介護・福祉業向け介護記録システム開発の完全ガイド

介護記録システムは、サービス種別、記録と請求の範囲、既存業務との連携方法を整理すると、自社に合う方式と導入手順を選べるシステムです。

各テーマの詳しい内容は、関連記事もあわせてご覧ください。

▼関連記事一覧
・介護・福祉業向け介護記録システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順
・介護・福祉業向け介護記録システム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方
・介護・福祉業向け介護記録システム開発の見積相場や費用/コスト/値段について
・介護・福祉業向け介護記録システム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

介護・福祉業向け介護記録システムの全体像

介護記録システムを中心に、利用者情報、日々の記録、後工程、入力機能を配置した図。
記録情報が入力から後工程へつながる構成です。

介護記録システムは、利用者情報や日々のケア記録を一元管理する業務システムです。入力した情報を申し送りや計画評価、家族説明、請求や行政提出に再利用するため、同じ内容を書き写す手間が減ります。

導入前には、誰が、いつ、どこで、何を入力し、誰が確認するかを一覧にしておきます。決めておかないと、稼働後に誰が書くのかが曖昧なまま、記録が後回しになりがちです。

一元管理する情報と基本機能

一元管理する情報は、利用者の基本情報から日々の記録、後工程まで広がります。

  • 利用者情報:台帳、契約・入退所、要介護度、既往歴、アレルギー、緊急連絡先
  • 日々の記録:バイタル、食事・水分、排泄、服薬、睡眠、入浴、移乗、レクリエーション、事故やヒヤリハット
  • 後工程:計画、モニタリング、評価、申し送り、訪問予定、サービス提供実績
  • 入力機能:スマートフォンやタブレットでのタップ、定型文、音声、写真添付、検索、下書き保存

機能の多さより、現場での使いやすさを優先して見ます。たとえば、夜勤中や入浴介助の合間には、必須項目が少なく、前回の値を見やすい画面が役立つ場合があります。また、入力内容の訂正履歴が残るかどうかも、確認しておきたい点です。

導入で変わる業務と、変わらない業務

導入後に楽になる業務と、人が担い続ける業務は、分けて考えます。そうしておくと、期待を現場と共有できます。

  • 転記:同じ情報を複数の帳票へ書き写す業務で、導入効果が出やすい
  • 記録活用:提供後の記録を申し送りや家族向け報告の下書き、実績確認に使い、双方の負担を減らす
  • 人の役割:対人援助、ケアの最終判断、家族との信頼関係づくりは、システムだけでは担えない

記録ソフトを使う事業所を対象にした調査では、「介護記録作成」の利用割合は92.9%、「請求機能」は84.8%でした(出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査・令和7年度調査」、2026年公表)。

ケアの質を上げるには、記録を入力するだけでなく、会議やモニタリングで読み返し、改善につなげる運用が要ります。そこで、導入の目的は「記録を活用して確認と判断を早くすること」だと、関係者で共有しておきます。入力量を増やすことが目的になると、運用が入力作業だけで終わりがちです。

ポイント

記録を一度入力すれば、申し送りや請求まで使い回せるかが、導入効果を見る目安になります。機能の多さより、夜勤や入浴介助の合間にも入力しやすいかを優先して見ます。

介護記録システムの種類と選び方

標準的な業務を短期間で始めたいなら、クラウド型の標準サービスが候補になります。法人独自の業務や複数の機能をまとめたい場合は、業界向けパッケージが選択肢になります。

独自の処理が事業の強みなら、準カスタムやスクラッチ開発を検討します。どの方式が合うかは、施設か訪問系か、請求を残すか置き換えるかによって変わります。

クラウド型・記録専用型

クラウド型と記録専用型は、提供方法と利用範囲が異なるため、分けて確認します。

  • クラウド型:サーバーを持たず、ブラウザやアプリから利用する
  • 更新:制度改定への対応を提供側に任せやすく、初期費用も抑えやすい
  • 記録専用型:既存の請求ソフトを残し、記録と申し送りをデジタル化する場合に候補

公開されている料金の例では、1施設・職員6名で月額3,000円から、初期費用0円のものがあります。また、訪問介護向けには、1施設・職員10名で月額5,000円から、初期費用0円という例もあります(出典:各サービスの公式料金ページ、2026年確認)。

