え方を一つに定めます。

稼働率は、総労働時間に対する案件工数か、所定労働時間に対する請求可能工数かで、数値が変わります。分母と分子、集計期間、責任者を先に決めておくと、導入後の数字と比べられます。

1部署・1〜3案件のパイロット

全社展開の前に、1部署または1〜3案件で1〜2か月試行します。

  • 入力の負担:記入にかかる時間と未入力率。
  • 承認と勤怠:滞留時間と、両者の差分。
  • データの品質:表記揺れと集計時間。

仮入力で数字だけが整う場合があるため、予実差の説明に使えるかまで確かめます。現場は入力項目を、管理者はレポートを見ます。経理は締めと原価、情シスは権限と連携を検証します。

試行の結果から、SaaSの標準機能で足りるか、追加設定が要るか、独自開発が必要かを判断できます。

実装・データ移行・教育の管理

方式が決まったら工程ごとに計画を立て、契約書や発注書に納品物を明記します。

  • 実装工程:要件定義、設計、開発または設定、テストを、別々に管理します。
  • 導入工程:データ移行、教育、段階的なリリースの計画。
  • 納品物:仕様書、テスト仕様、復旧手順、設定一覧やソースを、どこまで渡すかを定めます。

移行では、案件名や担当者、作業分類の表記揺れを整えます。時間単位や単価、締め状態も、同じ基準にそろえます。

経営分析に必要な期間のデータだけを移し、古いデータは参照用に別に保管する方法もあります。

移行責任者と検証方法は、発注者と開発側で決めて合意します。移行件数とやり直しの条件も、同じ場で取り決めます。

ポイント

製品を選ぶ前に、現場観察と指標の定義を固めると、試行で何を測るかがはっきりします。1部署や1〜3案件の試行を経て方式を決める流れが、判断の目安になります。

工数管理システムの費用相場と内訳

工数管理システムの費用は、利用人数や入力対象、連携数で大きく変わります。過去データや権限、帳票の扱いでも差が出ます。セキュリティと保守の範囲も、金額を左右する要因です。

次に示すのは、2026年時点で初期検討に使える目安です。工数管理だけでなく、周辺の業務システムまで含める場合は、金額が上振れします。最終的には、同じ要件書をもとに見積もりを比べてください。

▶ 詳細はこちら:工数管理システム開発の見積相場や費用/コスト/値段について

方式別の費用と期間の目安

SaaSは初期費用が0〜50万円程度で、月額は無料から数千円のユーザー課金が中心です。ただし、導入支援や最低利用料を含めると、月額10万〜20万円台になる場合もあります。

  • SaaS:小さく導入し、標準機能を早く使い始めます。
  • パッケージ・クラウド拡張:製品を基礎に、設定や拡張を加えます。
  • 部分カスタマイズ:既存製品に独自要件を加えた形になります。
  • フルスクラッチ:独自業務に合わせて、一から開発する方式です。

SaaSの導入期間は1〜3か月程度です。パッケージやクラウド拡張は、100万〜1,000万円程度で、3〜6か月程度かかります。

部分カスタマイズは、500万〜5,000万円程度で6か月〜1年程度です。フルスクラッチは、1,000万円から数億円以上で、6か月から数年に及ぶことがあります。

業務システム全般の目安は、小規模が10万〜500万円・3〜6か月、中規模が500万〜5,000万円・6か月〜1年です。大規模は5,000万円〜数億円以上・1年以上ですが、これは工数管理単体の価格表ではありません。

勤怠や会計、販売との連携の有無や、外部提供まで含むかで、同じ方式でも金額が変わります。ERP、請求、モバイルを含めるかどうかも、見積もりの差になります。

初期費用と3〜5年の総保有コスト

比べるときは、初期費用と運用にかかる費用を合わせ、3〜5年の総保有コストとして見ます。

  • 導入時:初期設定、開発、移行、教育の費用。
  • 継続運用:利用料、追加ユーザー、API、容量、サポート、保守にかかる費用。
  • 社内対応:セキュリティ対応と、運用に割く工数。

