医薬品製造業向け製造管理システム開発の完全ガイド

医薬品製造管理システムは、製造方式、工場や品目の規模、品質・設備連携の範囲によって構成が決まります。MESやEBRなどから段階的に導入すると、記録とロット追跡を一貫して管理しやすくなります。

ERPやLIMS、QMSは、受注や試験、逸脱などを受け持ち、MESと責任範囲を分けて連携させます。

▼関連記事一覧
・医薬品製造業向け製造管理システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順
・医薬品製造業向け製造管理システム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方
・医薬品製造業向け製造管理システム開発の見積相場や費用/コスト/値段について
・医薬品製造業向け製造管理システム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

医薬品製造業向け製造管理システムの全体像

MESを軸に、ERP、LIMS、QMSがそれぞれの責任範囲で連携する図。
役割を分けたシステムがロット情報を支えます。

製造管理システムは、承認済みの処方や手順を使い、原料投入から製造、試験、判定、出荷までをロット単位でつなぐシステムです。

現場の作業記録は、その一部にあたります。ただし、目的を「紙をなくす」だけに絞ると、品質保証や在庫管理との接続が後回しになり、効果が出にくくなります。

製造管理システムの定義と範囲

製造管理システムが指す範囲は、広義と狭義で異なります。製造形態によって工程や記録の細かさも変わるため、範囲は自社の形態に当てはめて考える必要があります。

  • 広い意味:生産計画、MRP、製造指図、工程進捗、在庫、品質試験、文書、出荷判定までを連携させる範囲です。
  • 狭い意味:製造実行システムのMESや、電子バッチ記録のEBRを指す場合が多いです。
  • 範囲の定義:製剤、原薬、無菌製剤、バイオ医薬品、CMO・CDMOの形態ごとに、自社が担う範囲を定めます。

MES・ERP・LIMS・QMSの役割の違い

MES・ERP・LIMS・QMSは、それぞれ責任範囲を明確にしたうえで、データを連携させて使います。受け持つ範囲が重ならないよう、各システムの役割を1つずつ確かめます。

  • ERP:受注、購買、会計、経営在庫など、会社全体の資源を管理します。
  • MES:現場の指図を実行し、工程ごとに作業者や時刻、原料、設備、条件を記録します。
  • LIMS・QMS:LIMSは試験依頼、検体、結果、判定を扱い、QMSは逸脱、変更、CAPA、教育、文書を管理します。

ロット情報の流れ

ロット情報は、受注後の指図から出荷判定まで、システム間の連携を通じて流れます。受注から出荷までの流れを、システムごとの受け渡しとして順に並べます。

  1. ERPなどから製造オーダーを受け、MESが承認済みの指図とレシピを展開します。
  2. 現場で秤量、投入、加工、包装を記録し、必要な検体情報をLIMSへ渡します。
  3. LIMSの結果・判定とQMSの逸脱・変更の影響をロット記録に結び付けます。
  4. 出荷判定までつなぎ、前方追跡と後方追跡を短時間で実行します。

ポイント

構成は、製造方式と工場・品目の規模、連携範囲で絞り込みます。全機能をそろえるより、品質リスクと業務効果の大きい範囲から始めると、範囲の膨らみを防ぎやすくなります。

必要な機能と導入範囲の整理方法

医薬品製造管理システムの機能を4つの領域に分けた図。
機能のまとまりごとに導入範囲を検討できます。

必要な機能は、製造方式と課題から逆算して決めます。最初から全機能を入れる必要はないため、品質リスクと業務効果が大きい範囲から選び、周辺システムとの境界を決めます。

記録が信頼できる状態で残り、後から説明できる設計も重視されます。

マスタ・処方・製造指図を管理する機能

同じ情報を複数の画面へ手入力すると、入力ミスや承認前の版が現場に流れるリスクが高まります。そのため、マスタ・処方・製造指図は、情報の出どころをそろえて管理する必要があります。管理の対象は、マスタ情報、規格・権限、処方・工程条件の3つです。