ただし、研修費や出張費、データ移行が別料金になる場合があります。追加機能や職員、利用者の追加でも、費用が増えることがあります。そのため、表示価格の比較に加えて、必要な費用を一つずつ確認します。

記録・請求一体型と業界パッケージ型

一体型と業界パッケージ型は、連携する範囲と対象とする業務が異なります。

  • 記録・請求一体型:実績を請求データにつなぎ、転記を減らしたい小規模・請求担当の少ない事業所に向く
  • 業界パッケージ型:施設管理、計画、記録、請求、経営分析、勤務管理をまとめる
  • 複数拠点:法人全体の管理画面や拠点間のデータ共有を確かめる

ただし、請求の締め処理や加算確認まで自動化の対象になるかは、確かめておく必要があります。そのうえで、現在の請求手順と比べて、確認者の仕事がどう変わるかを見ます。

特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホームでは、必要な帳票や加算が異なります。通所介護や訪問介護、障害福祉でも、求められる内容はサービスごとに変わります。そのため、導入前に自社のサービス種別をすべて開発会社に伝えます。

準カスタム・スクラッチ開発

独自業務にどこまで対応させるかと、自社がどこまで管理を担うかで、準カスタムかスクラッチかを選びます。

  • 準カスタム:標準機能にAPI連携や個別画面を加えて独自業務に対応する
  • スクラッチ:自由度は高いものの、開発から保守まで自社の管理負担が大きい

独自のケア手順や基幹システムとの連携が要件になると、準カスタムやスクラッチが候補に入ります。家族向けポータルや機器データとの連携、自治体や他事業所とのデータのやり取りも、要件に挙がりやすい項目です。

スクラッチでは、要件定義から開発、テストまでを自社で管理します。さらに、移行や研修、保守も自社の管理に入ります。

独自開発したい機能は、「現場の好み」と「法令・請求・安全管理上の必須要件」に分けておきます。また、音声入力やAI要約を加える場合も、職員が文章を確認して確定する承認の流れは残します。特に、服薬や事故対応、ケア判断を、AIの出力だけで確定させる設計は避けます。

ポイント

請求を残すのか置き換えるのか、事業の強みが独自の処理にあるのかで、候補は変わります。迷ったときは、現在の請求手順と比べて、確認者の仕事がどう変わるかを見ます。

介護記録システム開発・導入の進め方

現場観察と業務棚卸しから要件定義と方式選定、パイロット、本番移行、定着確認へ進む図。
試行を挟んでから本番へ移り、運用状況を確かめます。

導入は、契約を結んだあとも続きます。現場観察、要件定義、方式選定、試行、本番移行、定着確認までを、一つのプロジェクトとして進めます。

機能から比べ始めると、今の業務をそのままシステムへ移す発想になりがちです。そこで最初に、紙やExcel、口頭で回っている流れを一覧にし、必要な変更を確かめます。

▶ 詳細はこちら:介護・福祉業向け介護記録システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

現場観察と業務の洗い出し

現場観察では、業務の流れや職種ごとの使い方、今の負担を把握します。紙の帳票や口頭のやり取りは、書類だけでは分かりにくいため、現場で見て確かめます。

  • 業務の流れ:受け入れから提供、記録、申し送り、計画評価、請求、家族連絡
  • 現場の違い:施設の早番・遅番・夜勤、移動中や利用者宅の通信、通所の送迎と日中活動
  • 聞き取り:職員、管理者、請求担当、ケアマネジャー、家族対応担当
  • 現状値:記録・申し送り・請求確認時間、転記回数、差戻し件数

導入後の効果を比べるには、「記録が大変」といった感想より、数字で押さえておくほうが確かです。1人あたり1勤務の入力時間と、入力が翌日になる記録の件数を測っておくと、導入前後の差が見えます。

要件定義と方式選定

要件は優先度ごとに分けて、方式選定と見積もりの前提をそろえます。

  • 必須:台帳、サービス別記録、権限、訂正履歴、帳票、請求または既存請求連携
  • できれば必要:音声入力、写真、家族共有、チャット、センサー連携
  • 将来検討:AI分析、複数法人とのデータ連携

