浄水場監視システムの開発は、監視範囲、施設規模、既設設備の活用範囲に応じて、必要な方式と開発規模が変わります。そのため、対象範囲を先に整理しておくと、方式の選択から発注、費用の見積もりまでを一つの流れで進めやすくなります。
各テーマの詳細は、次の関連記事で扱っています。
▼関連記事一覧
・浄水場監視システム開発の進め方
・浄水場監視システム開発でおすすめの開発会社6選と選び方
・浄水場監視システム開発の見積相場・費用
・浄水場監視システム開発の発注・外注・委託方法
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浄水場監視システムの概要

浄水場監視システムは、取水・沈砂・凝集・沈殿・ろ過・消毒・送水などを監視・制御するOT(制御技術)システムです。
ポンプ、薬品注入、受変電、場外配水池などの設備も対象になり、センサー、PLC/RTU、通信網、SCADA/HMIを使います。
監視のみと監視制御の違い
同じ浄水場の画面でも、状態を見るだけの「監視」と、設定値の変更やポンプ・弁の操作まで行う「監視制御」では、必要なリスク対策や開発規模が異なります。
- 監視のみ:計測値とアラームを遠隔で確認できれば目的を果たせるため、比較的短期間・低コストで導入しやすい方式です。
- 監視制御:誤操作を防ぐインターロック、権限管理、通信断時のフェイルセーフ、操作履歴の監査ログが加わるぶん、費用と開発規模が大きく増えます。
夜間巡回の負担を減らしたいのか、熟練職員の退職を見据えて操作を省人化したいのかで、選ぶ範囲は変わります。目的を決めないまま範囲を定めると、後から仕様が膨らみやすくなります。
主要機能と構成要素
基本機能は、処理工程の状態把握と設備操作のほか、記録や異常対応を支える機能からなります。
- 計測・制御:流量、水位、圧力、濁度、残留塩素、pHを集め、PLCで自動制御します。
- 中央監視:中央の画面で状態を表示し操作できるほか、アラームを通知します。複数施設をまとめて見る広域監視も含みます。
- 記録・保全:トレンドや帳票・履歴の記録、権限管理を含む監査ログ、バックアップと冗長化、停電時の復旧を担います。
さらに、映像監視やタブレット対応と連携する構成もあります。設備台帳、保全管理、電力使用量分析まで連携の対象を広げる構成もあります。
浄水場監視システムの種類と技術選択肢
実現方式は、既製パッケージ、クラウド、スクラッチ開発、ハイブリッドの4つに大別できます。方式の選び方は、施設規模や既設設備、独自の水処理ロジックの有無によって変わります。
パッケージ・クラウド・スクラッチ・ハイブリッドの違い
方式は、導入期間や既設設備との適合性など、重視する条件に合わせて比べます。
- パッケージ:短期・低リスクで導入したい場合の選択肢
- クラウド:遠隔参照や複数拠点のデータ活用を重視する場合に向く
- スクラッチ:独自の水処理ロジックや既設設備が多い場合に現実的
- ハイブリッド:パッケージを基盤に、不足する機能だけを追加開発する方式で、実務でも広く採用されています
制御系を直接インターネットに公開せず、監視に必要なデータだけをクラウドへ一方向で連携する設計もあります。費用を抑えながらセキュリティリスクを下げられるので、多くの案件で採用されています。
水道情報活用システムとデータ標準化
国土交通省が示す水道情報活用システムは、設備・機器情報や事務系データを横断利用するための標準化の考え方です。
- 標準化の対象:データプラットフォーム、アプリケーション、デバイスのインターフェースなど
- 初期要件:将来の更新で特定のベンダーに閉じないよう、データ項目、時刻同期、単位、タグ命名、通信プロトコル、APIの所有権を含めます。
(出典: 国土交通省「DX活用の推進/水道情報活用システム」、2026年)
浄水場監視システム開発の進め方

開発は、現状調査から運用改善までを7段階に分けて進めます。段階ごとに区切ると、全体像を見渡せます。
工程を飛ばして設計に入ると、現地の実態と要件がずれたまま進むため、手戻りが生じやすくなります。
現状調査・要件定義フェーズ
最初の調査では、設備の資料と更新の条件を確認します。そのうえで要件定義では、監視・操作の範囲や運用条件を決めます。
- 現状調査:P&ID、I/Oリスト、PLC・盤・計装・ネットワークの構成を洗い出す
- 保守・停止条件:OS・ライセンスの保守期限と、施設を止められる時間帯
- 要件定義:監視範囲、操作権限、アラーム優先度、保存期間、水質の受け持ち範囲を決めます
- 運用要件:可用性、災害時の運転継続、教育、保守のSLAを取り決めます
夜間巡回時間や異常対応の平均時間を基準値として記録しておくと、稼働後に導入効果を数値で示せます。さらに、次の予算要求でも説明材料として使えます。
設計・実証・構築フェーズ
基本設計では、調達方式と技術を比べます。次に、接続試験から構築、現地切替までの設計を順に進めます。
