OpenAI「Decisions API」を解説|型付き判定を高速・低コスト化

OpenAIは2026年10月6日、gpt-6-lunaを使う「Decisions API」をベータでリリースしました。テキストや画像を評価し、条件が真である確率、固定された選択肢、ルーブリックに対するスコアという型付きの判定を、専用のPOST /v1/decisionsエンドポイントから返します。公式Changelogの説明では、Responses APIより10倍高速です。

企業のシステムでは、問い合わせを担当部署へ振り分ける、画像の損傷を確認する、障害の重大度を段階評価するといった処理に使えます。自由記述の回答を人や別のプログラムが読み取る構成から、アプリケーションが扱いやすい値を直接受け取る構成へ寄せられる点が特徴です。

料金は/v1/decisionsに限り、入力100万トークンあたり0.10ドルで、出力トークンとキャッシュ読み書きは課金されません。ただし地域処理のプレミアムと長文コンテキストの倍率は適用されます。パブリックベータの機能として、確率やconfidenceをそのまま自動処理の許可にせず、フォールバックと人手確認まで設計することが導入の前提です。

※本記事は2026年10月14日時点の情報です。

Decisions APIがテキストや画像を受け取り、predicate・choice・scoreの型付き判定を返す全体像
判定はpredicate・choice・scoreの3種類

発表概要|Decisions APIは判定専用のベータエンドポイント

Decisions APIは、文章を長く生成するためのAPIではありません。同じ入力に対して定義済みの質問を行い、分類やスコアリングの結果を返す専用エンドポイントです。用途として、コンテンツ分類、リクエストの振り分け、作業の優先順位付けを挙げています。

現時点はpublic betaで、GA化は数週間以内の予定です。利用できるモデルはgpt-6-lunaのみとなっています。公式の「Responses APIより10倍高速」は、個別システムの処理時間を保証する数値ではありません。PoCでは自社データの応答時間と判定品質を別々に測定します。

ポイント

Decisions APIは、自由記述の生成よりも、業務システムの分岐に使う型付き判定を担います。

3つの判定型|真偽・選択・スコアを使い分ける

判定にはpredicate、choice、scoreの3種類があります。目的に合わない型を選ぶと、結果を受け取った後の条件分岐が複雑になりがちです。問い合わせの分類なら選択、重大度なら順序付きのスコアというように、業務上の意味を基準に選ぶのが基本です。

質問型返る値向く業務設計時の注意
predicate条件が真である0〜1のprobability画像の損傷確認、文章の関連性確率を許可・確認の閾値に結び付ける
choice選択値、選択肢ごとのprobabilities、confidence問い合わせの部署振り分け重複しない選択肢とotherを用意する
scoreレベル別確率と確率加重平均のscore障害の重大度、作業の優先順位低い順に並べ、隣接レベルの基準を分ける

choiceは順序のない分類、scoreは順序のある評価に向きます。scoreはレベルのインデックスを確率で重み付けした平均値のため、レベルの中間値も取り得る仕組みです。質問文は、結果を使う業務から逆算する方針です。

判定・選択・スコアを業務システムへ組み込む際の考え方は、Jev APIの使い方にも整理しています。Decisions APIでは、返された値をそのまま最終判断とせず、確率や信頼度を記録し、必要な案件をレビューへ送る流れまで含めて設計します。

ポイント

choiceは分類、scoreは順序付き評価、predicateは条件判定に割り当てる設計です。返り値の型を業務の分岐に合わせると、後処理を単純にできます。

predicateは画像の損傷確認、choiceは問い合わせの部署振り分け、scoreは障害の重大度に使う3種類の判定
choiceは順序のない分類、scoreは順序のある評価に向く

リクエスト設計|共通入力に複数の質問をまとめる

リクエストは、モデルを指定するmodel、判定対象のinput、評価内容を定義するquestionsの3要素です。質問に一意のnameを付けると、回答側にも引き継がれます。独立した質問をまとめて実行できる構造です。

問い合わせ本文に対し、「担当部署はどこか」をchoiceで、「重大度はどの段階か」をscoreで同時に尋ねられます。部署の判定結果を見て次の質問を変える場合は、別のリクエストに分けます。質問同士が独立しているかが基準です。

  • 入力を固定する:同じ証拠を評価する質問をquestionsにまとめる。
  • 選択肢を閉じる:カテゴリに当てはまらない場合のotherを用意する。
  • 例外を分ける:回答がrefusalになった場合はレビューへ送る。

質問文は観測可能な基準で書くことが前提です。選択肢は意味が重ならないようにしてください。確率やconfidenceだけで自動処理すると、誤検知と見逃しのコストを業務側が引き受けます。ラベル付きの例で、自動処理を止める値を決めます。

ポイント

独立した質問は1リクエストにまとめ、依存する質問は分ける設計です。otherとrefusalの行き先を、実装前にレビューキューなどへ決めておきます。

料金|入力100万トークン0.10ドル、出力・キャッシュ課金なし

Decisions APIの料金は、gpt-6-lunaで入力100万トークンあたり0.10ドルです。入力トークンだけが課金対象で、キャッシュ読み取り、キャッシュ書き込み、出力トークンの課金はありません。※1ドル=150円で換算すると、入力100万トークンあたり約15円です。

