ITシステム障害復旧の見積相場や費用/コスト/値段について

ITシステム障害復旧の費用は、RTO・RPOの目標で決まり、監視やDR環境、SLAと対応範囲によっても変わります。費用の幅は、月額数万円〜数百万円、初期費用数十万円〜数百万円です。

続けて、内訳と相場、復旧レベル別のプラン、見積のポイントを順に見ます。全体像はITシステム障害復旧の完全ガイドもご覧ください。

ITシステム障害復旧の費用が決まる仕組み

障害復旧の費用を中心に、RTO、RPO、平常時の固定費、緊急時の変動費を結んだ図。
復旧目標と費用の発生場面を分けて整理できます。

障害復旧の費用は、復旧力を保つための継続的な投資です。監視やバックアップを平常時から整えておくと、障害が起きたときに短時間の復旧が可能になります。

そのため、費用の大半は障害が起きていない平常時に発生します。さらに、復旧目標が曖昧なままだと、見積ごとに前提がそろわず、各社の金額を比べられません。

費用を決める2つの指標(RTO・RPO)

費用を考えるときは、RTO(Recovery Time Objective=目標復旧時間)とRPO(Recovery Point Objective=目標復旧時点)の2つを分けて見ます。

  • RTO:障害発生から復旧までの目標時間です。
  • RPO:障害発生時に戻すデータ時点の目標です。

たとえば、RTOを「3日以内」とするなら、バックアップから手作業で再構築する構成で対応できます。一方、RTOを「数分以内」とするなら、ホットスタンバイを別途維持する必要があり、この差によって費用が数十倍に膨らむことがあります。

また、RPOを「1日前まで」とするなら1日1回のバックアップで足りますが、「直前まで」とするなら、リアルタイムのデータ複製が必要です。短く厳しい目標ほど費用は上がるため、発注側は業務部門と、停止や損失の許容範囲を先に合意しておきます。

平常時の備えと緊急時の対応による費用の違い

障害復旧の費用は、毎月の備えと発生時の対応に分けると比べやすくなります。

  • 平常時の固定費:監視、バックアップ、予備環境の維持費です。
  • 緊急時の変動費:障害発生時の復旧作業にかかる費用です。

固定費は障害が起きなくても毎月かかります。一方、変動費は保守契約に含まれる場合と、スポット対応費になる場合があります。

特に、契約外の業者へ緊急依頼すると、時間単価が割増になることがあります。そのため、平常時の固定費に投資して、割高なスポット対応を避けることが費用を抑える基本です。発注側は、見積で固定費と変動費の境界がどこにあるかを確認してください。

ポイント

迷ったときは、RTOとRPOをどこまで求めるかを先に決めてから、見積を比べてください。平常時の固定費と緊急時の変動費を分けて見ると、各社の金額の差を読み取れます。

障害復旧にかかる費用の内訳と相場

ここでは、中小〜中堅規模のシステムを前提に、主な費用項目を見ていきます。金額は、システム規模やSLA(サービス品質保証)の水準によって変わります。

見積では項目が「一式」とまとめられることも多いため、内訳を押さえておく必要があります。費用は大きく4項目にまとまり、監視とバックアップ、DR環境は平常時に備える費用で、スポット復旧対応は緊急時の対応費です。

監視・バックアップの月額費用

監視は障害の検知を早め、バックアップは戻せるデータの時点を確保します。

  • 監視:死活、リソース、ログを確認する月額サービスです。
  • バックアップ:容量と世代数で月額が変わる保管サービスです。

基本的な監視は、対象サーバー数や項目によって月額数万円〜十数万円程度です。ただし、24時間365日の有人監視や一次対応まで含めると、月額10万円台後半〜数十万円になります。特に、夜間休日の常駐体制は人件費が大きいため、外部委託の効果が出やすい領域です。

