Sarashinaサービスを解説|6モデルAPIの使い分けと注意点

SB Intuitions株式会社は2026年10月13日、国産生成AI「Sarashina」を利用できる「Sarashinaサービス」の無償ベータ版を開始しました。6つのAIモデルを使えるAPIと、ウェブ上で対話や日英・英日翻訳を試せるチャットを一般公開しています。

企業のIT部門にとって注目点は、文章生成だけのサービスではないことです。検索用のベクトル化、検索結果の並べ替え、安全性判定、翻訳までを同じサービスで検証できます。自社の業務に必要な処理を小さく切り出し、モデルごとに評価できる環境です。

一方、無償ベータ版の提供終了時期は未定で、モデルごとにレート制限があります。利用規約では無償プランの入力・出力データもモデル学習や新規サービス開発などに利用できるため、無料という理由だけで社内データを送る判断はできません。

※本記事は2026年10月22日時点の情報です。

Sarashinaサービスの全体像。チャットで対話と翻訳を試し、APIで6モデルを使える
チャットで出力を確かめ、APIで用途別の検証に進む

Sarashinaサービスは無料ベータ|6モデルAPIとチャットを公開

Sarashinaサービスは、SarashinaのAPIサービスとChatサービスです。2026年10月13日に無償ベータ版が始まり、利用料金は無料です。Googleアカウントで事前申し込みなしに利用できますが、利用資格は日本国内に居住する個人または日本国内に本店所在地を有する法人に限られます。

チャット機能は、AIとの対話によるウェブ検索や文章作成、日英・英日翻訳を試す入口です。実際の応答を確認してから、同じモデル群をAPI経由で自社システムに組み込む検証へ進めます。

企業が見るべきなのは、デモの印象よりも業務の一連の処理です。問い合わせの分類、社内文書の検索、回答前の安全性判定、日英資料の翻訳など、入力から出力までを分解して評価します。1つのモデルだけで全てを処理する前提を置かないことが出発点です。

無償ベータ版は提供終了時期が決まっていません。正式な本番契約と同じ条件が確約されているわけではないため、検証時点で使えた機能、制限、評価結果を記録しておく必要があります。

ポイント

Sarashinaサービスは、チャットで出力を確認し、APIで用途別の技術検証へ進むための無償ベータ版です。無料であることと、本番運用の条件がそろっていることは分けて判断します。

6モデルの役割|生成・RAG・安全性判定・翻訳を分担

APIで利用できるのは、用途の異なる6モデルです。業務システムの構成に合わせて、生成モデルとタスク特化モデルを組み合わせます。

モデル主な用途仕様・使い分け
Sarashina3 mini対話・文書作成sarashina3-mini、128k tokens。Tool-callingにも対応
Sarashina3 nano抽出・要約・分類sarashina3-nano、128k tokens。大量処理向け
Sarashina3 embedding検索・RAGの候補抽出1,536次元。入力は8,000トークンまで
Sarashina3 rerank検索結果の再順位付け文書1〜20件。クエリと各文書の組み合わせは8,000トークン以下
Sarashina3 guard入力テキストの安全性判定sarashina3-guard、64k tokens。生成は行わない
Sarashina3 translate日英・英日翻訳5,000文字。専用APIでモデル指定は不要

社内文書を検索して回答するRAGなら、embeddingで候補を絞り、rerankで質問との関連度を並べ替え、miniで回答を生成する流れが考えられます。検索結果をそのまま生成モデルへ渡すのではなく、検索の前処理と安全性判定を分ける設計です。

RAGを業務システムへつなぐ場合は、検索結果に悪意ある指示が混ざるリスクも確認対象です。RAGのプロンプトインジェクション対策で扱うように、取得した文書を命令として実行させない境界の設計が欠かせません。

大量の定型処理はnano、入力の安全性判定はguard、日英資料の変換はtranslateというように、評価単位を分けると結果の比較がしやすくなります。6モデルの全てを同じプロンプトで比べるより、業務で必要な入出力に合わせたテストが実装判断の材料です。

