ITシステム障害対応の見積相場や費用/コスト/値段について

ITシステム障害対応の費用は、監視の時間帯、SLA水準、対応体制によって、月額5万円〜100万円超まで変わります。

費用は、平常時に備える待機コストと、障害発生時に動く対応コストの二層構造で決まります。

ITシステム障害対応の費用が決まる仕組み

待機コストと対応コスト、それぞれに含まれる監視・待機体制と原因調査・復旧作業を示す図
平常時の備えと障害後の作業を分けると、見積もりの範囲を整理できます。

障害対応の費用は、システム開発の機能工数とは別に考える必要があります。平常時に対応できる状態を保つ費用と、障害発生時に動く費用の二層に分かれます。この二層を知らずに見積もりを比べると、障害発生時に高くつく契約を選んでしまいます。

「待機コスト」と「対応コスト」の二層構造

費用は、平常時にかかるか、障害発生後にかかるかで分けて整理できます。

  • 待機コスト:いつでも対応できる状態を保つための固定費
  • 対応コスト:障害発生後の調査から事後報告までの費用

待機コストには、24時間365日の監視と、アラートを受けるオンコール体制が含まれます。さらに、対応マニュアルや構成図の整備も、障害がない時間に継続してかかる費用です。

待機コストは、月額固定の保守契約や監視サービス料として計上されることが多くあります。なお、その金額は、システム規模、監視対象数、求める応答時間によって変わります。

対応コストには、一次対応、原因調査、復旧作業、障害報告書の作成が含まれます。ただし、ポストモーテムの作成まで月額固定の保守範囲に含まれる場合もあります。

対応時間を超えた分や大規模な障害は、時間単価で追加請求されることもあります。そのため、見積書では月額だけでなく、対応コストの含まれる範囲と追加料金の境界を確認しておく必要があります。

費用を左右する最大要因はSLA水準

契約条件のうち、SLAは費用差を生む3つの要素をまとめて確認できる指標です。

  • 一次連絡:障害を検知してから連絡するまでの時間
  • 目標復旧:復旧までに設定する目標時間
  • 対応時間帯:平日日中か、24時間365日かの違い

たとえば、最重要度(Critical)で15分以内の連絡と1時間以内の復旧を求める場合、夜間や休日も人を確保する必要があり、費用は大きく上がります。一方で、平日9時〜18時に対応し、目標復旧を翌営業日とするなら、費用を抑えられます。

最高水準のSLAは、すべてのシステムに必要とは限りません。基幹システムには手厚く、影響の小さいシステムには軽く設定し、対象ごとに水準を分けることが、過剰なコストを避ける第一歩です。

ポイント

見積もりを比べるときは、月額が平常時の待機と障害後の対応のどちらを含むかで、比べ方が変わります。追加料金が発生する境界も同じ観点で見ると、判断の目安にしやすくなります。

平常時の監視・待機コストの相場

障害対応の土台になるのは、早く気づくための監視と、すぐに動ける待機体制です。月額費用は、監視対象の範囲と対応時間帯によって大きく変わります。そこで、代表的なパターンごとに費用感を見ていきます。

24時間365日監視・運用代行の月額相場

外部サービスの月額は、監視の時間帯と対象規模でおおむね次のように分かれます。

  • 平日日中の監視:月額5万円〜15万円程度
  • 24時間365日の有人監視:月額30万円〜80万円
  • 大規模な監視:月額100万円を超える場合もある
  • 自社導入の監視SaaS:小規模なら月額数万円から

平日日中の金額は、死活監視やリソース監視に対象を絞る場合の目安です。一方で、24時間365日の監視では、有人監視と一次対応がセットになります。

複数サーバーやネットワーク機器を含む大規模環境では、100万円を超えることも珍しくありません。特に、費用差の大半は、夜間休日に人を確保するコストから生じます。

クラウド環境の監視ツールは、監視対象ホスト数に応じた従量課金が一般的です。ただし、ツールの役割はアラートを上げるところまでで、判断や対応をする人は別途必要です。そのため、ツール費用と対応人員のコストを合わせて比べないと、実態を見誤ります。

オンコール体制とインシデント管理ツールの費用

オンコール体制の費用は、待機する人の負担と、自動化ツールの費用に分けて考えます。

  • 待機手当:深夜・休日の呼び出しに備える負担への費用
  • 呼び出し対応:割増賃金や代休運用を含む人件費
  • インシデント管理ツール:アラート通知とエスカレーションの仕組み