  • マスタ情報:製品、原料、資材に加えて、中間品、設備、工程も同じ仕組みで扱います。
  • 規格・権限:SOP、試験規格、容器包装、担当者権限なども、管理の対象です。
  • 処方・工程条件:版ごとに管理し、変更申請と承認が済んだ版だけを製造指図に使えるようにします。

ロット追跡・在庫・秤量を管理する機能

ロット管理と機器照合によって追跡性を保ち、調査や回収の際の確認を支援します。

  • 在庫情報:原料、中間品、半製品、最終製品を、ロット番号、有効期限、保管場所、使用可否で管理します。
  • ロット追跡:原料の投入先製品・バッチと、出荷後の顧客を逆引きできます。
  • 秤量照合:秤量器・バーコード・QRコードと連携し、予定量、実績量、許容差、投入対象を照合して、取り違えや誤投入を画面で止めます。

電子バッチ記録・監査証跡・電子署名の機能

電子製造記録には、作業情報と訂正時の証跡を残します。

どの機能がどの記録を支えるかは、3つの面から確かめます。

  • 作業記録:手順を画面に示し、入力値、実施者、時刻、承認者、訂正理由を記録します。
  • 訂正と監査証跡:変更者と変更内容を追跡し、元データを消さずに訂正します。
  • 電子署名と保護:認証、権限分離、タイムアウト、バックアップを設定します。

変更の経緯を後から追える状態にしておく必要があるため、検索のしやすさや保存期間もURSに明記します。

厚生労働省のガイドラインは、製造記録や工程管理、保管・出納を対象例として示しています(出典: 厚生労働省「医薬品・医薬部外品製造販売業者等におけるコンピュータ化システム適正管理ガイドライン」)。品質試験や文書管理も対象に含まれます。

同ガイドラインでは、関連システムのライフサイクルに加えて、変更、逸脱、教育、廃棄も管理対象として評価します。

ERP・LIMS・QMS・設備と連携する機能

連携を設計する際は、どのシステムのデータを正とするか、接続方式、通信断時の運用を決めておく必要があります。

  • 正とするデータ:受注・購買はERP、試験結果はLIMS、逸脱・CAPAはQMSが正の場合があります。
  • 設備・保管情報:実測値はDCSやPLC、保管位置はWMSを正とすることがあります。
  • 接続方式:API、CSV、データベース、メッセージ連携から選びます。
  • 通信断時:現場を止めるか、暫定記録で継続するかを定めます。

医薬品製造管理システムの種類と選び方

システムの種類は、製造方式、拠点数、設備、規制対象の範囲、導入のスピードから選びます。製品名や機能数だけで比べると、現場の例外処理やマスタ運用は判断しにくくなります。そのため、まず発注側で、最初の課題が紙記録の電子化なのか、工場全体の実行管理なのかを切り分けます。

電子バッチ記録・Lite MES型

紙記録の電子化を短期間で始めたい場合は、電子バッチ記録・Lite MES型が候補になります。

  • 導入範囲:手順、入力、承認、レビューを整えたうえで、1工場・1〜2工程のPoCにも使えます。
  • SaaSの活用:大規模な設備増設を避けやすく、2025年から国内での提供も広がっています。
  • 運用上の候補:既存MESのマスタ運用を簡素化する選択肢として紹介されています。
  • データと体制:GMP・CSV適合は前提にせず、保管場所、バックアップ、委託先評価、アクセス権を確認します。
  • 継続・受入:更新の影響、通信断時の業務継続、利用者側のURS、受入試験を確認します。

1工場向けパッケージ・MES型

複数の品目をひとつのシステムで管理する場合は、医薬品またはプロセス製造向けのパッケージ・MESが候補として挙がります。

  • 管理対象:指図、ロット在庫、原料払出、秤量、工程進捗、品質判定を扱います。
  • 標準機能:標準機能を活用できれば導入期間を抑えられ、設備連携や多品目への展開にも対応できます。
  • 業務適合:標準に合わせる業務と、独自に残す工程を見極めます。
  • 拡張範囲:Fit to Standardを基本に、競争力や品質に直結する機能だけを拡張します。

