不動産業界のシステムの選定ポイント/選び方/種類

不動産業界のシステムは、負荷が大きい事業モデルと工程を特定してから選びます。仲介、管理受託、事業間連携では、必要な機能が異なります。

知名度や機能数だけで決めると、Excelなどとの二重管理が残る可能性があります。そこで、種類や評価軸、選び分けを順に見ていきます。

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不動産業界のシステム選定前の自社課題の整理

最初に行うのは、どの事業モデルのどの工程で問題が起きているかを特定することです。製品カタログは、そのあとに集めます。

売買仲介、賃貸仲介、管理受託、開発、金融のうち、どの事業を中心に担っているかによって、優先すべき機能は大きく変わります。

反響対応の遅さとポータル連携の手作業

仲介が中心の会社は、SUUMOなどへの掲載に時間がかかっていないか、反響への返信が遅れていないかを確かめます。複数のポータルへの手入力が続いている場合は、コンバーター機能を優先して比べます。

発注側は、現場の担当者への聞き取りによって遅い工程を特定し、比べる基準を決めます。

管理受託が中心の会社では、家賃の入金消込や滞納督促、オーナー向け収支報告書の作成に時間がかかっていないかが課題になります。一方、宅建業法に基づく法定帳票の作成や、IT重説、電子契約の記録管理を担当者の経験だけに頼っている場合は、法対応の仕組み化が優先課題になります。

両者は必要な機能が大きく異なるため、どちらが自社にとってより深刻かを比べる必要があります。

複数事業モデルを横断する場合のデータ連携の課題

仲介と管理受託など複数の事業を営む会社では、顧客・物件情報を二重に入力していないかを確かめます。同じ物件が部門ごとに別々に管理されていないかも調べます。

単一事業向けの製品では解決しきれない場合、部門間のデータ連携が検討課題になります。

ポイント

課題が集中する工程を一つか二つに絞れていなければ、製品の比較はまだ始められません。事業モデルごとに必要な機能が違うため、この絞り込みが比較の出発点になります。

不動産業界のシステムの3つの種類

仲介、管理受託、複数事業モデル横断の3タイプと、それぞれが支える業務領域を並べた図。
自社の事業モデルに近いカードから、標準機能を見比べられます。

不動産システムは、主に3つのタイプに分かれます。複数の特徴を持つ製品もあるため、まず優先業務を標準機能で処理できるかを確かめます。

  • 仲介特化型:物件掲載、反響対応、追客など仲介業務を支える機能
  • 管理受託特化型:入金消込、契約管理、オーナー向け報告など管理受託業務を支える機能
  • 複数事業モデル横断型:事業間での顧客・物件情報の連携

仲介特化型

物件情報のポータル配信、反響管理、追客CRM、内見予約など、仲介のフロント業務に強いタイプです。反響から契約までの流れを効率化したい会社に向いています。

管理受託特化型

家賃の入金消込、滞納督促、契約更新・解約精算、オーナー向け収支報告書の自動作成など、管理受託(PM)業務に強いタイプです。そのため、評価では会計システムとの連携精度と、複数物件・複数オーナーを横断した収支管理の機能を中心に見ます。

複数事業モデル横断型

グループ内で複数の事業を営む会社が、事業間で顧客情報や物件情報を連携させたい場合に検討するタイプです。対象になる事業には、仲介や管理受託のほか、開発や金融もあります。

基幹システムに近い位置づけのため、既存の各事業部門のシステムとどう接続するかが、選定の中心的な論点になります。

実務では、賃貸仲介と管理受託を同じグループで手がける会社や、開発から仲介・管理まで垂直に統合している会社も多く、3つの型は互いに排他的なものではありません。そこで、まず自社の売上構成に占める事業モデルの比率を洗い出し、投資対効果が最も大きい領域から優先順位をつけます。そうすると、種類選びに時間をかけすぎずに済みます。

ポイント

売上の中心が一つの事業モデルにあるなら、その型の標準機能を優先して比べます。複数の事業にまたがるなら、事業間で顧客・物件情報を連携できるかを最初の条件に置きます。