- 調達方式:既設一括更新、アプリ・設備の分離発注、D/B/M一括、PFI・包括委託を比べる
- 技術選定・実証:パッケージSCADA、クラウド監視、水道情報活用システム対応、OPC UAなどを比べ、非制御データの収集と一施設での接続試験を行います。
- 詳細設計・構築:PLC/RTU、HMI、サーバ、ネットワークの冗長化、時刻同期、バックアップ、権限・ログの設計
現地施工と既設切替の手順も作成します。
試験・移行・運用改善フェーズ
試験から運用改善まで、次の順に進めます。
- FAT(工場試験)とSAT(現地試験)では、通信断、停電、センサー異常、復旧、誤操作を想定して試験します。
- 異常時の動作を確かめたうえで、並行運転を経て本番へ切り替えます。また、運転員の教育と操作マニュアルも納品物に含めます。
- 稼働後は、アラーム件数、巡回時間、復旧時間、水質逸脱、電力使用量、保守費用をKPIとして追います。
契約更新の時期に備えて、データと仕様を次の事業者へ引き継げる状態にしておくと、継続的な運用改善につながります。
▶ 詳細はこちら:浄水場監視システム開発の進め方
開発会社・サービスの選び方
会社やサービスは、知名度や初期価格だけで決めず、公開実績、製品の適合性、既設設備との接続性、保守体制を同じ条件で比べて選びます。
個社名の一覧は関連記事にまとめているため、ここでは選定の考え方を解説します。
実績と対応範囲の確認方法
候補会社に対しては、監視のみか制御まで対応できるか、対象施設数、対応できる既設設備の種類を確かめます。
- 参加・拠点体制:入札参加資格、地域拠点、夜間対応の可否
- 類似実績:同規模のFAT・SAT実績と、公開されている自治体案件の規模感
自社の施設規模に近い実績を持つ会社を候補に加えると、費用感のずれを減らせます。
相見積もりで条件をそろえる方法
複数社へ見積もりを依頼するときは、まず前提条件をそろえます。金額だけでなく、作業や引き継ぎの範囲も比べることが欠かせません。
- システム条件:監視のみか制御までか、施設数、既設流用範囲、クラウド接続の可否
- 契約条件:保守年数と、現地工事・保守・教育・データ引き継ぎの範囲
内訳まで比べておくと、後から想定外の追加費用が発生しにくい発注につながります。
▶ 詳細はこちら:浄水場監視システム開発でおすすめの開発会社6選と選び方
費用相場とコストの内訳

費用は、対象範囲ごとに3〜4層に分けて考えます。また、一般的な業務Webシステムの相場を、そのまま当てはめられない点にも注意が必要です。
規模別の費用レンジ
費用と期間の目安は、対象規模ごとに異なります。
- 既設を活用した部分改修:500万〜3,500万円、3〜9か月
- PLC・HMIを含む中央監視更新:1,000万〜1億円、6〜15か月
- 1浄水場と標準化アプリまでの更新:5億〜15億円、24〜36か月
- 複数浄水場の広域運転監視基盤:10億〜30億円以上
神戸市の2025年案件では、浄水場の中央監視制御設備改修が539万円、工水監視システム改修が2,530万円でした(出典:神戸市「水道局随意契約(2025年11月物品等契約分)」、2025年)。
名張市の2025年案件は、中央監視制御設備、対応アプリ、場外テレメータ5対向、計装機器を含み税込11.33億円でした。履行期間は約31か月です(出典:名張市「令和7年度上半期契約状況」、2025年)。
日立製作所が受注した広島県9浄水場の案件は、契約金額約10億円でした(出典:株式会社日立製作所「広島県の浄水場9カ所の広域運転監視・制御システムを受注」、2022年)。
初期費用以外のランニングコスト
初期費用だけでなく、稼働後の費用も予算に組み込み、長期の総費用で評価します。
- 定期費用:年間の保守・監視費用、通信回線費、クラウド利用料、ライセンス費
- 対応費用:脆弱性対応、現地への駆け付け費用
- 長期評価:15年・30年のライフサイクルコスト、運用費の上限、更新時の再競争性
長期評価まで含めれば、総費用を見誤りにくくなります。
▶ 詳細はこちら:浄水場監視システム開発の見積相場・費用
発注・外注の進め方
発注方法には、一括発注、アプリと設備工事の分離発注、D/B/M方式、PFI・包括委託があります。どの方式を選ぶかは、対象範囲と長期的な運用体制に合わせて決めます。
発注方式の選び方
発注で何を重視するかによって、方式を選び分けます。
- 一括発注:窓口を一本化したい場合に向く
- 分離発注:専門性を重視したい場合に向く
- D/B/M・PFI・包括委託:複数施設をまとめて更新し、維持管理まで長期契約で一体化したい場合の候補
維持管理と更新を一体で任せる方式では、原則10年程度の長期契約や、プロフィットシェアが要件に含まれることがあります。
(出典:国土交通省「上下水道:官民連携(PPP/PFI)の活用」、2026年)