独自開発では、初期費用の年10〜20%程度を保守費として見込む方法があります。たとえば、3,000万円の開発なら、年450万〜600万円程度です。

利用者が50名、300名、1,000名以上と増えるほど、ユーザー課金の差が大きくなります。50名規模なら、標準SaaSと小さな設定変更が合理的な選択になる場合もあります。

1,000名規模で複雑な権限や勤怠・会計との連携がある場合は、月額課金と追加開発の総額を比べます。解約時のデータ出力と移行支援の費用は総額に含め、保存期間やアカウント削除の扱いも見落とさないようにします。

見積書の作業項目と前提条件

見積書は、作業項目と前提条件を分けて読むことで、後からの追加請求や範囲のずれを防げます。

  • 作業項目:要件定義、画面、権限、連携、移行、テストが、見積に入っているかを確認します。
  • 導入後の作業:教育や保守、稼働後の修正の扱い。
  • 前提条件:利用者数、案件数、データ年数、連携回数、帳票数を明記したもの。
  • 品質条件:問い合わせへの対応時間と、障害時の復旧目標の水準。

安く見える見積もりでは、テストデータの作成やマスタ整備が別料金になっていないかを確かめます。現場説明や並行稼働も、料金に含まれているかを見ます。

バックアップ復旧、セキュリティ診断、データ返却の扱いも確かめます。金額だけでなく、同じ成果物と品質条件をそろえて比べることが、正しい調達につながります。

ポイント

初期費用の金額だけで決めず、3〜5年の総保有コストと、見積書の前提条件をそろえて比べます。前提が違う見積もりは、金額の大小だけでは判断できません。

工数管理システムの開発会社/サービスの選び方

発注先を選ぶときは、知名度や機能数よりも、自社の業務を理解し、データを使える状態まで伴走できるかを見ます。

既製サービスを導入する場合と独自システムを開発する場合では、見るべき相手と評価軸が違います。まず標準機能で試せるサービスを比べ、事業にとって重要な差がある部分だけを開発の対象にするのが現実的です。

業務適合性と工数管理の実績

見るべき実績は、業務システムを作った件数だけでなく、どの範囲を扱ってきたかです。

  • 対応範囲:案件、工程、原価、勤怠のうち、どこまで扱ったかを聞きます。
  • 運用設計:入力が定着する画面の作り、既存データの移行の経験。
  • 導入効果:近い業種、規模、連携の事例で、改善が出ているか。

可能であれば、導入前後の入力率や集計時間、予実管理の改善も聞いておくとよいです。

営業の話だけでなく、要件定義に加わる業務担当者の役割も確かめます。設計者や開発者、保守担当者が誰なのかも、事前に見ておきます。

質問への回答が毎回別の担当者に戻る体制では、要件の意図が伝わりにくくなります。そこで、定例会と課題管理、変更承認の責任者を、提案書で確かめます。リリース判定を誰が担うかも、同じ資料で見ます。

連携・権限・セキュリティの実画面確認

デモでは、入力から出力までを通して見ます。データを出せることと、他システムへ移せる形式で出せることは別なので、サンプル出力も求めます。

  • 画面と権限:SSO、役割別権限、承認、締め、修正履歴の動き。
  • 出力と通知:CSV、API、障害通知、バックアップ復旧が動くかを確かめます。
  • 連携の処理:確定の時点、再処理、重複防止、ログの扱い。

従業員の情報や勤務実績、案件情報を扱うため、アクセス管理と委託先の体制を確かめます。

操作ログや暗号化、MFAの扱いを見ます。IP制限や保存地域の扱いも確かめます。脆弱性対応と事故通知の取り決めも、確認の対象です。

IPAのSaaS調査は、提供側の情報開示と利用側の問い合わせ収集を、安全な利用に重要としています(出典: IPA「クラウドサービス(SaaS)のサプライチェーンリスクマネジメント実態調査」、2024年更新)。