見積依頼書には、事業所数や拠点数、職員数といった規模の数字を書きます。利用者数やサービス種別、同時利用者数も、あわせて記しておきます。

保有する過去データや連携対象、必要な帳票も盛り込みます。加えて、想定する端末やWi-Fi環境、サポート時間も書き添えます。

条件が曖昧なままだと、提案ごとに前提が変わり、価格を比べる土台がそろいません。そのため、標準機能と個別開発の範囲を分けて提示してもらいます。

パイロット、移行、定着確認

試行、本番移行、定着確認の順に進め、切り替えたあとの運用まで見届けます。

  1. 試行:全拠点を一斉に切り替える前に、1サービス・1拠点でパイロットを行う
  2. 本番移行:利用者・職員・サービス・帳票のマスタを整え、過去記録をどこまで持ち込むかを決める
  3. 定着確認:導入後30日・60日・90日に状況を確認する

試行には、使い方の違う代表者を含めます。たとえば、夜勤や訪問の担当者が挙げられます。管理者や請求担当、家族対応の担当者も、試行の対象に加えます。

入力時間や記録漏れ、申し送り時間を測ります。請求差戻し、ログイン率、職員からの問い合わせ件数も、評価に加えます。数字で追うと、感覚だけに頼らず判断できます。

過去の記録を全履歴まで移すと、費用と確認の手間が膨らむ場合があります。そのため、法令や業務上必要な期間、参照頻度、保管方法をもとに移行範囲を決めます。

稼働直後に備え、紙との併用期間と障害時の代替記録を用意します。問い合わせ窓口や教育用の練習環境も、あわせて整えます。

介護記録システムの費用相場とコストの内訳

費用は、記録だけか請求まで含むか、そして職員数や利用者数、拠点数のどれで課金されるかで変わります。端末やデータ移行を含むかどうかも、見積もりを大きく左右します。

公開価格の入口は、記録専用クラウドなら初期費用0円、月額5,000円程度からです。機能や規模が増えると、月額は数万円から数十万円に広がります。一方で、個別開発は、標準サービスの月額と同じ尺度では比べられません。

▶ 詳細はこちら:介護・福祉業向け介護記録システム開発の見積相場や費用/コスト/値段について

クラウド利用料とパッケージ導入費

料金の例と調査の値は前提が異なるため、費用の項目ごとに分けて読み取ります。

  • 料金項目:初期設定、月額、職員ID、利用者数、拠点数、オプション、サポート
  • 別料金:職員追加、研修、機能拡張など、公開例ごとの条件
  • 比較:同じ条件で3年間利用した総額に直して並べる

記録・請求一体型の公開例では、月額25,000円で、初期費用とサポート費用が0円の料金があります(出典:介護ソフトの公式料金ページ、2026年確認)。

厚生労働省の令和7年度調査では、介護記録ソフトの導入費用の平均は約481.14万円でした。この平均は、レンタル導入を除いた回答の値です(出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査・令和7年度調査」、2026年公表)。

この実績値には、パッケージ購入や端末の費用が含まれている可能性があります。設定や移行、導入支援の費用も含まれる場合があります。

この平均値は月額SaaSの初期費用とは性質が違うため、調査対象と自社の規模を照らし、見積もりに使えるかを判断します。

個別開発・連携・端末にかかる費用

個別開発では、初期費用と導入後の費用を分けて、追加要件がどれだけ響くかを見積もります。

  • 開発費:要件定義、画面・データ設計、アプリ、API、権限、監査ログ、テスト
  • 導入費用:移行、操作研修、端末、充電保管、Wi-Fi増強、モバイル通信、初期データ整備
  • 運用・終了費用:問い合わせ、バックアップ、保守更新、制度改定対応、解約時のデータ返却

類似する個別業務システムの初期費用は、300万円から2,000万円程度が目安になります。ただし、介護記録に限定した公的な一律の相場ではありません。

請求やケアプラン連携、外部機器を含めると、2,000万円を超える可能性もあります。複数拠点や家族ポータル、AIまで含めると、さらに対象が広がります。

調査では、年間ランニングコストの平均はレンタル・リースで約46万円でした。保守・管理・更新は約37万円、その他は約6万円です(出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査・令和7年度調査」、2026年公表)。月額だけでなく、導入から3年または5年までの総額で比べます。