ポイント

6モデルは代替関係ではなく、生成、検索、安全性判定、翻訳を分担する構成です。自社の処理を分解し、モデルごとに品質・速度・失敗時の扱いを評価します。

Sarashina3の6モデルの役割。miniは対話・文書作成、nanoは抽出・要約・分類、embeddingは検索・RAGの候補抽出、rerankは検索結果の再順位付け、guardは安全性判定、translateは日英・英日翻訳
6モデルは代わりではなく、生成・検索・安全性判定・翻訳を分担する

API導入の壁|モデル別RPMと429対応を先に実装

APIキーの作成先はSarashina APIコンソールです。リクエストのAuthorization: Bearer <API_KEY>ヘッダーに設定し、バックエンドなど保護された環境から実行します。キーをブラウザやモバイルアプリのコードに露出させないことが、公式ドキュメントの要件です。

無償ベータ版のレート制限は、契約主体とモデルの組み合わせごとに適用されます。1秒あたりではなく、60秒間の累計リクエスト数で数えられるため、上限まで一気に送るバーストも許容されません。

モデル1分あたりの最大リクエスト数
sarashina3-mini6 RPM
sarashina3-nano60 RPM
sarashina3-guard6 RPM
sarashina3-embedding60 RPM
sarashina3-rerank60 RPM
sarashina3-translate6 RPM

制限を超えると429 Too Many Requestsが返り、Retry-Afterヘッダーに次のカウント期間までの待機秒数が示される仕様です。実装では、エラーを記録して同じリクエストを直ちに再送するのではなく、指定された秒数を待って再試行します。

PoCの段階から、呼び出しキュー、バックオフ、再試行回数、失敗時の代替処理を用意しておくと、本番との差が小さくなります。APIキーをソースコードへ直書きせず、環境変数やシークレット管理を使うことも最低限の前提です。

将来の費用も評価するなら、無料枠だけでなく入力・出力の量も評価対象です。無償ベータ終了後の料金は別途確認が必要ですが、生成AIの従量課金と推論モードで整理されているように、モデル選択と処理量がコストを左右します。

ポイント

無償ベータのAPIは、モデルごとの上限が6〜60 RPMです。429とRetry-Afterを前提に、呼び出し間隔と再試行を設計してから性能を測定します。

無償ベータのレート制限はモデルごとに6 RPMまたは60 RPM。超えると429 Too Many Requestsが返り、Retry-Afterの秒数を待って再試行する
上限は60秒間の累計で数えるため、待機と再試行を先に実装する

データ利用の条件|無償プランの入力を業務データに直結させない

無償ベータ版での利用データ活用の目的は、AIモデルとサービスの品質向上・改善です。利用規約では、無償プラン・有償プランを問わず、入力データと出力データをサービスの提供・維持、法令遵守、モデルの学習、新規サービス開発などに利用できると定めています。

学習利用のオプトアウトについて、規約は有償プランの契約者が所定の方法で拒否できると定めています。無償ベータを使う企業は、入力したデータが学習などに利用され得る条件を受け入れられるかを、利用開始前に判断しなければなりません。

規約は、個人情報保護法上の個人情報や、契約者・第三者を識別できる情報を禁止事項に挙げています。第三者の著作物や、権利を侵害する情報も入力できません。社内資料をそのまま貼り付けず、公開情報やダミーデータから始めます。

  • データ分類:公開情報、匿名化データ、機密情報を分け、無償ベータに送る範囲を決める
  • 権限管理:APIキーを共有せず、利用者と利用目的を記録する
  • 終了対策:ベータ終了や停止に備え、入力・出力を自社側で保存できる流れを作る

規約上、サービスの解約・停止・終了時に、入力データと出力データの保存義務や削除義務は負わないとされています。重要なデータを預けるサービスとして扱うのではなく、検証結果と必要なデータを自社の管理下に残す設計が必要です。