クラウドのバックアップは、保管するデータ容量と世代数(何日分・何回分を保持するか)によって、月額数千円〜数万円が目安です。頻度を上げたり遠隔地へ複製したりすると、費用は上がります。一方で、削りすぎると、障害時に数日前のデータしか残らない事態になりかねません。

DR環境の構築費と維持費

DR(災害復旧)環境は、本番停止時に切り替えて使う予備環境です。

  • コールドスタンバイ:必要なときだけ環境を立ち上げる方式です。
  • ウォームスタンバイ:最小構成の環境を待機させておく方式です。
  • ホットスタンバイ:本番と同等の環境を常時稼働させる方式です。

コールドスタンバイは、構築費が数十万円〜数百万円で、復旧に時間がかかります。一方、その維持費はバックアップ保管料程度に収まることが多いです。

ウォームスタンバイは構築費が百万円台からで、月額数万円〜数十万円がかかります。さらに、ホットスタンバイは構築費が数百万円規模で、本番と同等の月額費が続きます。

なお、クラウドなら平常時を最小構成にし、障害時だけスケールアップできる場合があります。DR環境はRTOと直結するため、発注側は業務部門と、本当に必要な復旧速度かを詰めておきます。

緊急時のスポット復旧対応費

保守契約がないシステムでは、障害のたびに復旧を依頼するため、スポット費が発生します。

  • 稼働費:エンジニアの作業時間に対する人件費です。
  • 調査費:契約外の業者が構成を把握するための費用です。
  • 割増費:夜間休日や複雑な復旧で追加される費用です。

技術者の単価は1人あたり月額60万円〜100万円超です。時間単価で見ると、シニアエンジニアは数千円〜1万円超になることがあります。さらに、緊急対応では平日日中の1.25倍〜1.5倍程度に膨らむことも珍しくありません。

初めて依頼する業者では、復旧の前に現状調査が必要になります。また、ランサムウェア被害などでは、復旧費用が数百万円規模に達することもあります。

そこで、平常時から保守契約を結んでおくと、調査時間を減らして総コストを抑えやすくなります。月額の保守費は、緊急時の不確実な請求に備えるものです。

ポイント

監視・バックアップとDR環境の維持費は固定費、スポット対応は変動費として整理できます。迷ったときは、保守契約に含まれるかどうかで区分してください。

復旧レベル別の費用プランの目安

ベーシック、スタンダード、ミッションクリティカルの各プランについて、月額目安を並べた図。
復旧水準が上がるにつれて、月額の目安も段階的に上がります。

ここでは、復旧の速さとコストのバランスから、3段階のプランを見ていきます。プランは、業務停止をどこまで許容できるかに合った水準を選ぶことが重要です。

ベーシックプラン(数営業日での復旧)

数日停止しても致命傷にならない社内システムなどが対象です。

  • 構成:定期バックアップと基本的な死活監視が中心です。
  • 目標:RTOは数営業日、RPOは1日前までです。

データを守れば再構築できる規模のシステムも対象になります。監視とバックアップの月額は数万円程度が目安で、復旧作業はスポット対応または保守契約の範囲で行います。また、復旧手順書を整えておくと、誰が担当しても再構築しやすくなります。

スタンダードプラン(数時間での復旧)

長時間の停止が売上や信用に直結するWebサービスなどが対象です。

  • 構成:24時間365日監視、頻度の高いバックアップ、DR環境です。
  • 目標:ウォームスタンバイ相当で、RTOは数時間です。

顧客向けサービスや、業務に欠かせない基幹システムが該当します。RPOは数時間前までを狙う水準です。

月額は十数万円〜数十万円、初期構築費は百万円台が現実的な水準です。多くの中堅企業の重要システムは、このプランに収まることが多いです。発注側は、まずこの水準を基準に、費用対効果を見ながら上下を検討します。

ミッションクリティカルプラン(即時復旧)

