ITシステムの原因調査費用は、数万円から数百万円まで幅があります。その差を生むのは、調査をどこまで掘り下げるか、担当するエンジニアのスキル、スポット調査か継続契約かという依頼形態です。
全体像は、ITシステム原因調査の完全ガイドも参考にしてください。
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ITシステム原因調査の費用が決まる仕組み
原因調査は、RCA(Root Cause Analysis)とも呼ばれる再発防止の工程です。
復旧作業がサービスを正常に戻すのに対し、原因調査は根本原因を特定します。
原因調査の費用は、作業時間だけでなく担当者のスキルと調査の深さで決まります。
そのため、同じ障害でも事象の報告だけなら数万円で済むことがあります。一方で、根本原因の特定と恒久対策の提案まで含めると、数十万円から百万円超になる場合があります。
調査の深さによる費用の違い
原因調査は、どこまで掘り下げるかで費用が変わります。掘り下げの段階は、次のように分かれます。
- 事象確認:何が起きたかの整理。
- 直接原因:どこで何が壊れたかの特定。
- 根本原因:防げなかった仕組みの欠陥の追究。
段階が進むほど、調査の範囲が広がり、工数と費用もそれに伴って増えます。
発注側とベンダーで想定する調査段階がずれると、費用をめぐるトラブルになりがちです。たとえば、発注側は根本原因まで求めていても、ベンダーは事象報告だけを想定しているケースがあります。そのため、見積もりでは、直接原因までか恒久対策の提案までかを明記してもらうことが大切です。
スポット調査と継続契約の単価の違い
原因調査の依頼形態は、スポット調査と継続契約に分かれます。
- スポット調査:障害発生時に単発で依頼する形式。
- 継続契約:保守契約に原因調査を組み込んだ形式。
スポット調査は緊急性が高く、予備知識のない状態から始めるため割高です。一方、継続契約ではシステムの構成を把握したうえで調査に入れるため、同じ調査でも工数を抑えやすくなります。
障害が頻発するシステムでは、月額保守に調査と報告書作成を含めておくと、総額を抑えられる場合があります。
継続契約を結ぶ際は、調査範囲と報告書の品質がSLAに明記されているかを確認します。
契約内でも、簡易報告までの範囲であれば、根本原因分析は別料金になることがあります。
調査レベル別の費用相場

調査が深くなるほど、費用の幅も段階的に広がります。
ただし、金額はあくまで目安で、規模や技術スタックの複雑さによって変動します。なお、基本的な費用は、人月単価に調査工数を掛け合わせて算出します。
調査レベル別の費用目安
簡易調査から全面調査まで、深さの段階ごとに費用の目安を並べます。
- 簡易調査:事象確認と影響範囲の特定のみで、3万円〜10万円程度。
- 直接原因の特定:ログ解析と再現テストを含む調査で、15万円〜50万円程度。
- 根本原因分析:恒久対策の提案まで含み、50万円〜150万円程度。
- 全面調査:大規模・複雑なシステムが対象で、150万円〜数百万円。
簡易調査は、ログから停止したプロセスを報告する調査で、工数は数時間から1人日程度です。
直接原因の特定では、複数ログの突合と再現環境の構築を行い、エラーの発生条件を絞り込むため、数日から1週間程度かかります。
根本原因分析では、設計や運用プロセスの欠陥まで遡ります。
RCA報告書の作成も含まれるため、工数は1〜3週間規模になります。
人月単価とエンジニアのスキルレベル
原因調査では、システム全体を理解して仮説を立て、検証する技術判断が求められます。そのため、担当するエンジニアの人月単価が費用を大きく左右します。
- 若手エンジニア:人月単価60万円〜80万円。
- 中堅エンジニア:人月単価80万円〜120万円。
- シニア・スペシャリスト:人月単価120万円〜180万円。
また、原因調査は若手よりシニアやアーキテクトが担当することが多くなります。たとえば、シニアエンジニアが1週間専従する場合、人件費は月額の4分の1になり、30万円〜45万円程度です。
見積もりが極端に安い場合は、調査スキルや工数が不足している可能性があります。安さだけで選ぶと、根本原因に届かず、障害が再発するおそれがあります。
原因調査コストの内訳