投資回収を判断する計算方法

投資回収は、削減時間による効果と導入後の費用を、同じ期間で比べて判断します。

  1. 削減効果:削減時間に職員の実質人件費を掛けて算出する
  2. 費用控除:月額、保守、端末費を効果から差し引く
  3. 測定:導入前に目標値を決め、導入後も同じ指標で測る

例えば全体で1日60分を減らし、月22日稼働、人件費を1時間あたり2,000円とすると、効果は月44,000円です。これは単純な試算ですが、削減した時間を休憩やケア、教育、記録確認に振り向ける運用も、あらかじめ決めておきます。

費用対効果には、申し送り漏れや請求差戻しの時間を含めます。記録確認や家族への説明、監査対応の時間も、あわせて入れます。

数で表しにくい安全性や職員の心理的負担は、数値とは別の評価項目として管理します。

ポイント

費用は、月額の安さより3年または5年の総額で比べます。個別開発は初期費用の目安に幅があるため、追加要件を一つずつ見積もって判断します。

介護・福祉業向け介護記録システムの開発会社/ベンダーの選び方

開発会社やベンダーは、介護・障害福祉の業務知識や、標準機能とカスタマイズの境界、記録・計画・請求の連携で比べます。機能の多さや見積もりの安さより、業務に合うかどうかを先に見ます。

現場への伴走支援や、制度・標準仕様への追随力も、同じ質問票で確かめます。さらに、完成済みの製品を導入するのか、自社向けに開発するのかも、早い段階で分けて考えます。

介護・福祉の業務知識と対応範囲

サービス種別ごとの業務や必要な項目を理解しているかは、具体例を示してもらって確かめます。

  • 入所施設:夜勤、居室、食事・排泄、事故、服薬、ケア会議
  • 訪問系:訪問予定、移動、提供時間、サービス内容、利用者宅入力
  • 障害福祉:個別支援計画や支援記録などの要件

自社に近いサービス種別や職員規模、複数拠点の有無を確かめます。既存の請求システムとの連携実績も、あわせて聞いておきます。導入実績の数だけでなく、導入後にどんな課題が出て、どう改善したかも聞きます。

現場見学や操作体験では、夜勤者や訪問担当者が短時間で入力できるかを確かめます。

移行・研修・保守の体制

契約後は、初期設定やデータ移行でつまずくことがあります。そのため、移行や研修、保守の担当範囲と対応条件を確かめます。

  • 初期設定:各設定と移行作業の担当を見積書に記載
  • 研修:訪問・夜勤など全員が同時に受講できない職場では、録画教材や短時間の講座、管理者向けの教育を確認
  • 保守:制度・報酬改定の対応範囲、障害時の受付時間・復旧目標、バックアップ、データ返却、脆弱性、追加開発料金
  • 委託管理:委託先、保存場所、再委託、事故時連絡を確認

初期設定では、利用者マスタや職員権限、帳票の担当を決めます。定型文や端末、ネットワークの担当も、決めておく項目です。担当の範囲は、契約書と運用手順の両方で確かめます。

見積もりと比較表で確認する項目

比較表は、費用と機能を分けて整理します。

  • 費用:初期費用、月額または年額、追加ID、端末、通信、研修、移行、保守、帳票、API、解約時のデータ返却
  • 機能:利用者台帳、記録、計画、申し送り、請求、LIFE、ケアプランデータ連携、家族共有、機器連携、オフライン入力、監査ログ

各機能が、標準、有償オプション、個別開発のどれに当たるかも区別します。同じ『対応できる』でも、費用の掛かり方が変わるためです。

候補を絞るときは、必須要件に高い配点を付けます。そのうえで、操作性や導入支援を加点します。総額や将来性、セキュリティも、加点の対象に入れます。

デモでは、利用者検索や今日の食事の入力を実際に操作します。訂正履歴の確認と申し送りの作成、月末の実績確認も試します。管理者だけでなく、現場職員が使い続けられるかを判断の軸にします。