RFP作成と見積比較のポイント
RFPには、見積もりの条件と更新範囲を明記します。あわせて、契約終了時の引き継ぎ条件も発注前に確かめておきます。
- 範囲:監視範囲、施設数、既設流用範囲、更新対象の計装・盤
- 運用条件:クラウド接続の可否、保守年数
- 引き継ぎ条件:データ項目、通信プロトコル、API仕様の公開と、データ・設定値の引き継ぎ可否
次の事業者へ移る場面を想定しないまま契約すると、データや設定値を取り出せずに困ることがあります。
▶ 詳細はこちら:浄水場監視システム開発の発注・外注・委託方法
セキュリティと運用のポイント
浄水場の監視制御システムは重要インフラの一部であるため、セキュリティと安定運用を両立させる必要があります。
情報セキュリティガイドラインへの対応
国土交通省は2026年5月、「水道分野における情報セキュリティ確保に係る安全ガイドライン」を第二版に改定しました。また、浄水場の監視制御システムは、重要システムの例に含まれています(出典:国土交通省「水道分野における情報セキュリティ確保に係る安全ガイドライン」第二版、2026年5月改定)。
要件定義では、接続方針と基本対策を確かめます。具体的な適用の可否は、事業者のリスク評価と最新のガイドラインをもとに判断します。
- 接続・認証:インターネット接続、閉域網・分離の方針、主体認証、入退室管理
- 端末・媒体:サポート中のOS、不正プログラム対策、USBなど媒体の管理
- 記録・対応:ログ、バックアップ、インシデント対応
運用KPIと継続的な改善
稼働後は、運用状況をKPIで定期的に確かめます。導入目的に応じた変化を測り、その結果を次の更新要件に反映します。
- 運転状況:アラーム件数、巡回時間、復旧時間、水質逸脱の有無
- 費用:電力使用量、保守費用
熟練職員の退職や夜間巡回の負担軽減が目的であれば、巡回とアラーム対応の時間の削減量を測ります。
運用担当者が改善要望を出す定例の場を設けると、現場の使い勝手と実装機能のずれを早期に発見できます。さらに、次回更新の要件定義には、こうした運用データを反映するのが望ましいです。
よくある質問(FAQ)
浄水場監視システムの検討初期に多く寄せられる質問に、順に答えます。
浄水場監視システムの開発費用はいくらですか?
既設を活用した部分改修は500万〜3,500万円、PLC・HMIを含む中央監視更新は1,000万〜1億円が目安です。範囲によって金額が変わるため、内訳を明確にして比較します。
1浄水場と標準化アプリまでの更新は5億〜15億円、複数浄水場の広域運転監視基盤は10億〜30億円以上が目安です。
クラウドを使えば安全性は自動的に高まりますか?
安全性を保つには、クラウドを使うこととは別に、設計で守りを固める必要があります。たとえば、制御系を直接インターネットに公開せず、監視データだけを一方向で連携する設計があります。
設計では、通信の暗号化、アクセス制御、ログ管理も組み合わせます。
監視だけであれば一般的なWeb開発と同じだと考えるのは、誤解になりがちです。OTでは、安全性と可用性は情報系の利便性と切り分けて考えます。
既設のPLCや盤を止めずに更新できますか?
多くの案件で、既設を稼働させたまま新旧システムを一定期間並行運転し、計測値やアラームが一致することを確認してから本番へ切り替える方法が採られています。
この方法を取るには、現状調査の段階で、施設を止められる時間帯や範囲を正確に把握しておく必要があります。
まとめ
浄水場監視システムの開発では、最初に監視のみか監視制御までかを決めます。水道情報活用システムの考え方に沿ってデータを標準化しておくと、長期的な運用につながります。
全体像から発注準備までの流れ
まず、現状調査と要件定義で対象範囲を固めたうえで、パッケージ・クラウド・スクラッチ・ハイブリッドから方式を選びます。
次に、費用相場とライフサイクルコストを踏まえて発注方式を決めると、手戻りの少ない開発につながります。
セキュリティガイドラインへの対応は、企画段階から織り込んでおく必要があります。
次のアクションと各論の記事
次の一歩として、現状設備を洗い出し、監視範囲、保守年数、既設流用範囲を整理した仕様書の草案を作ります。開発の進め方、会社選び、費用、発注方法の詳しい内容は、関連記事をご確認ください。
▼関連記事一覧
・浄水場監視システム開発の進め方
・浄水場監視システム開発でおすすめの開発会社6選と選び方
・浄水場監視システム開発の見積相場・費用
・浄水場監視システム開発の発注・外注・委託方法
▼RFP作成前に読みたい無料ホワイトペーパー
・業務システム開発の完全ガイドブック
・スクラッチシステム開発の完全ガイドブック
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会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