この条件は/v1/decisionsに限ります。通常のgpt-6-luna Standard料金は別に計算します。短いコンテキストの金額は下表のとおりです。

利用方法入力キャッシュ入力キャッシュ書き込み出力注意点
/v1/decisions0.10ドル
(約15円)
課金なし課金なし課金なし専用条件。地域処理と長文入力の倍率あり
通常のgpt-6-luna Standard
(短いコンテキスト)
0.10ドル
(約15円)
0.01ドル
(約1.5円)
0.125ドル
(約18.8円)
0.50ドル
(約75円)
モデル利用の通常料金

地域処理のプレミアムと長文コンテキストの入力料金倍率は、Decisions APIにも適用されます。入力トークン数だけで概算せず、長い証拠を毎回送る設計や地域要件を確認してください。判定後に別のAPIで説明文を生成するなら、その費用も別に見積もります。

大量の自動判定では、1件あたりの入力トークン数、レビューへ回す割合、再試行の条件を記録して予算を管理します。AIエージェントの処理を含めた原価管理については、AIエージェントのコスト暴走と対策が参考資料です。

ポイント

「出力無料」は通常のgpt-6-luna全体ではなく、/v1/decisionsの専用条件です。判定後の説明生成や地域処理の追加費用は別に計算します。

Structured Outputsとの違い|判定と自由なJSON生成を分ける

Decisions APIもアプリケーションが扱いやすい形式を返しますが、目的は限定されています。真偽、固定選択、ルーブリック評価のいずれかを質問し、その答えを業務の分岐に使うためのAPIです。入力から任意の項目を抽出したり、理由を文章で説明したりするための汎用JSON生成APIではありません。

  • Decisions API:真偽・固定選択・順序付き評価を返す。
  • Responses APIのStructured Outputs:独自JSONスキーマの抽出結果や説明文を生成する。
  • function calling:モデルにツールの引数を要求し、外部アクションへつなぐ。

「JSONが返るか」だけで選ぶと、判定の品質評価と出力スキーマの保守が混ざります。担当部署はchoice、契約書の項目抽出はStructured Outputs、在庫システムへ渡す引数はfunction callingという役割分担にすると、テスト項目も整理できます。

型付き判定とJSON mode・構造化出力の違いは、JevとJSON mode・構造化出力の違いに比較対象を整理しています。まず「最終的に必要なのは分類値か、抽出データか、ツール実行か」を決め、その答えに応じてAPIを選びます。

ポイント

判定はDecisions API、独自スキーマの抽出や説明はStructured Outputs、ツールの引数はfunction callingに分けると、APIの役割が明確になります。

導入前の確認|閾値・データ管理・ベータ制約をPoCで検証

PoCでは正解率だけを測りません。ラベル付きの例で、probabilityやconfidenceの閾値ごとの誤検知と見逃しを確認します。自動振り分けを続ける値、人手確認へ送る値、otherやrefusalとして保留する値を業務の損失と照らして決めます。

質問文も検証対象です。観測できる基準を明記し、異なる関心事を1つの質問に詰め込まないことが必要です。選択肢の意味を重複させず、scoreの隣接レベルにも別々の基準を置きます。ここが曖昧だと、確率を細かく記録しても判定結果の比較ができません。

データ管理では、Decisions APIは適格な顧客向けにZero Data Retention(ZDR)とHIPAA利用をサポートしています。保存地域は「All listed regions」(全掲載地域)です。地域内処理は米国および欧州(EEA+スイス)に対応します。利用可能地域と処理場所は同一ではありません。HIPAA利用にはOpenAIとのBusiness Associate契約やHealthcare Addendumなどの要件があります。

OpenAIのデータ管理文書では、/v1/decisionsの不正利用監視ログはデフォルトで最大30日保持されます。自社の契約条件、対象リージョン、入力データの分類を確認し、保持期間だけで導入可否を判断しないことが大切です。判定結果を後続のエージェント処理へ渡す場合は、OpenAI Agents APIの実行基盤と責任分界も切り分けます。

ポイント

ベータのPoCでは、判定精度、閾値別の誤検知・見逃し、例外のレビュー経路、データ保持・地域・契約条件を同時に確認します。

よくある質問

Q. Decisions APIはいつ公開され、現在どのモデルを使えますか?

2026年10月6日にベータでリリースされ、現在はpublic betaです。利用できるモデルはgpt-6-lunaのみとなっています。

Q. Decisions APIで返せる判定は何種類ですか?

predicate、choice、scoreの3種類です。真偽の確率、固定選択肢、順序付きレベルのスコアを返します。

Q. 料金はいくらですか?

/v1/decisionsでは入力100万トークンあたり0.10ドルです。入力トークンだけが課金対象で、キャッシュ読み取り・書き込み・出力トークンの課金はありませんが、地域処理プレミアムと長文入力の倍率は適用されます。

Q. Responses APIのStructured Outputsとはどう使い分けますか?

型付きの真偽・選択・スコア判定にはDecisions API、独自JSONスキーマの抽出結果や説明文にはStructured Outputs、ツール引数の要求にはfunction callingを使います。

まとめ

Decisions APIは、gpt-6-lunaで入力を評価し、predicate・choice・scoreの型付き回答を返す専用APIです。問い合わせの振り分けや障害の優先順位付けに使えます。

導入時は、/v1/decisionsの専用料金と通常のモデル料金を分けて原価を計算し、ラベル付きデータで閾値を検証します。ベータ提供、refusal、other、データ保持や地域処理の条件を含むレビュー経路までPoCで確認してから、自動処理の範囲を広げてください。

ポイント

最初の対象は、正解ラベルを用意でき、誤検知・見逃しのコストを定義しやすい分類業務です。判定結果を人手確認と組み合わせ、測定できる範囲から運用を始めます。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。