数分の停止やわずかなデータ損失も許されないシステムが対象です。

  • 構成:ホットスタンバイ、自動切替、リアルタイム複製です。
  • 運用:専任体制でRTO・RPOともにほぼゼロを目指します。

金融取引、決済、医療、社会インフラなどが対象になります。

費用は、月額数十万円〜数百万円、初期構築費も数百万円〜の規模になります。さらに、定期的な復旧訓練(ゲームデー)やカオスエンジニアリングの費用も加わります。高額な投資ほど、切り替えを訓練で検証する費用まで見込んでおく必要があります。

当社の支援事例では、擬似障害を注入する検証を計47件実施しました。その結果、12件の致命的な故障モードを事前に特定し、MTTR(平均復旧時間)を65%削減しました。

ポイント

プランは、業務停止をどこまで許容できるかで選びます。多くの中堅企業の重要システムはスタンダードに収まることが多いため、そこを基準に上下を比べるとよいでしょう。

見積を取る際のポイントと費用を抑える考え方

見積比較の確認項目として、連絡時間、対応時間帯、作業範囲、総額を示す図。
対応条件をそろえると、見積の差を読み解きやすくなります。

見積金額の差は、RTO・RPO、作業範囲、SLAの前提から生まれます。金額だけでなく、何にいくら払うのかを理解しておくと、予算を必要な箇所に集中させられます。

SLAと対応範囲をそろえた比較

SLAと対応範囲をそろえると、各社の見積を同じ条件で比べられます。

  • 連絡時間:検知から一次連絡までの時間
  • 対応時間帯:平日日中か、24時間365日か
  • 作業範囲:復旧作業と追加費用の境界

当社の場合、Critical(極大)は検知から15分以内に即時連絡し、目標復旧を1時間以内としています。High(大)は30分以内のエスカレーションです。

見積に具体的な目標値が明記されているかは、事業者を選ぶ際の目安になります。「一式」表記の見積では、対応時間帯と復旧作業の扱いを確認してください。

ただし、高い見積でも24時間体制と復旧作業込みなら、追加費用がなく割安な場合があります。発注側は、月額だけでなく障害時の追加費用を含めた総額で比べます。

過剰投資を避けるための優先順位付け

発注側は、重要度に応じてシステムごとに投資を分けます。

  • 損害額:停止が事業に与える影響を金額で表した数字
  • 重要度:致命的なシステムかどうかの見極め

全システムを24時間365日・即時復旧にすると、費用は青天井になります。そこで、1時間の停止による損害額をシステムごとに金額換算すると判断しやすくなります。

たとえば、1日停止しても機会損失が数万円なら、月額数十万円のホットスタンバイは過剰です。一方、1時間で数百万円の損失が出る基幹システムなら、相応の投資が正当化されます。損害額とコストを比べて判断することが、復旧投資の意思決定の中心です。

復旧作業の具体的な流れはITシステム障害復旧の進め方で詳しく解説しています。依頼先の選び方はITシステム障害復旧でおすすめの開発会社・ベンダー6選で紹介しています。

発注・委託の具体的な手順はITシステム障害復旧の発注・外注方法で確認できます。全体像を体系的に押さえたい場合はITシステム障害復旧の完全ガイドが役立ちます。

ポイント

見積は、SLAと対応範囲をそろえてから比べます。「一式」の中身や緊急時の追加費用まで確かめ、月額ではなく総額で判断してください。

まとめ

ITシステム障害復旧の費用は、RTOとRPOを実現するための継続的な投資です。平常時に監視、バックアップ、DR環境へ投資しておけば、スポット対応を避けられます。

ベーシックは月額数万円程度、スタンダードは月額十数万円〜数十万円が目安です。スタンダードでは、初期構築費として百万円台も加わります。ミッションクリティカルは、月額数十万円〜数百万円規模が目安です。

そのうえで、停止による損害額と費用を比べ、重要なシステムへ投資を集中させます。見積は、SLA、対応範囲、緊急時の追加費用をそろえ、総額で比べてください。「一式」の中身を分解し、業務停止の許容度に合う復旧水準を見極めましょう。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。