使い慣れた帳票をそのまま再現すると、アドオンが増え、更新や再バリデーションの負荷が高まることがあります。

多拠点MES・統合型・スクラッチ型

多拠点・統合型とスクラッチ型は、複数工場、特殊工程、設備連携といった要件に応じて検討します。

  • 多拠点・統合:共通マスタやDCSなどの実測値、バイオ・無菌工程の厳密な記録を扱うには、高度MESや統合型が必要になることがあります。
  • データモデル:ERP、LIMS、QMS、WMS、設備制御をつなぎ、経営から現場まで見通せます。
  • スクラッチ:標準製品では表せない特殊工程や、設備と密接な連携が必要な場合に検討します。
  • 長期保守:OS・DB更新、脆弱性、監査証跡、バックアップ、バリデート状態を維持する費用と体制が必要です。

規制やセキュリティの変化に合わせた長期保守の責任は、自社側に残ります。

ポイント

種類は、製造方式や拠点数、規制対象の範囲で絞り込みます。紙記録の電子化か工場全体の実行管理かで最初の課題を切り分けると、候補を比べやすくなります。

医薬品製造管理システムの導入の進め方

導入は、製品を選ぶ前に、関係部門が同じ課題を見られる状態を作ることから始めます。品質、製造、品質管理の各部門が課題を共有し、情報システム、設備、経営も加わります。

厚生労働省のガイドラインは、システムのライフサイクルを示しています。要求仕様、リスク評価、供給者評価に加え、検証、運用、変更・逸脱管理も含まれます。

開発会社やベンダーに任せきりにしないよう、利用者側の責任者を早期に決めておきます。

▶ 詳細はこちら:医薬品製造業向け製造管理システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

現状把握と対象範囲の決定

まず現状値と製造条件を把握し、そのうえでMVP候補と対象外の業務を決めます。

  • 現状値:レビュー時間、転記回数、ロット追跡時間、リリース日数を測ります。
  • 追加指標:棚卸差異、逸脱件数、マスタ改訂工数も押さえます。
  • 製造条件:製剤・原薬・無菌・バイオ等の形態、工場と品目の数、設備、既存のERP・LIMS・QMS、対象国の規制を一覧にします。
  • MVP候補:全工場を一括で刷新するより、品質リスクと効果の大きい紙バッチ記録、秤量、ロット追跡を比べます。

対象外の業務も明記しておくと、後から範囲が膨らむのを防げます。

URS・品質リスク評価・CSV方針の作成

URSとCSV方針は、要求と品質リスク、検証の証拠、利用者の責任を結び付けて作ります。

  • URS:業務要求や記録の完全性を書き、監査証跡、電子署名、権限、保存、検索も記します。
  • 運用要件:バックアップ、復旧、通信断、変更管理、教育、SOPも含めます。
  • 要求ごとの管理:各要求に、品質影響、必要な証拠、受入試験の方法、責任者を紐付けます。
  • CSV:カテゴリと品質リスクに応じてDQ・IQ・OQ・PQの範囲を決め、影響の大きい機能を優先します。

供給者のテスト証跡を活用できる場合でも、業務プロセスと設定値は自社で確認します。

PoC・要件定義・デモでの実機確認

提案やデモでは、正常な製造に加えて例外処理も試し、復旧からQAレビューまでの記録と流れを確かめます。

  • 原料・測定:期限切れ原料、規格外の値、誤ロット、秤量許容差超過を試します。
  • 権限・障害:権限外訂正、通信断、設備連携エラーを再現します。
  • 品質手続き:逸脱や承認差戻しを試し、復旧担当、記録、QAレビューを確認します。
  • PoCの評価:1品目・1工程・少数利用者で行い、レビュー時間の削減率、追跡回答までの時間、手入力の削減回数を数値化します。