深夜・休日の待機負担は、数字で把握して報いるべきコストです。一方で、待機手当や呼び出し時の割増賃金は、人件費に埋もれやすくなります。

代休運用も含めて見える形にしないと、実質的な費用を見落とします。さらに、負担を放置すると、対応者のバーンアウト(燃え尽き)や離職につながります。

インシデント管理ツールの料金は、ユーザー1人あたり月額数千円〜のサブスクリプションが主流です。たとえば、待機担当者の人数分を契約すれば、少人数チームなら月額数万円規模に収まります。

属人化したアラート対応を仕組み化できるため、投資対効果は高いといえます。また、誰が気づくかを運任せにしない体制を作れる点も、費用以上の価値になります。

ポイント

監視対象の範囲と対応時間帯が決まれば、月額の目安を読み取れます。夜間休日に人を確保するかどうかが、費用差を最も大きく分けます。

障害発生時の対応コストの内訳

障害発生後の対応を、一次対応と影響範囲調査、原因調査と復旧作業、事後対応の順に示す図
調査と復旧の段階を中心に、報告や振り返りまで工数が続きます。

障害発生時の費用は、対応フローの各工程にかかる工数の合計です。検知から一次連絡、影響範囲の調査、原因調査、復旧、事後対応へと、工程は順に進みます。工程ごとの工数を知ると、見積もりの妥当性を判断しやすくなります。

対応フロー各工程でかかる工数と費用

対応フローでは、調査と復旧の工数と、復旧後の事後対応を分けて見ていきます。

  • 一次対応・影響範囲調査:障害の状況と影響を把握する工程
  • 原因調査・復旧作業:復旧方法を判断し、システムを戻す工程
  • 事後対応:報告書とポストモーテムを作成する工程

特に、工数が最も膨らむのは、原因調査と復旧作業の段階です。ログ解析やなぜなぜ分析には、対象システムを熟知したエンジニアの集中的な稼働が必要になります。

単純な再起動で済む場合と、コード修正やデータ復旧まで行う場合とでは、費用が一桁変わります。エンジニアの稼働は、1時間あたり5,000円〜2万円程度が相場です。また、夜間や休日の対応では、時間単価が割増になるのが一般的です。

復旧後の障害報告書やポストモーテムにも、相応の工数がかかります。復旧だけで終えると、同じ障害が再発し、より大きな費用を払うことになります。

ポストモーテムは、解決後72時間以内を目安に実施し、今後の対応に使える形で残すことが重要です。この事後対応が、長期的な障害対応コストの削減につながります。

見積書に現れない「障害そのものの損失」

障害対応では、対応費用と、障害そのものによる損失を分けて考えます。

  • 売上機会:停止中に失われる売上
  • 業務停滞:停止による人件費の空転
  • 信頼への影響:顧客の信頼低下やブランド毀損

たとえば、ECサイトが1時間停止すると、その時間の売上機会が失われます。基幹システムが止まれば、全社の業務が滞ります。さらに、復旧の遅れは、金額に換算しにくい長期的な損失も生みます。

最も深刻なのは、ランサムウェアなどセキュリティに起因する障害です。警察庁が2023年に公表した広報資料では、被害企業140社の95%が業務に影響を受けました。復旧費用に加えて、事業停止による損失も広範に及ぶことが分かります。

投資額は、障害発生時の損失額と比べて判断します。対応費用を削った結果、損失が膨らんでしまっては本末転倒です。

ポイント

障害発生時の費用は、工程ごとの工数に分けて見ると、見積もりの妥当性を判断できます。特に、原因調査と復旧作業の工数や夜間休日の割増は、金額の差を生みやすい部分です。

MTTR短縮による費用対効果

障害対応の投資を考えるうえで、MTTR(平均復旧時間)は実務で使いやすい指標です。MTTRが短いほど、障害による事業損失は小さくなります。そのため、費用はMTTR短縮の効果で評価すると、見積もりを判断しやすくなります。

復旧時間の短縮がもたらす損失回避効果

投資効果は、復旧時間を短くする仕組みと、回避できる損失で比べます。

  • MTTR短縮:停止時間を減らし、事業損失を抑える
  • カオスエンジニアリング:擬似障害で回復力を検証する

たとえば、1時間の停止で100万円の損失が出るシステムを想定します。平均して月1回の障害が起き、MTTRを2時間から1時間に短縮できるとします。

この条件では、1回あたり100万円、年間で1,200万円の損失を回避できる計算になります。月額数十万円の監視・対応投資でも、元が取れるケースは多くあります。

カオスエンジニアリングは、本番に近い環境で意図的に障害を起こし、壊れやすい箇所を確かめる手法です。実践例では、計47件の実験から12件の致命的な故障モードを特定しました。

その結果、MTTRを65%削減し、レジリエンス(回復力)スコアを2.3から4.1へ高めました。事前に弱点を潰しておくと、対応コストと障害による損失を抑えられます。