見積もりは総額だけでなく、費用の内訳まで見ることが大切です。原因調査の費用は、ログ解析、なぜなぜ分析、報告書作成に分けて捉えられます。
ログ解析と調査工数のコスト
ログ解析では、障害発生の引き金となった事象を絞り込みます。その工数は、ログの扱いから再現テストまでの作業に分けて積み上がります。
- ログの突合:複数のログを時系列で照合する作業。
- ログの保存状態:形式と保存期間の確認。
- 再現テスト:検証環境での障害条件の確認。
- 工数の上限:再現テストに充てる最大人日。
調査の対象は、アプリケーションやサーバーのログです。さらに、データベースやネットワーク機器のログも含まれます。
ログが整理されていれば調査は早く進みますが、形式が不統一だったり、必要な期間のログがなかったりすると工数が膨らみます。
また、再現環境の構築そのものにも工数がかかります。負荷条件やデータ状態が限られる障害では、再現条件の特定に数日かかることがあります。
工数の膨らみを防ぐには、見積もりの段階で上限を決めておく必要があります。
なぜなぜ分析と恒久対策立案のコスト
再発を防ぐには、直接原因の特定に加えて、なぜなぜ分析で表面的な事象の奥にある仕組みの欠陥を探す必要があります。その結果を受けて立てる対策は、起きないようにする方向から被害を小さくする方向まで、4つに分けて考えられます。
- 完全予防:同じ原因が発生しない仕組みづくり。
- リスク緩和:発生確率や影響を下げる対策。
- 迅速検知:発生時に早く気づける監視の整備。
- 影響範囲最小化:発生時の被害を局所にとどめる対策。
分析では、リリース前に不具合を検知できなかった理由や、監視アラートより先にユーザーが気づいた理由も対象になります。
開発プロセスや運用体制を理解した人材が時間をかけて取り組むため、相応の費用がかかります。
属人的な対策だけを示す見積もりは、安くても再発防止の実効性に乏しいことがあります。そのため、仕組みとして再発を防ぐ恒久対策まで提案する調査に、費用を払う価値があります。
RCA報告書作成のコスト
RCA報告書(ポストモーテム)は、原因調査の結果をまとめた文書です。
- 記録項目:概要、タイムライン、直接原因、根本原因。
- 用途:経営層や顧客への説明と組織学習への活用。
RCA報告書は、事象だけを記録する障害報告書とは役割が異なります。
なぜ防げなかったかと次にどうするかまで含めるのが、RCA報告書の特徴です。
作成には、調査内容を文章にまとめ、図表を整理する作業が必要です。さらに、技術者でない経営層にも伝わる表現へ落とし込む作業も含まれます。
見積もりでは、報告書作成が含まれているか、どの項目まで含むのかを確認します。
報告書の質が低いと、調査結果が生かされず、別の場所で障害が再発します。
見積もりの妥当性を見抜くポイント

原因調査は、調査を始めるまで工数が確定しにくい仕事です。そのため、見積もりの出し方に、ベンダーの誠実さと実力が表れます。
上限つき見積もりと段階契約
調査が進むにつれて工数が膨らみ、見積もりを超える費用トラブルがあります。そこで、費用の膨らみを抑えるには、工数に上限を置くことと、調査を段階に分けて契約することが役立ちます。
- 上限工数:直接原因の特定までを最大5人日とし、超過時は再見積もり。
- 段階契約:上限工数と組み合わせ、青天井の請求を避ける仕組み。
- 簡易調査:まず当たりをつけ、本格調査の要否を判断する段階。
- 第一段階:数万円程度に抑えた調査で、原因が見えた時点で再見積もり。
良いベンダーは、費用対効果を見ながら調査の深さを調整する方式を提案します。
外部ベンダー起因の障害における費用負担の交渉
障害の原因が外部側にある場合は、費用負担の考え方が変わります。
- 責任範囲:瑕疵や契約上の責任の所在。
- 費用負担:調査費用やSLA違反の扱い。
- 報告書評価:根本原因と対策の妥当性の確認。
たとえば、SaaSや納品システムの瑕疵が原因であれば、調査費用の負担を交渉できます。SLA違反と認められる場合は、ペナルティを求められることもあります。さらに、自社の負担を、ベンダー側の調査を評価する費用だけに抑えられることもあります。
提出されたRCA報告書は鵜呑みにせず、根拠と再発防止策を確認します。根本原因が表面的なら、根拠の開示を求めて差し戻します。再発防止策が監視強化だけの場合は、対策の具体性も確かめる必要があります。
評価する技術力がなければ、別ベンダーにセカンドオピニオンを依頼します。
評価費用はかかりますが、不適切な対策による再発より安く済むこともあります。
恒久対策の実装費用を含む予算
原因調査では、判明した恒久対策の実装費用も見落とせません。
- 調査費用:原因の特定と報告書作成に充てる費用。
- 実装費用:提案された恒久対策の実行に必要な費用。
調査と報告書作成だけで終わり、対策が新機能の開発に押し出されてしまう失敗があります。調査に数十万円かけても、対策を実装しなければ障害が再発し、費用が無駄になります。
依頼時には、調査費用と実装費用を分けて見積もってもらい、両方を予算に組み込みます。また、恒久対策の実装費用は、規模によって数十万円から数百万円かかることがあります。
先に予算を組んでおくと、技術的負債を解消するためのリソースを守りやすくなります。調査だけで対策を打たない状態は、異常を見つけても治療しないことと同じです。
まとめ
ITシステムの原因調査費用は、根本原因を探る知的な調査工数への費用です。調査の深さによって、費用は数万円から数百万円まで変動します。
簡易調査は3万円〜10万円、直接原因の特定は15万円〜50万円が目安です。根本原因分析と恒久対策提案まで含めると、50万円〜150万円となります。
費用は、ログ解析、なぜなぜ分析、報告書作成ごとに分けて判断します。
見積もりでは上限工数を置き、段階契約によって青天井の請求を避けます。
外部ベンダーが原因であれば費用負担を交渉し、恒久対策の実装費用も予算に組み込みます。
安さだけで選ぶと根本原因に届かず、障害が再発して高くつく場合があります。高いスキルで再発防止まで見据える調査こそ、費用対効果の高い投資です。
原因調査の進め方は、ITシステム原因調査の進め方で確認できます。
依頼先の選び方は、おすすめの開発会社・ベンダー6選が参考になります。
外注の進め方については、発注・外注方法の解説が役立ちます。
全体像を体系的に理解したい方は、ITシステム原因調査の完全ガイドも参考にしてください。
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