数値にしにくい品質効果は、観測できる指標で測ります。たとえば、誤投入や記録欠落の防止、監査証跡の確認時間などが該当します。

開発・テスト・教育・段階リリース

まず本番前の設計、試験、準備を進め、そのうえで稼働後の変更管理を順に整えます。

  1. データモデルや連携、権限、監査証跡、バックアップ、復旧を設計します。
  2. 単体、結合、総合、受入テストを、現場と品質保証が実際の手順で確認します。
  3. マスタ移行、SOP改訂、教育記録、切戻し条件、並行稼働期間を本番前に固めます。
  4. 稼働後は初期不具合に加え、マスタ、設備、法規制、OS・データベース、権限の変更を管理します。

厚生労働省の2025年公表事例では、電子製造指図書やMES、LIMS、品質管理による人為的誤りの防止が紹介されています。また、品目ごとのマスタ作成や更新には、導入後も工数がかかります(出典: 厚生労働省「組織能力向上に資する取組事例」2025年公表)。

ポイント

製品を選ぶ前に、関係部門が同じ課題を見られる状態をつくります。対象範囲、URS、PoCの順に段階を踏むと、範囲の膨らみや例外処理の抜けに気づきやすくなります。

費用相場とコストの内訳

小規模SaaS型EBR・PoC、1工場向けパッケージ・MES、多拠点・高度連携の初期費用目安を横棒で比べた図。
導入範囲が広がるほど、初期費用の目安も上がります。

医薬品向けのMESやEBRは公開されている定価が少なく、費用はユーザー数、品目数、工場数によって変わります。既存のERP・LIMS・DCSとの連携は、費用に影響します。秤量・包装機器、データ移行、CSVの範囲も、費用に関わります。次に示すのは、2025〜2026年時点の生産管理システム相場に、医薬品固有の検証・監査・連携の工数を加えた、企画段階の目安です。正式な見積りではありません。

▶ 詳細はこちら:医薬品製造業向け製造管理システム開発の見積相場や費用/コスト/値段について

導入パターン別の初期費用と期間

初期費用と期間は、工場数、工程、機器連携、統合範囲によって変わります。

  • 小規模SaaS型EBR・PoC:1工場・1〜2工程、紙記録と少数機器連携で300万〜800万円、2〜6か月が目安です。
  • 1工場向けパッケージ・MES:複数品目、在庫、指図、ERP・LIMS・秤量連携、CSV、教育を含み1,000万〜5,000万円、6〜12か月程度です。
  • 多拠点・高度連携:eBR、QMS・WMS統合、グローバル要件、特殊工程を含み5,000万〜1億円以上、12〜24か月以上になることがあります。

金額は工程数や要件で上下するため、対象範囲と成果物をそろえて比べます。

初期費用に含めるべき項目

見積りは項目を分けたうえで、CSVや接続調査に含まれる作業の範囲を確認します。

  • 導入項目:ライセンス、環境、要件定義、設定・開発、帳票、移行、連携、機器接続を確認します。
  • 検証・運用準備:CSV、テスト、教育、SOP、稼働支援の範囲を確かめます。
  • CSVの成果物:URS、リスク評価、試験仕様・結果、逸脱管理、報告書の範囲を明確にします。
  • スクラッチ・調査:DQ・IQ・OQ・PQ、バックアップ・リストア、運用照査を含めます。

機器や既存システムの仕様が不明な場合、接続調査や現場立会いが別費用になることがあります。

ランニングコストとTCOの比較

初期費用に加えて、契約方式ごとの利用料と5年間の変更費も含めて比べます。

  • SaaS・クラウド:利用料はユーザー数、工場数、保存量、サポート、検証契約によって変わります。
  • 利用料の推定:年間100万〜500万円程度。類似業務SaaSと導入支援を基にした企画推定で、公開定価ではありません。
  • パッケージ・オンプレミス:保守、問い合わせ、脆弱性、OS・DB更新、バックアップ、監視、法改正対応を確認します。
  • 保守費:初期費用の年15〜25%程度とする見方もあります。
  • 別料金の作業:マスタ追加、帳票改訂、再バリデーション、教育、障害時の現場支援の費用がかかるかを確かめます。

