日経リサーチが2026年7月29日〜8月6日に実施し、Reutersが報じた調査で、日本企業のAI活用の実態が示されました。
全社的な本格活用は16%にとどまり、84%は限定的活用か未着手です。
一方で、AI予算を減らす企業はゼロでした。投資意欲と現場実装の差を、経営とDX推進の課題として捉える必要があります。
※本記事は2026年8月27日時点の情報です。

調査の全体像|日本企業の84%が本格活用に至らず
今回の調査は、日経リサーチが510社に接触して実施しました。
匿名回答を条件に、219社が回答しています。
報道された活用度の内訳は、次のとおりです。
| AI活用の状態 | 回答割合 | 読み取れる位置づけ |
|---|---|---|
| 全社的な本格活用 | 16% | 全社導入の段階 |
| 一部部門・限定用途で活用 | 約60% | 利用範囲が限られる段階 |
| 導入するか未決定 | 18% | 判断前の段階 |
| 導入を検討していない | 6% | 検討前の段階 |
限定的活用の約60%に、未決定18%と非検討6%を加えると84%です。
つまり、AIを使う企業がないのではありません。全社的な本格活用まで広がっていない企業が大多数です。
この84%は、限定的な利用と、導入判断の前段階を合わせた数字です。
そのため、すでに一部業務で使う企業と、まだ検討していない企業を同じ施策で扱えません。
経営会議では、全社導入の賛否だけでなく、自社がどの段階にいるかを確認する必要があります。
段階を分けて見ることが、予算と実装の差を見つける出発点になります。
510社に接触し、219社が匿名で回答したという調査設計も押さえておきます。
企業の活用度を議論するときは、回答割合と、自社の状況を分けて扱います。
自社が16%側か84%側かを決める前に、部門ごとの利用状況を棚卸しします。
- 利用中:どの部門がどの業務で使っているか
- 判断中:導入判断に必要な材料が何か
- 未着手:検討を始める責任者が誰か
ポイント
調査では、全社的な本格活用は16%でした。限定的活用約60%、未決定18%、非検討6%を合わせた84%は、本格活用の手前にあります。
予算方針|AI予算を「減らす」企業はゼロ

活用度が伸びきらない一方、AI予算を「減らす」と回答した企業はゼロでした。
今後1〜2年の予算見通しは、増額、横ばい、未定に分かれています。
| 今後1〜2年のAI予算 | 回答割合 |
|---|---|
| 年50%以上の増加 | 4% |
| 10〜50%の増加 | 21% |
| 一桁台の増加 | 30% |
| ほぼ横ばい | 14% |
| 未定 | 31% |
増額を見込む回答は、3つの増加区分を合計すると55%です。
予算削減の動きがないことは、AI投資への関心が残っていることを示します。
ただし、予算の確保だけで全社活用が進むとは限りません。
企業の課題は、投資の有無から、使い方と展開方法の具体化へ移っています。
予算見通しで最も多いのは、未定の31%です。
未定という回答は、投資をしないと決めたこととは異なります。
一桁台の増加を見込む企業は30%で、10〜50%の増加は21%でした。
大幅増だけを投資意欲とせず、横ばいを含む方針全体を見ることが大切です。
横ばいの14%も、既存の利用を維持する予算を想定している可能性があります。
DX推進担当は、予算額の申請と同時に、対象業務と成果の確認方法を示します。
増額率だけを目標にすると、利用部門を増やすことが目的になりがちです。
予算申請では、導入費用、教育、運用ルール、効果測定を分けて示します。
特に31%の未定企業は、判断に必要な業務データをそろえることが先です。
横ばいの企業も、既存用途の定着を確認してから次の投資を判断できます。
予算の大小ではなく、利用の継続条件を明確にすることが実装を支えます。
AIの予算設計では、AI利用時の個人情報保護法対応のような統制コストも、導入計画と一緒に考える必要があります。
ポイント
AI予算を減らす企業はゼロで、今後1〜2年に増額を見込む回答は合計55%です。投資意欲はあるため、予算を実装成果へ結び付ける設計が焦点になります。
投資と実装のギャップ|限定的活用から全社展開へ

この調査結果からは、予算と活用度の間にギャップがある状態が示唆されます。
予算を確保していても、全社で使う業務や責任範囲が定まらなければ、利用は限定されます。
報道では、卸売業の管理職から「文書作成など特定業務のみ」という趣旨の声が紹介されました。
不動産企業の担当者からは、「使い方が分からない」という趣旨の声も出ています。
これらは個別の匿名コメントです。全企業の傾向と決めつけず、現場課題の例として扱います。
- 投資のギャップ:予算方針は前向きでも、成果を測る単位が定まっていない
- 業務のギャップ:使う業務が一部に限られ、部門間の横展開が止まる
- 人材のギャップ:現場が使い方を判断できず、利用開始まで進まない
ギャップを埋めるには、ツールの追加よりも、業務単位の利用設計が先になります。
本格活用へ進む企業では、AIを導入する部門の数だけを追いません。
どの業務で、誰が使い、誰が結果を確認するかを決めます。
この設計がないまま利用部門を増やすと、部門ごとに使い方が分かれます。
すると、予算を使っても、全社で学びを共有しにくくなります。
匿名コメントにあった「特定業務のみ」という状態も、次の展開単位を決めることで整理できます。
「使い方が分からない」という状態には、ツール説明だけでなく業務例が必要です。
経営層は利用率だけでなく、業務のどこで価値が出たかを確認します。
部門横断で展開するには、成功した使い方を言語化して共有します。
共有する内容は、ツール名だけでなく、入力、確認、修正の手順です。
部門ごとに異なるルールがある場合は、共通部分と個別部分を分けます。
現場から出た改善案を、次の部門へ移す責任者も決めておきます。
こうした運用があれば、限定的活用を一時的な試行で終わらせません。
AI事業者ガイドラインの7原則と企業運用も、利用ルールを決める際の論点になります。
ポイント
84%という数字は、AIを使わない企業だけの問題ではありません。限定的な利用を、業務・部門・人材の単位で全社展開へつなげる実装力が課題です。
ギャップの埋め方|予算を現場の利用へ変える4つの打ち手