▶ 詳細はこちら:介護・福祉業向け介護記録システム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方

▶ 詳細はこちら:介護・福祉業向け介護記録システム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

ポイント

開発会社は、介護・障害福祉の業務知識と、標準機能とカスタマイズの境界で比べます。見積もりの安さより、現場職員が使い続けられるかを判断の軸にします。

セキュリティと現場定着を成功させるポイント

入力設計、入力方法、改善運用の3要素が循環する図。
入力の工夫と改善を繰り返す構成です。

介護記録には、健康状態や生活状況が含まれ、家族情報や支援内容も慎重に扱う必要があります。クラウドやスマートフォンで扱うなら、閲覧者と保存場所を決め、端末を紛失した場合の停止方法も設計します。

セキュリティは、要件定義の最初から扱います。機能一覧の最後に付け足すと、権限や記録の設計を後から組み直すことになりかねません。

権限・ログ・バックアップの基本

利用者情報を守り、記録者や変更履歴を追えるように、基本機能を確かめます。

  • アクセス管理:職種・役割・拠点別権限、個人別アカウント、多要素認証
  • 記録管理:ログイン・ログオフ、閲覧・入力・送信ログ、訂正履歴、暗号化通信
  • 継続性:バックアップ、復元テスト、退職・異動時の速やかな停止

共有アカウントを使うと、誰が記録したかを追えなくなるため、避けます。また、厚生労働省は2026年に、介護事業所向けの情報安全管理の手引きを公開しました。手引きは、ログイン・ログオフや閲覧・入力・送信など、場面ごとの注意点を示しています(出典:厚生労働省「介護情報基盤について」、2026年)。

個人情報保護委員会のガイダンスは、安全管理措置、従業者の監督、委託先の監督を介護関係事業者に求めています(出典:個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」)。そのため、契約前に、これらの観点をもとにベンダーへ質問しておきます。

現場に定着させる運用設計

現場に定着させるには、入力しやすい設計と、つまずきを直していく運用の両方が要ります。

  • 入力設計:必須項目と任意項目を分け、記録するタイミングを決める
  • 入力方法:短い定型文や選択肢を用意し、タップ・音声・後確認を組み合わせる
  • 改善運用:入力できない原因を直し、月1回の会議で課題を話し合う

高齢の利用者を支援する現場では、長文を打つより、タップや音声、後からの確認のほうが負担を下げる場合があります。電波の弱い場所や訪問先で使うなら、オフライン保存と再送を実機で確かめます。

端末の数や通信環境を見直し、ログインの速さや業務に合わない必須項目も、先に確かめておきます。画面やルールを少しずつ更新すると、導入直後の混乱を抑えやすくなります。

ポイント

権限や訂正履歴、バックアップを要件定義の最初に含められるかが、安全面の判断の目安です。定着は、入力しやすさと改善の運用を両方そろえて考えます。

2026年時点では、介護情報基盤やケアプランデータ連携、LIFEとの接続を見据えて検討します。請求や見守り機器との接続も、視野に入れます。介護情報基盤は、2026年4月から準備済みの自治体で順次始まり、開始時期には差があります。

今ある機能をすべて作り込むより、将来の仕様変更に対応できるデータ項目とAPI方針を確認しておくほうが現実的です。

介護情報基盤と標準仕様への対応

介護情報基盤との連携や乗り換えに備え、仕様とデータの扱いを確認します。

  • 連携性:データ出力、標準仕様の項目管理、認証・端末条件への追随
  • 未対応機能:対応時期、追加費用、利用者同意、障害時の代替フロー
  • データ返却:所有者、出力形式・範囲・費用、解約後の保持期間

介護情報基盤が普及すると、利用者や自治体、介護事業所に分散している情報を、関係者が確認しやすくなります。

独自形式だけでの出力や、再利用できない画像PDFは、長期運用のリスクになります。有料APIの費用を予算に入れていないことも、長期運用の不安要素です。標準項目と独自項目を区別して保存できる設計が望まれます。

音声入力・AI・センサーを安全に使う方法

音声、AI、センサーは、記録や観察を補助する用途に置き、確認手順を定めます。

  • 音声入力:移動や介助の直後に記録の下書きを作る
  • AI:記録の要約や傾向分析で申し送りの論点を探す
  • 職員確認:元記録と照合し、承認して確定する
  • 機器連携:取得頻度、異常値、アラート責任者、障害表示、交換時の再設定

音声入力やAIの文章には、誤認識や主語の欠落が起こる可能性があります。時刻の誤りや否定表現の取り違えも、確認で見つける必要があります。そのため、AIやセンサーの結果は、職員の観察と記録を補うものとして扱います。