別料金の有無で5年間の総額は変わるため、導入後の変更を含む5年TCOで比べます。

ポイント

費用は工場数、品目数、連携範囲、CSVの範囲で上下するため、見積りは条件をそろえて5年間のTCOで比べます。初期費用だけでは見えない差を把握しやすくなります。

開発会社・ベンダー・サービスの選び方

機能一覧の数より、品質保証と現場運用を一緒に設計できるかを見ます。「GMP対応」や「クラウド対応」と書かれていても、標準機能と追加対応の範囲は製品ごとに異なります。あわせて、監査証跡、電子署名、権限、データ完全性、CSVの対応範囲を確認します。

医薬品製造・品質保証の実績の確認

導入件数だけでなく、自社の製造形態や稼働後の運用に近い実績かどうかを確認します。

  • 業務との適合:製造形態、品目数、工場規模、ロット管理、設備、既存システムを照合します。
  • 規制・部門:対象国の規制を扱い、品質保証部門も参加した事例かを確認します。
  • 稼働後の経験:変更管理や監査対応まで含む事例を聞きます。
  • 導入時の実務:マスタ作成、教育、例外処理、連携テスト、切戻し計画を質問します。

導入効果だけを示し、運用工数を説明しない提案では、定着を判断しにくくなります。

CSV・連携・保守の担当範囲

RFPと契約では、CSV、連携、保守の担当範囲と成果物を明確にしておきます。

  • CSV支援:URS、リスク評価、供給者評価、試験証跡、DQ・IQ・OQ・PQを定めます。
  • 品質対応:監査、変更管理、逸脱時の支援範囲を明記します。
  • システム連携:対象ごとのデータ項目、頻度、エラー時の再送、責任者、ログ保管先をそろえます。
  • 運用・契約:クラウドとオンプレミスの保守分担に加え、終了時のデータ返却、移行形式、証跡保持を確認します。

クラウドでは、提供者が担うインフラ管理と、利用者が担う業務設定・ユーザー管理・CSVを分けて考えます。一方で、オンプレミスではOS・DBの保守、パッチ、バックアップ媒体、障害時の復旧時間を確認します。

デモと見積りでの例外処理の比較

候補各社に同じ例外処理のシナリオを渡し、デモと見積りを同じ条件で比べます。

  • 原料・測定:期限切れ原料、規格外測定値、作業者の訂正を試します。
  • 障害・品質処理:通信断、想定外の設備値、逸脱起票、承認差戻しを確認します。
  • 結果の記録:記録、監査証跡、通知、在庫状態、品質判定への反映を見ます。
  • 見積り条件:工場、品目、利用者、工程、連携先、移行量、CSV、教育、保守をそろえます。

追加開発単価、要件変更、遅延時の責任、検収条件、障害対応時間も契約前に確認します。

▶ 詳細はこちら:医薬品製造業向け製造管理システム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方

▶ 詳細はこちら:医薬品製造業向け製造管理システム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

ポイント

機能数より、品質保証と現場運用を一緒に設計できるかで候補を絞ります。例外処理を同じシナリオで比べ、CSVや保守の担当範囲を契約前に確かめると、導入後の食い違いを防ぎやすくなります。

導入後の運用と失敗の防ぎ方

本稼働は、マスタと手順を継続して管理する運用の始まりです。システムが使われなくなる原因は、操作の難しさのほかにもあります。画面が現場に合わない、例外処理が紙に戻る、マスタ更新の申請者が分からないといった問題があります。また、教育が一度きりで終わることや、障害時の代替手順がないことも、定着を妨げます。

マスタ管理と教育の業務設計

マスタの変更管理と利用者教育を、継続する業務として設計します。

  • 変更担当:品目、処方、工程、規格、設備、権限の登録から廃止までを決めます。
  • 承認・棚卸し:製造と品質保証の承認範囲を定めたうえで、SOPへの影響を記録し、定期的に棚卸しします。
  • 教育対象:管理者、製造、品質保証・管理、保全、情報システムで内容を分けます。
  • 教育手順:入力、訂正、逸脱、承認、通信断からの復旧を演習し、異動者の記録と権限付与も用意します。