契約・納品物・解約時のデータ可搬性

契約書には、成果物の範囲と検収条件、仕様変更の扱いを明記します。障害の定義と復旧目標、保守時間もそこに書きます。再委託や知的財産権、個人情報、データ保存期間も、契約で決めておきます。

  • 独自開発:ソース、設計書、API、テスト結果、運用手順を、誰が持つのかを確かめます。
  • SaaS:解約後の出力形式と期間、削除証明、移行支援費。

問い合わせの前に、利用人数と案件数、入力単位を整理します。勤怠や会計、ERPとの連携、過去データの扱いも、ここで決めておきます。権限と予算、開始時期も、同じ一覧に書いておきます。

必須、希望、不要な要件に分けておくと、提案どうしを比べられます。

▶ 詳細はこちら:工数管理システム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方

▶ 詳細はこちら:工数管理システム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

ポイント

知名度や機能数より、自社の業務を理解し、データを使える状態まで伴走できるかで選びます。標準機能で試せるかを先に見て、差が重要な部分だけ開発の対象にします。

導入後に定着させる運用とKPI

導入直後の目標を「全員が毎日入力する」だけに置くと、数字を埋めること自体が目的になってしまいます。定着させるには、入力データが意思決定に使われ、その結果が現場へ戻る循環を作ることが条件です。入力する人にメリットがないのに、管理者だけがレポートを見る状態は避けます。

入力率だけでなくデータの正確さ

入力率だけでなく、正確さと業務改善への結び付きも、KPIで追います。

  • 入力と締め:完了率、締めまでの日数、承認滞留時間。
  • データ品質:勤怠差分率と、案件・作業名の表記揺れを見ます。
  • 改善の効果:集計時間と、予実差の発見から是正までの日数。

導入前のExcel作業と比べれば、管理者側でどれだけ効果が出たかを確かめられます。

指標は毎月見直し、数値の変化に応じて運用を調整します。入力率が低い場合は項目数や締めを減らし、勤怠差分が大きい場合は非案件時間のマスタを見直します。

予実差を説明できないときは、タスクの粒度を調整します。改善の窓口と変更の承認者も決めておくと、場当たり的な改修を防げます。

よくある失敗と防ぎ方

よくある失敗は、製品の性能よりも、要件や運用の設計が足りないことから起こります。

  • 目的を決めずに比較:狙いを一つか二つに絞って試行します。
  • 入力項目が多すぎる:時間を実測し、削れる欄を探します。
  • 運用・移行の先送り:差分、締め、修正のルールを決め、過去データを整えます。マスタ責任者と導入後の担当を決め、月次の改善会を開きます。

現場の入力結果を、案件の要員調整や作業の標準化に使うと、入力の意味を示せます。データが意思決定に使われていると実感できれば、入力を続ける動機になります。

法令・セキュリティ要件の考え方

工数データには、従業員の氏名や所属、勤務実績、案件情報が含まれます。

勤怠から会計まで連携する場合は、労務、個人情報、税務の要件を分けて整理します。法令上の記録と、経営管理のための工数を混同しないことが大切です。

36協定と工数データの関係

36協定の時間外労働上限は原則として月45時間、年360時間です(出典: 厚生労働省「労働条件・職場環境に関するルール」、2026年確認)。工数入力だけで、法的な労働時間の記録要件を満たせるとは限りません。

  • 工数の用途:案件ごとの時間把握や、超過兆候の通知を補助します。
  • 記録の扱い:法令上の労働時間とは区別して確認します。

勤怠打刻、入退館、PCログなどの客観記録との関係を、労務担当者と確かめます。申請・承認や特別条項の扱いは、対象者と集計期間を明確にして整理します。休憩、休日、業種固有の適用も、同じ前提で扱います。

アラートは、早めに確認するための補助です。違反を自動で解決するものではありません。

個人情報と電子取引データの扱い

個人情報保護委員会の指針は、個人データの安全管理を求めています(出典: 個人情報保護委員会「個人情報保護法についてのガイドライン(通則編)」、2026年6月改正反映)。