個人情報の学習利用や保存期間、第三者提供は、契約書とプライバシー通知で確かめます。

保守契約で確認する将来性

制度や仕様は変わる可能性があるため、更新への対応と引き継ぎやすさを、契約時に確かめます。

  • 改定対応:保守費内か追加開発か、完了目安、周知方法、テスト環境
  • 更新時の役割:画面変更時の現場教育とマニュアル更新の担当
  • 引き継ぎ:API、データ辞書、監査ログ、権限、バックアップ、障害手順の文書化

将来性は、機能の数よりも、変更に耐えられる仕組みで評価します。担当者が替わっても運用を引き継げる状態が理想です。

導入時の価格だけでなく、5年後も安全に使い続けられるかを選定基準に含めます。

介護・福祉業向け介護記録システムのよくある質問

導入前に確かめたいのは、費用や機能、データの安全性です。よく寄せられる質問からは、既存業務との併用や操作性も比べる点だと分かります。

介護記録システムは月額いくらから利用できますか?

公開例では、記録専用型で初期費用0円、1施設あたり月額5,000円程度からです。請求・計画・複数拠点を含む場合や、家族共有・機器連携まで含めた場合は、月額数万円から数十万円になることがあります。

月額だけで比べず、追加IDや端末、研修を含めた3年総額で確認します。移行、通信、保守の費用も、同じ総額に入れておきます。

紙の記録をすべて移行しなければなりませんか?

移す範囲は、記録の必要性と移行の負担をもとに決めます。すべてを同じ形で移す必要はありません。

  • 保管要件:法令や内部規程で必要な期間を確認する
  • 利用頻度:日常的に参照する期間を見る
  • 移行負担:作業にかかる費用と確認工数を整理する

移行しない記録は、安全な保管場所と検索方法を確保し、新システムの利用者マスタや現行計画と対応づけておきます。

訪問先や電波の弱い場所でも入力できますか?

オフライン入力や下書き保存、再接続時の自動送信への対応は、製品ごとに異なります。

実際の端末と通信環境で、入力や保存、再送を試します。重複登録や送信失敗時の表示も確かめておきます。オフライン中に端末をなくした場合に備え、遠隔ロックやデータ消去も確認します。

介護記録にAIを使っても問題ありませんか?

AIに補助させる用途と、人が確認する場面を分けて決め、情報の扱いも定めます。

  • 用途:記録の下書き、要約、傾向の把握を補助する
  • 確認:職員が誤りや抜けを見つけ、内容を確定する
  • 情報管理:利用目的、保存場所、学習利用、第三者提供、ログ確認を決める

服薬や事故対応のように重要な判断は、AIの出力だけで確定しない運用が必要です。

小規模事業所でも介護記録システムを導入できますか?

小規模の事業所でも、対象を絞れば段階的に導入できます。

  • 始め方:記録専用型や少人数向けクラウドを1サービス・1拠点で使う
  • 確認:端末・研修の負担と効果、既存請求ソフトとの連携範囲

ただし、既存請求ソフトとの二重入力が残ると効果が薄れます。最初に、連携範囲と将来の拡張方針を確かめます。

まとめ

選定で押さえる結論

選定では、情報をどこまで活用するかと、自社の業務条件に合う方式かどうかを見ます。

  • 役割:利用者情報や記録を一元管理し、申し送り、計画、請求、家族説明へつなぐ
  • 方式選び:記録専用、一体型、業界パッケージ、個別開発を自社業務に合わせる

導入前の確認と準備

導入前には、費用と業務効果を確かめます。安全管理と将来の連携も確認し、要件と評価方法を整えます。

  • 費用:公開料金は月額5,000円程度から。3年または5年総額と投資回収で判断
  • 効果:入力時間や申し送り時間を測り、導入後に確かめる
  • 安全・将来性:権限、個人別アカウント、訂正履歴、バックアップ、委託先、障害対応、介護情報基盤・標準仕様を確認
  • 準備:業務を洗い出し、必須要件と将来要件を分ける

厚生労働省の調査では、導入費用の平均は約481.14万円です。

介護情報基盤は、2026年4月から準備ができた自治体で順次利用が始まりました。AIやセンサーの最終確認と責任は、人に残しておきます。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。