製品選定で比較すべき7つの評価軸

事業モデルの網羅性、外部連携、法対応を候補比較の前に確認するチェック項目として並べた図。
3項目を先にそろえると、候補ごとの適合度を見比べやすくなります。

7つの評価軸のうち、事業モデルの網羅性、外部連携、法対応を先に見たうえで、次の4つの軸も候補ごとに確かめます。

  • 権限設計
  • 会計・基幹連携
  • セキュリティ
  • 料金体系とTCO

そのうえで、各候補に同じ質問を出し、回答を証拠つきでそろえると、印象に頼らず適合度で判断できます。

事業モデルの網羅性と外部連携

第一に、自社が優先する事業モデルの業務が標準機能で処理できるか、追加開発が必要かを確かめます。

第二に、SUUMOなどの外部ポータルへの配信方式と、レインズとの連携の有無およびその実現方式(API連携か、手作業に近い運用か)を確かめます。

特に、レインズ連携はシステム仕様上の制約が大きいため、「連携可能」と聞くだけで終わらせず、具体的な実現方式まで確かめる必要があります。営業担当者の説明だけでなく、実際の画面や連携ログも見せてもらうと、実運用時の負荷を判断しやすくなります。

第三に、法定帳票が自動で作成できるか、IT重説の記録や電子契約との連携ができるかを確かめます。

第四に、元付・客付ごとのマスキング機能と操作ログの範囲を確かめます。特に、こうした業界特有の要件は、一般的なデモでは見落とされがちです。

会計連携・セキュリティ・料金体系

第五に、会計連携の対象データと同期頻度、エラー時の対応を確かめます。

第六に、権限と操作ログを確かめます。さらに、バックアップとデータ保管の方法、契約終了時のデータ返却の条件を見ておきます。

第七に、料金は物件数や部屋数などの課金単位で比べます。初期費用と月額費用に、連携改修や教育の工数を加え、TCOを見積もります。7つの評価軸をすべて満たす候補は多くありません。そのため、譲れない評価項目を2〜3個に絞って厳しく判定し、ほかの項目は運用や追加設定で補えるかを見極めます。

ポイント

7つの評価軸をすべて満たす候補は多くないため、譲れない条件を先に決めておくと、候補の絞り込みに迷いにくくなります。

SaaS・個別開発・ハイブリッドの選び分け

ベスト・オブ・ブリード型を中心に、物件情報管理やポータル連携、独自の顧客ポータルや事業間連携、復旧担当の注目点を示した図。
標準業務と独自業務の境目に、データ管理と復旧の担当が置かれます。

標準的な仲介・管理業務を基本に、法改正への継続的な追随を重視するならSaaSが第一候補になります。一方で、独自の業務フローや複数事業モデルの横断が競争力に直結するなら個別開発が、標準業務と独自業務を分けられるならハイブリッドが適しています。

SaaSと個別開発の判断基準

SaaSは短期間で始めやすく、法改正やポータル仕様変更への対応も任せやすい選択肢です。ただし、独自業務や複数事業を横断する要件には、対応しきれない場合があります。

個別開発は独自の商流に合わせられますが、開発と保守を担う体制が要ります。

ベスト・オブ・ブリード型での役割分担

物件情報管理やポータル連携は不動産特化型SaaSに任せ、独自の顧客ポータルや事業間連携を開発する構成もあります。これがベスト・オブ・ブリード型です。そのうえで、発注側と開発会社は、データの正本と連携失敗時の復旧担当を事前に決めておきます。

どちらの構成でも、法改正やポータル仕様変更への追随を誰が担うかは、契約時に決めておく必要があります。ベンダーに任せる範囲と、自社が継続して投資する範囲を切り分けないまま契約すると、後から想定外の改修費用が発生しやすくなります。

ポイント

法改正やポータル仕様変更への追随を、社内と外部のどちらで担うかが、SaaSか個別開発かを分けます。社内に開発と保守を担える体制がないと、個別開発は続けにくくなります。

RFP・デモ・PoCの進め方

比較表やRFPには、業務シナリオと合格条件を示しておきます。デモでは、説明を聞くだけでなく、自社の業務フローを使って動きを確かめます。

RFPに記載する事業モデル別の業務シナリオ

RFPには、対象とする事業モデルと規模を書きます。規模は物件数や案件数で示し、現行の外部ポータルやレインズとの連携状況、法対応で困っている点も添えます。

そのうえで、業界特有の要件を必須・望ましい・将来の3段階で整理します。たとえば、元付・客付の双方の立場での操作、両手仲介時のログ管理、法定帳票の出力などが該当します。