  • 個人データ:従業者教育、アクセス管理、委託先監督、漏えい対応の確認。
  • システム設定:最小権限、部署・役職別RBAC、操作ログ、MFAの設定。
  • 保管と削除:バックアップ、保存期間、削除手順を定めます。

請求書や注文書などを保存する場合は、電子帳簿保存法の対象範囲を経理と分けて整理します。訂正や削除の履歴、相互関連性を確かめます。日付・金額・相手方での検索と、税務調査時のダウンロード対応も確認事項です。

国税庁の2026年資料では、これらが確認事項とされています(出典: 国税庁「電子帳簿等保存制度」、2026年6月)。工数の履歴と取引データは、別々に設計します。

工数管理システムのよくある質問

工数管理システムは、導入方式と対象業務、勤怠や会計との境界を先に決めてから比べると、必要な機能と費用が見えやすくなります。

Excelから工数管理システムへ移行するメリットはありますか?

あります。複数人が同じファイルを編集する負担や、集計式の崩れを減らせます。案件名の表記揺れや承認状況の確認、過去データとの比較も、改善につながります。

ただし、入力項目と運用ルールを整理しないまま移行すると、Excelの複雑さをそのままシステムへ移すことになります。そのため、先に1部署で試す進め方が現実的です。

SaaSと独自開発はどちらを選べばよいですか?

標準的な入力や承認、集計を早く始めたいならSaaS、独自の原価計算や複雑な連携が競争力に直結するなら独自開発が候補になります。

最初から二択で考えず、標準SaaSのパイロットで業務を検証してから、差別化に必要な部分だけをカスタマイズする方法もあります。3〜5年の総保有コストや、将来のデータ移行のしやすさまで比べる必要があります。

工数入力の正確さを高めるにはどうすればよいですか?

入力単位は細かくしすぎず、案件・タスクの選択肢を整理します。コピーやカレンダー連携で入力時間を短くすると、記録のぶれを減らせます。

未入力を責めるだけでなく、入力したデータを要員調整や案件改善に使い、評価には使わず、業務改善の材料として本人へ返すことが有効です。

入力率や勤怠との差分、表記揺れ、予実差の説明のしやすさを、組み合わせて確かめてください。

できるとは限りません。工数は、案件や作業に使った時間を示すデータです。法的な労働時間の記録や個人データの安全管理、電子取引データの保存要件とは、対象も責任も異なります。

勤怠システムや社内規程、法務・労務・経理の確認と組み合わせて、要件を決めます。アラートと承認の要件、履歴の残し方、保存と削除の扱いを、ここで定めてください。

まとめ

選定で押さえる要点

標準機能で早く始めるか、独自業務を開発するかは、現場の入力負担や連携、セキュリティで判断します。さらに、3〜5年の総額と解約時のデータ可搬性も判断材料になります。

機能の一覧だけでなく、実際の入力から承認、締め、集計、出力までを通して確かめてください。

最初に実行すること

まずは利用条件を整理し、試行で効果を測ります。

  1. 利用人数、案件数、入力単位、勤怠・会計連携、過去データ、権限、予算、開始時期を整理します。
  2. 無料トライアルまたは1部署・1〜3案件のパイロットを計画します。
  3. 入力時間、未入力率、勤怠差分、承認滞留、集計時間、予実差を測ります。
  4. 必要な機能、連携、移行範囲、セキュリティ、3〜5年の総額を洗い出します。
  5. 同じ要件で複数の提案を比べ、システム開発が必要な独自業務を見極めます。

工数管理システムは、時間入力を超えて、業務と経営をつなぐ基盤です。案件、タスク、勤怠の記録を、原価や請求、経営判断に結びつけます。

データを使える状態に整え、改善の結果を現場へ返す運用まで設計すると、導入後も価値を生み出し続けられます。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。