安否確認システム開発の完全ガイド

安否確認システムは、災害時に従業員の安否を素早く把握するためのシステムです。全体像は、主な機能や開発の進め方、費用相場を押さえ、そのうえで開発会社の選び方や外注の方法を見ると分かりやすくなります。

安否確認システムの概要

地震・台風・洪水などの大規模災害が起きたとき、企業は従業員の安否を迅速に把握する必要があります。電話やメールで一人ずつ確認すると、多大な時間と人的コストがかかります。そこで安否確認システムを使えば、従業員への一斉通知、回答の自動集計、管理者への報告を、迅速かつ確実に行えます。

安否確認システム開発が選ばれる理由

市場にはSaaS型の安否確認サービス(安否確認サービス2、Safetylink、Lallanote等)も多数あります。ただし、次のような場合には、スクラッチ開発・カスタム開発が選ばれています。

  • 独自の組織体系・承認フロー:自社特有の組織の形や承認の流れに合わせる必要がある
  • 基幹システム連携:人事・勤怠・ERPとつなぎ、データをなめらかにやり取りしたい
  • セキュリティポリシー:社内の方針により、外部のクラウドサービスを使えない
  • 複雑な組織構成:グループ企業や海外拠点まで含めて対応したい

安否確認システムの主な機能

安否確認システムの機能を、通知・連絡、回答・報告、集計・管理、連携の4領域に分けた図。
通知から社内システム連携まで、役割ごとのまとまりを確認できます。

通知・連絡機能

災害の発生時に、従業員へすばやく情報を届けるための機能です。一斉に送るため、一人ずつ連絡する手間を省けます。

  • 一斉配信:メール、SMS、プッシュ通知(アプリ)の複数の手段で、同時に送る
  • 対象者の自動抽出:災害の種類や発生地域から、通知する相手を選び出す
  • 自動発動:気象庁の緊急地震速報APIと連携し、その情報をきっかけに起動する

回答・報告機能

従業員が自分の安否をすぐに伝えるための機能です。なお、集まった回答は次の集計・管理機能でまとめて確認します。

  • 簡単な回答:スマートフォンやPCから、短い操作で安否を答えられる
  • 回答項目:本人や家族の安否、負傷の有無、出社の可否を答える
  • トークン認証:回答用URLの仕組みで本人を確かめるため、ログインせずに答えられる

集計・管理機能

回答の状況を把握し、次の対応を判断するための機能です。たとえば、集まった結果から、どこへ追加の連絡をするかを決められます。

  • リアルタイム集計:回答率や未回答者の一覧を、常に最新の状況で確認できる
  • ダッシュボード:組織や地域ごとの安否状況を、画面上で一目で見られる
  • リマインド通知:まだ回答していない人へ、自動で再送する
  • レポート自動生成:管理者向けの報告書を、システムが作る

連携機能

既存の社内システムと安否確認システムをつなぐための機能です。社内でほかに使っている仕組みとも、必要に応じてつなげられます。

  • 従業員マスタ連携:人事・勤怠システムの従業員情報を利用する
  • グループウェア連携:Microsoft 365・Google Workspace等と組み合わせて使う
  • SSO対応:シングルサインオンでログインできる

安否確認システム開発の進め方

安否確認システム開発は、7つの工程で進みます。

  1. 要件定義: BCPポリシーを確認し、業務フローと非機能要件を整理する
  2. 基本設計: クラウド構成、データ設計、UIの方針を決める
  3. 詳細設計: 通知エンジン、回答画面、集計ロジックを設計する
  4. 開発・実装: 通知エンジンと回答UIを作り、管理ダッシュボードと外部連携を組み込む
  5. テスト: 機能・負荷・障害耐性を確かめ、訓練シナリオでUATを行う
  6. リリース・移行: 従業員マスタを移し、全社に告知して、操作を説明する
  7. 運用・保守: 定期訓練とマスタ更新を行い、継続的に改善する

工程ごとの詳しい内容は、「安否確認システム開発の進め方・流れ」で確認できます。

ポイント

要件定義から運用・保守までの7工程を先に押さえると、各工程で何を決め、何を確認するかが見えてきます。工程の流れを頭に入れておくと、発注側として話し合う内容も整理しやすくなります。

安否確認システム開発の費用相場

安否確認システム開発の4つの方式・対象人数区分と、それぞれの費用幅を示すパネル図。
スクラッチ開発は対象人数の区分ごとに費用幅が示されています。

費用は、開発方式と対象従業員数によって大きく変わります。

  • スクラッチ開発(〜500名): 150万円〜500万円
  • スクラッチ開発(〜5,000名): 500万円〜1,500万円
  • スクラッチ開発(5,000名〜): 1,500万円〜5,000万円以上
  • SaaSカスタマイズ・連携開発: 50万円〜300万円

費用を左右する主な要因は、対象従業員数と通知チャネルの数です。さらに、外部システム連携と高可用性インフラの要件も、費用に関わります。費用の見方は「安否確認システム開発の費用・見積相場」で解説しています。