全社展開を急ぐ前に、限定的な利用を再現できる形へ整えます。
- 業務を一つ選ぶ:文書作成など、効果を確認しやすい業務から対象を絞る
- 利用者を決める:対象部門と責任者を置き、誰が使うかを明確にする
- ルールを先に置く:入力情報、確認者、利用できない場面を定める
- 成果を確認する:利用状況と業務上の変化を見て、次の部門へ展開する
重要なのは、予算消化ではなく、現場が繰り返し使える業務モデルを作ることです。
最初の業務は、結果を確認しやすく、関係者を絞れるものが向いています。
利用者を増やす前に、入力情報と出力結果の確認者を決めます。
ルールは、禁止事項だけでなく、確認が必要な場面まで具体化します。
成果確認では、利用回数だけでなく、業務時間や修正の手間を見ます。
一つの部門で使い方が定まれば、似た業務を持つ部門へ展開できます。
この順番なら、予算を次の利用へ配分する判断もしやすくなります。
個人情報や権限の論点は、導入後ではなく、業務選定の段階で確認します。
業務選定では、成果だけでなく、誤りが起きた場合の確認方法も決めます。
利用者が判断に迷う場面を先に洗い出すと、教育内容も具体化できます。
責任者は、利用開始の承認者と、結果を確認する担当者に分けても構いません。
重要なのは、誰か一人に全社展開の負担を集中させないことです。
予算が確保されている今こそ、現場が使い続ける条件を設計します。
月次の確認では、利用した部門、対象業務、確認者を同じ形式で記録します。
記録がそろえば、次の予算をどの業務へ振り向けるか判断しやすくなります。
利用が進まない場合も、ツールの問題か、業務設計の問題かを分けて考えます。
現場の声を集め、ルールや教育内容を更新することも実装の一部です。
全社展開は、一度の号令で終わるプロジェクトではありません。
小さな利用を確認し、同じ条件で再現できる業務から範囲を広げます。
この積み重ねが、予算と実装のギャップを縮める現実的な進め方です。
経営層は、予算の継続条件を現場の記録と結び付けて確認します。
DX推進担当は、部門ごとの試行を全社の学びへ変換します。
現場は、使う業務と使わない業務の境界を理解して利用します。
この三者の役割がそろうと、予算だけが先行する状態を防げます。
84%という結果を、自社の次の一歩を決める共通材料にします。
まず現状を分類し、次に業務を選び、最後に全社展開を判断します。
この順番なら、投資意欲を具体的な利用へ移しやすくなります。
調査結果は、AI導入の遅れだけでなく、改善余地の大きさも示しています。
経営と現場が同じ分類で話せる状態を作ることが、実装を進める土台です。
分類と実行をつなぐ責任者を置くことで、調査結果を行動へ変えられます。
その責任者が、予算と現場をつなぎます。
運用を継続します。
全社展開の判断では、利用部門を増やす前に、ルールと確認者が機能しているかを見ます。
AIエージェントの権限を管理する非人間IDの考え方も、利用者と責任者を整理する際に役立ちます。
自治体の内製化事例である東京都の生成AI基盤や、企業のDX基盤を扱う関西電力グループの取り組みも、展開設計を考える材料になります。
ポイント
ギャップを埋める順番は、業務選定、責任者設定、ルール整備、効果確認です。小さな利用を再現可能にしてから、部門と用途を広げます。
よくある質問
Q. 調査はいつ実施されましたか?
日経リサーチが2026年7月29日から8月6日まで実施しました。510社に接触し、219社が匿名条件で回答しました。
Q. 84%はどのような内訳ですか?
限定的活用が約60%、導入するか未決定が18%、導入を検討していない企業が6%です。
Q. AI予算を減らす企業はありましたか?
AI予算を減らすと回答した企業はゼロでした。今後1〜2年の予算は、増額、横ばい、未定に分かれています。
まとめ
日本企業のAI活用は、全社的な本格活用16%に対して、84%が限定的活用か未着手です。
AI予算を減らす企業はゼロで、予算意欲と実装の差を埋めることが経営課題になっています。
84%という結果は、投資を止める理由ではなく、実装の進め方を見直す材料です。
予算、業務、責任者、効果確認を一つの計画にまとめることが次の一手です。
ポイント
AI導入の次の焦点は、予算を増やすことだけではありません。業務を選び、責任者とルールを置き、効果を確認して横展開する実装設計が重要です。
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