機密データを外部サービスへ送らない選択肢も検討します。クローズドAIエージェントのように、データの境界を閉じる構成と、無償APIで素早く試す構成は目的が異なります。費用だけでなく、データの行き先と復旧方法が選定基準です。

ポイント

無償プランの入力・出力データは、規約上、モデル学習や新規サービス開発などに利用され得ます。機密情報、個人情報、第三者の著作物を送らず、社内のデータ分類と承認を先に済ませます。

業務で試す手順|6モデルを小さなPoCに分ける

Sarashinaサービスを業務で試すなら、最初から社内システム全体を置き換えません。SB IntuitionsがAPIの用途として示す技術検証に合わせ、入力・モデル・評価指標を限定した小さなPoCにします。

  1. 公開・ダミーデータで品質を見る:miniの回答、nanoの抽出、translateの訳文など、用途ごとに正解データを用意する
  2. 処理量と失敗を測る:応答時間、エラー、429、入力トークン、出力トークンを記録する
  3. 安全性の分岐を確認する:guardの判定を人手確認や拒否処理と組み合わせ、誤判定時の扱いを決める
  4. 終了時の代替策を決める:ベータ終了、仕様変更、レート制限変更が起きた場合の移行先と停止手順を残す

評価では「日本語が自然か」だけでなく、業務の失敗コストも測定対象です。誤った検索結果を回答に使った場合、翻訳の固有名詞を誤った場合、安全性判定が漏れた場合に誰が止めるのかを決めます。自動化する範囲と人が確認する範囲を表にすると、導入可否を説明しやすくなります。

本番採用を判断する段階では、無料で動いたかだけでは足りません。無償ベータ終了後の料金、サポート、サービスレベル、データ保持、オプトアウト条件を確認し、同じ評価データで再測定します。条件が変わったときに業務が止まらない構成を用意しておくことが必要です。

AI導入が限定的な段階にある企業では、技術部門だけで試すと利用部門の業務定義が抜けます。日本企業のAI活用と実装のギャップを埋めるには、現場の評価者、情報システム、法務・コンプライアンスを小さな検証チームに含める体制が必要です。

ポイント

最初のPoCは公開・ダミーデータで始め、品質・速度・429率・安全性判定・停止手順を記録することが欠かせません。本番採用は、無償ベータ後の契約条件と代替策を確認してから判断します。

よくある質問

Q. Sarashinaサービスはいつから、いくらで使えますか?

2026年10月13日に無償ベータ版が始まり、利用料金は無料です。Googleアカウントで事前申し込みなしに利用可能です。

Q. 6つのモデルは何に使い分けますか?

miniは対話・文書作成、nanoは抽出・要約・分類を担います。embeddingは検索用のベクトル化、rerankは検索結果の再順位付け、guardは入力テキストの安全性判定、translateは日英・英日翻訳です。

Q. 無償ベータ版の入力データは学習に使われますか?

利用規約では、無償プラン・有償プランを問わず、入力データと出力データをモデルの学習や新規サービス開発などに利用できると定められています。学習利用のオプトアウトは有償プランについての規定です。

Q. APIのレート制限に達したらどうなりますか?

上限を超えると429 Too Many Requestsが返ります。レスポンスのRetry-Afterヘッダーで示された秒数を待ってから再試行する仕組みです。

まとめ

Sarashinaサービスは、6モデルのAPIとチャットを無料で試せる無償ベータ版です。生成、検索、安全性判定、翻訳を用途ごとに検証できるため、業務の一部を切り出したPoCに向いています。

導入前に確認する条件は、モデルの役割、モデル別RPM、429への再試行、APIキーの保護、入力データの扱いです。無償プランのデータ利用条件を社内で受け入れられるかを判断し、公開・ダミーデータから試験を始めます。

ポイント

Sarashinaサービスは「無料だからすぐ本番へ進む」ためのサービスではありません。6モデルのうち必要な機能だけを、データ利用条件と停止時の代替策まで含めて評価するために使います。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。