ポイント

費用は開発方式と対象従業員数で大きく変わり、通知チャネルや外部連携の数も関わります。見積もりを比べるときは、規模と方式がそろっているかを確かめます。

開発会社の選び方

開発会社を選ぶ際は、災害時にも安否確認を止めずに動かせるかを確かめることが大切です。

  • BCP・防災対応の知識と実績
  • 高可用性システムの開発実績
  • 大量通知処理の技術力
  • 既存システム連携の実績
  • 24時間365日の保守・サポート体制

おすすめの開発会社は、「安否確認システム開発でおすすめの開発会社6選」で紹介しています。

ポイント

防災の知識や高可用性の実績、大量通知の技術力、既存システム連携の実績、保守体制を合わせて見ると判断しやすくなります。

外注・発注の方法

外注・発注は、社内の要件整理から契約、その後の管理まで段階を追って進みます。

  1. 社内で要件を整理する(対象従業員、発動条件、通知チャネル、連携システム、予算)
  2. 発注先の候補を3〜5社選ぶ
  3. RFP(提案依頼書)を作って送る
  4. 提案と見積もりを比べる
  5. 候補先にヒアリングし、技術面を確かめる
  6. 発注先を決めて、契約を結ぶ
  7. 開発を進め、発注者側で管理する

発注の手順は、「安否確認システム開発の発注・外注方法」で詳しく解説しています。

スクラッチ開発 vs SaaSサービスの選択指針

スクラッチ開発とSaaSサービスは、費用、カスタマイズ性、導入期間などの観点で違いがあります。

  • 費用: 初期はスクラッチ開発が150万円〜、SaaSサービスが無料〜です。月額は、スクラッチ開発が保守費のみで、SaaSサービスは月1万円〜10万円です。
  • 独自カスタマイズ: スクラッチ開発は自由に作り込め、SaaSサービスは限定的です。
  • 導入期間: スクラッチ開発は3〜12ヶ月、SaaSサービスは1〜4週間かかります。
  • 既存システム連携: スクラッチ開発は深くつなげられ、SaaSサービスはAPIで対応できる範囲に限られます。
  • セキュリティ管理: スクラッチ開発は自社で管理し、SaaSサービスは提供会社の仕組みに左右されます。

独自の要件が多く、既存システムと深く連携する必要があり、厳格なセキュリティ要件もある場合は、スクラッチ開発が向いています。一方で、標準的な安否確認機能で足り、迅速な導入が必要な場合は、SaaSサービスが適しています。

ポイント

独自要件の多さ、既存システムとの深い連携、厳格なセキュリティ要件の有無を見ると、スクラッチ開発とSaaSのどちらが合うかを絞りやすくなります。

安否確認システム開発・導入後の運用ポイント

定期訓練の実施

年1〜2回の安否確認訓練を続けて、従業員の操作への慣れと、システムの動作を確かめておきます。いざというときに慌てず操作できるよう、この訓練を続けておくことが欠かせません。

従業員マスタの最新化

入退社、異動、連絡先の変更があったら、従業員マスタをすぐに更新する流れを整えておきます。更新が遅れると、必要な従業員に通知が届かない事態が起きます。

BCPの見直しとシステムのアップデート

BCPポリシーの見直しや組織変更に合わせて、システムの設定とフローを定期的に更新する必要があります。見直しのたびに、設定が現在の方針と合っているかを確かめておきます。

復旧シナリオの整備

安否確認システム自体が障害を起こした場合に備えて、バックアッププランも用意しておきます。障害時の対応を先に決めておくと、慌てずに済みます。

安否確認システム開発でよくある失敗と対策

安否確認システム開発で起きやすい4つの失敗に対応する対策を、チェック項目として並べた図。
インフラ、通知、回答、従業員情報の各課題に対応策があります。

失敗1:インフラの冗長化が不十分で、大規模災害時にシステムが停止

対策: マルチリージョン・マルチAZ構成を採用して、特定リージョンの障害の影響を受けにくい設計にします。つまり、特定の地域が被害を受けても、別の拠点で動き続けられるようにします。

失敗2:通知の遅れによる安否確認の効果低下

対策: メッセージキューを使った非同期処理で、全従業員への通知を5分以内に完了できる設計にします。通知の量が増えても、処理を待たせにくくする考え方です。

失敗3:回答インターフェースの複雑さによる未回答

対策: 回答ページをできるかぎりシンプルにし、ログイン不要のURLトークン認証方式を採用します。ログインの手間を省くことで、回答までの操作を短くします。

失敗4:従業員マスタの古さによる通知漏れ

対策: 人事システムとのリアルタイム連携またはバッチ連携を実装し、常に最新のマスタを維持します。人事の変更が通知の対象へ反映されるため、届かない人を減らせます。

ポイント

よくある失敗は、インフラの冗長化、通知の遅れ、回答画面の複雑さ、従業員マスタの古さの4つで、それぞれに対策を決めておく必要があります。

まとめ

安否確認システム開発は、企業のBCP対策を支える投資です。災害時に使うシステムなので、高可用性と迅速な通知が欠かせません。さらに、シンプルな回答UIと定期的な訓練も、成功の条件になります。

スクラッチ開発かSaaSかは、自社の要件に照らして慎重に選び、信頼できる開発会社と一緒に構築を進めることが大切です。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。