内製と外注のコスト比較の考え方

内製と外注は、体制を維持する費用と、必要な判断の深さで分けて考えます。

  • 24時間365日の内製:交代要員を含む複数名が必要
  • 夜間休日の外注:必要な時間帯だけを月額でカバー
  • ハイブリッド:外注と内製の役割を分けて組み合わせる

24時間365日の体制を内製すると、専任エンジニアの人件費は年間で数千万円規模に達します。夜間休日の一次対応を外部に委託すると、少人数のスタートアップや中小企業ほど、待機コストを変動費として扱えます。

原因調査と恒久対策は、内部仕様を深く理解する必要があるため、自社エンジニアが担当するのが適しています。そのため、監視と一次対応を外注し、原因調査と修正は内製する形が現実的です。

このハイブリッドは、コストと品質のバランスに優れます。切り分けは、人員規模、システムの重要度、許容できるダウンタイムを踏まえて行います。どこを外注し、どこを内製するかが、費用を抑える鍵です。

発注の進め方については、ITシステム障害対応の発注/外注/依頼/委託方法についての記事もあわせてご覧ください。

ポイント

投資の判断は、月額の投資額を、MTTR短縮で回避できる損失額と比べて行います。損失額が月額投資を上回るかどうかが、判断の目安になります。

見積もりを取る際の確認ポイント

障害対応の見積もりで確認するSLA、月額上限、事後報告、恒久対策の4項目を示す図
同じ観点を各社の見積もりに当てはめると、条件差を比べやすくなります。

障害対応の見積もりは、月額の数字だけで比べると、条件の違いを見落としがちです。たとえば、同じ月額30万円でも、対応範囲、SLA、追加料金の条件が違うことがあります。そのため、複数社から見積もりを取る場合は、確認項目をそろえて比べます。

SLA・対応範囲・追加料金の境界

SLAと契約範囲は、数値、月額の上限、事後報告の範囲、恒久対策の順に見ていきます。

  • SLAの数値:一次連絡、目標復旧、対応時間帯を明文化
  • 月額の上限:月あたりの対応回数や時間を確認
  • 事後報告の範囲:報告書類の作成が標準料金に含まれるか
  • 恒久対策:再発防止まで含むかどうか

また、月額の範囲を超えたときの追加単価も、あらかじめ押さえておきます。範囲が曖昧なままだと、大規模な障害で想定外の請求が発生します。障害報告書やポストモーテムの作成は、標準料金に含まれる会社もあれば別料金になる会社もあるため、見積書の文言で確かめておく必要があります。

暫定復旧だけでは、同じ障害が繰り返し起き、対応コストが累積します。そのため、恒久対策までの責任範囲を、契約の段階で取り決めておきます。

ベンダーのSLA遵守と報告品質

委託先を比べる際は、障害が起きた後の対応に注目します。そこで、未達時の取り決めを文書にしておくと、緊急時の交渉の拠り所になります。

  • SLA未達時:ペナルティや料金減額の条件
  • 報告書の品質:根本原因と再発防止策の具体性
  • 総合評価:見積もりの安さだけでなく実効性も比較

障害報告書(RCA)では、再起動で復旧した事実だけでなく、原因まで書かれているかを確認します。再起動だけで済ませた報告では、同じ障害が続くおそれがあり、長期的な信頼性に関わります。

報告が不十分な場合は、内容の妥当性を評価して差し戻し、詳細な開示を求めます。報告の質も含めて総合的に評価すると、結果的にコストを抑えられます。

会社選定の詳細はITシステム障害対応でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方を参考にしてください。

ポイント

見積もりは、月額だけでなく、SLA、対応範囲、追加料金、報告書の扱いを同じ項目で並べて比べます。項目がそろっていれば、条件の違いを見落としにくくなります。

まとめ

ITシステム障害対応の費用は、待機コストと対応コストの二層構造で決まります。なかでも金額を最も大きく左右するのは、SLA水準です。

24時間365日監視・運用代行は、月額30万円〜80万円が一つの目安です。ただし、対象規模、オンコール体制、ツールの有無によって、費用は変わります。

事業への影響に応じてSLAに強弱をつけると、過剰な費用を避けられます。

障害対応の費用は、MTTR短縮による損失回避の投資として評価します。月額の投資額と回避できる損失額を比べると、投資水準を判断できます。

見積もりでは、SLA、対応範囲、追加料金、報告書の品質をそろえて確認します。安さだけでなく、障害発生時に機能する実効性で判断します。

具体的な対応の進め方はITシステム障害対応の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順をご覧ください。

全体像の把握にはITシステム障害対応の完全ガイドもあわせてご覧ください。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。