すべての項目を必須にすると、対応できる候補がなくなってしまいます。だからこそ、優先度に応じてメリハリをつけることが、選定を前に進めるコツです。

PoCで優先して検証する連携の実現性とデータ移行

PoCでは、Excelや旧システムから物件・顧客データを移行できるかを検証します。さらに、外部ポータルやレインズとの連携精度を確かめます。

AI査定支援を使う場合は、実データでの誤出力リスクと、個人情報のマスキング運用を確かめます。

PoCの前に、成功と撤退の基準を数値で合意しておきます。たとえば、移行エラー率や連携応答時間に上限を設けます。基準がないと、検証が長引き、意思決定も遅れます。

不動産業界のシステム選定の失敗を避ける方法

よくある失敗は、機能一覧と管理画面の見た目だけで比べ、レインズ連携の実現方式や元付・客付の権限設計を確かめないまま決めてしまうことです。そこで、導入目的と対象の事業モデルを明確にし、現場の視点に加えて、法務や経理、情報システムの視点も選定に反映します。

機能一覧の見た目に頼った判断

優先業務が追加開発扱いになると、運用は複雑になります。そこで、必須要件で候補を絞り、残った製品はTCOと運用負荷で比べます。候補の確認には、不動産業界のシステム製品一覧も参考になります。

システム外の運用ルールと責任者

仕様変更や法改正に対応する担当者を決めておきます。両手仲介のログや法定帳票を、誰が確認するかも定めておきます。削減効果をどう実測するか、導入範囲をどこまで広げるかの条件を明らかにしておくと、更新判断がしやすくなります。

導入範囲を最初から全事業モデル・全拠点に広げることも、失敗の原因になります。そこで、課題が大きく、関係者の協力を得やすい事業モデルや拠点から始め、運用が定着してから対象を広げます。こうすると、現場の混乱を抑えながら効果を確かめられます。

ポイント

導入の目的と対象の事業モデル、運用の担当者が決まらないまま比べ始めると、後から判断がぶれやすくなります。決めておく範囲を先に絞ると、比較の進みも早くなります。

不動産業界のシステム導入前に確認しておきたいポイント

候補を絞ったあとは、対象事業モデルの網羅性だけでなく、レインズ連携の実現方式や権限設計、実案件での運用まで確かめます。これにより、比較表の機能欄では見えにくい条件を事前に検証でき、導入後に運用が止まるリスクを抑えられます。

複数の事業モデルを一度に置き換えない段階的な導入

すべての事業モデルを一度に対象にしなくてもよく、最も課題が大きい事業モデルから段階的に導入する進め方も現実的です。

事業モデルごとに求められる機能は大きく異なるため、無理に一つの製品に統一しようとすると、かえって使いにくくなることがあります。また、小さく始めて成果を確かめながら対象を広げると、社内の合意形成もしやすくなります。

レインズ連携の制約の事前確認

レインズ連携には制限があります。そのため、「連携対応」という説明だけで判断せず、実現方式と、仕様変更時の改修体制・費用を確認してください。

1つの事業モデル・1案件に絞ったPoCの対象設定

PoCを複数の事業モデルにまたがって広く実施すると、検証項目が発散し、評価が曖昧になります。そこで、最も優先度の高い事業モデルの1案件に絞り、データ移行から外部連携、法定帳票の出力まで通しで確かめるほうが、実運用に近い判断材料を得られます。

まとめ

課題が集中する工程を見つけ、仲介・管理受託・複数事業連携の優先度を決めます。そのうえで、7つの評価軸で候補を比べ、実案件のPoCで連携と移行を確かめます。

複数の事業を営む会社は、優先順位を先に決めておくと、検討が長引きにくくなります。

自社の事業モデルを起点にした選定範囲

SaaS、個別開発、ハイブリッドのどれを選ぶかは、標準化できる業務と、自社独自の商流や権限設計をどこで分けるかで決まります。

既製の不動産特化SaaSでは、複雑な事業モデル横断の連携や元付・客付の厳密な権限制御に対応できない場合があります。その場合に無理に業務を合わせると、現場の二重入力が残ります。

候補を絞ったあとの実案件PoCでの最終確認

資料に並ぶ機能の数より、自社の商流を一貫して処理できるかを確かめます。そのうえで、関係部門で例外処理を試し、削減時間と残る工数を測ってから決めます。既製SaaSで権限設計や複数事業の連携を補えない場合は、個別開発やハイブリッドも選択肢に入ります。

riplaは、事業モデル別の要件整理、SaaSと外部ポータル・レインズ・基幹システムの連携、独自業務の個別開発を支援しています。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。