使われていない版や重複データは、残さないようにします。

KPIによる効果と残課題の継続測定

稼働前の現状値と比べながら、業務効果と残る課題を継続して測ります。

  • 業務時間:紙記録のレビュー、バッチリリース、ロット追跡にかかる時間を測ります。
  • 品質・データ:手入力、棚卸差異、記録欠落、誤投入、逸脱、マスタ改訂を確認します。
  • 残課題:例外処理が別台帳に戻らないか、監査証跡のレビューに時間がかからないか見ます。

2026年時点では、紙記録から電子記録へ段階的に移行するモジュール型の考え方も広がっています。2026年1月公開の公式資料は、電子バッチ記録から始め、ワークフロー、電子署名、監査証跡、設備・業務システム連携へと広げる考え方を示しています。

品質リスクの高い工程から実績を見て対象を広げる方法は、現場停止のリスクを抑えやすいです(出典: ライフサイエンス製造向けDigital Batch Record公式資料、2026年1月)。

よくある質問

製造管理システムは、機能だけでなく、品質保証、現場、設備、既存システム、運用体制もあわせて考えます。導入前によく挙がる質問を、判断の軸とともに取り上げます。

一般的な生産管理パッケージでもGMP対応できますか?

対応できる可能性はありますが、導入しただけでGMP対応が完了するとは限りません。監査証跡、電子署名、権限、記録訂正を評価します。

さらに、バックアップ、変更・逸脱管理、CSV、SOPも評価します。必要な設定や追加機能は、受入試験で確かめます。

医薬品製造管理システムはクラウドでも問題ありませんか?

クラウドも選択肢になりますが、運用と検証で、どこまでを誰が受け持つかを確認します。

  • データと復旧:保管場所、アクセス制御、バックアップ、障害時復旧を確認します。
  • 継続運用:通信断、委託先評価、更新通知と影響評価を確認します。
  • 検証責任:再バリデーションの分担を決め、品質リスクに応じた管理証拠を用意します。

導入にはどのくらいの期間がかかりますか?

期間は導入範囲と準備状況で変わるため、製品を選ぶ前に対象工程と受入条件を固めておきます。

  • 小規模PoC・SaaS型EBR:紙記録の電子化に絞る場合は2〜6か月です。
  • 1工場のパッケージ・MES:6〜12か月が目安です。
  • 多拠点・高度連携:12〜24か月以上が目安です。

期間は、品目数やマスタ整備、機器接続、CSV、教育、並行稼働の範囲によっても変わります。

最初から工場全体に導入しなければなりませんか?

工場全体から始めなくても、品質リスクと業務効果をもとに段階的に導入できます。

  1. 紙のバッチ記録、秤量、ロット追跡などから対象を選びます。
  2. 1品目・1工程をMVPとし、効果と残課題を確かめます。
  3. 結果を踏まえて対象品目や工場を広げます。

将来のERP・LIMS・QMS連携やマスタ方針を考えたうえで、後から捨てる前提の小規模なシステムにはしません。

まとめ

導入判断で押さえるべき要点

導入判断では、機能と連携範囲に加えて、規制対応や運用負担まで評価します。

  • 業務基盤:MES・EBRを軸にERP、LIMS、QMS、WMS、秤量器、設備制御と連携します。
  • 記録と追跡:ロット単位の記録と追跡性を実現します。
  • 選定範囲:機能数や初期費用だけでなく、GMP、データ完全性、CSV、監査証跡を見ます。
  • 継続運用:マスタ維持、教育、保守、アップデートも含めます。

まず取り組むべき最初の一歩

対象を絞り、検証と運用を確かめてから段階的に広げます。

  1. 転記、レビュー、追跡時間を測り、URSと品質リスク評価で範囲を定めます。
  2. 1品目・1工程のPoCで例外処理を確認します。
  3. 検証と教育を行い、段階リリースへ進みます。
  4. 品質リスクの高い業務から標準機能とAPI連携で始め、実績をもとに拡張します。

全社の刷新を急ぐより、段階的に進めるほうが、現場停止とTCOのリスクを抑えられます。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。