医療機関向け電子カルテシステム開発の完全ガイド

医療機関向け電子カルテシステムは、施設の規模、運用基盤、機能の作り方によって、必要な構成が変わります。診療録の画面だけでなく、部門や外部との連携まで含めて考える必要があります。

全体像から費用、開発会社の選び方まで、打ち合わせで判断すべき点を取り上げます。詳細は、下の関連記事で確認できます。

▼関連記事一覧
・医療機関向け電子カルテシステム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順
・医療機関向け電子カルテシステム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方
・医療機関向け電子カルテシステム開発の見積相場や費用/コスト/値段について
・医療機関向け電子カルテシステム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

医療機関向け電子カルテシステムの全体像

患者情報を中心に、基本機能、診療機能、部門連携、安全管理をつないだ電子カルテの図。
機能区分を並べると、診療録以外の連携範囲も見渡せます。

電子カルテは、医師が診療録を書く画面だけではありません。患者情報を起点に、職種や部門が情報を共有し、オーダーから会計、退院後の連携までをつなぐ役割を担います。

導入前には、患者が来院してから情報が蓄積、共有されるまでの業務全体を見渡す必要があります。診療録の画面だけで範囲を決めると、必要な連携を見落としやすくなります。

電子カルテで何ができるシステムかの機能範囲

電子カルテの機能は、基本機能、診療機能、部門連携と安全管理の区分で整理できます。

  • 基本機能:患者・保険情報、既往歴、アレルギー、病名を扱います。経過記録、診療文書、テンプレート、シェーマにも対応します。
  • 診療機能:各種オーダー、結果表示、看護記録を扱います。病床・入退院管理、予約、問診、会計や資格確認も含みます。
  • 部門連携:PACS、検査機器、薬剤・予約・会計システムとの接続。

診療機能には、処方や検査などのオーダーに加えて、レセプトや電子処方箋、オンライン資格確認も含まれます。注射、画像、輸血、食事、手術、リハビリのオーダーも、各種オーダーに含まれます。

複数施設で使う場合は、患者IDや紹介・逆紹介の流れも設計の対象になります。在宅・訪問診療や退院支援の流れも、設計に含める必要があります。また、権限や監査ログ、バックアップの仕組みに加えて、障害時の紙運用と復旧手順も必要です。

施設規模ごとに必要な範囲の違い

必要な機能と連携は、施設規模によって異なります。そのため、規模ごとの違いを見ながら、不要な機能と必要な範囲を整理していきます。

  • 無床クリニック:診療録、予約、問診、会計、レセコン連携、オンライン資格確認が優先です。
  • 有床診療所・小規模病院:入院、病床、看護、薬剤、検査、退院支援と職種間の引き継ぎが加わります。
  • 中規模以上の病院:手術、救急、集中治療、輸血との部門連携が欠かせません。放射線、病理、栄養、経営分析などとの連携も必要です。

「電子カルテを作れる会社」を探す場合も、自院の病床数や診療科、既存機器、複数拠点の有無などに合う相手を選びます。

ポイント

迷ったときは、施設の規模と運用基盤、機能の作り方の3点を並べて比べると、自院に必要な構成が見えてきます。診療録の画面以外の連携範囲も、同じ表に並べておくと見落としにくくなります。

医療機関向け電子カルテシステムの種類と選び方

種類は、運用基盤と機能の作り方を分けて比べます。クラウドとオンプレミスは運用基盤の違いで、パッケージとスクラッチは機能の作り方の違いです。

クラウド上の標準パッケージに設定変更やAPI連携を加える方式も多く、両者を組み合わせて考えることもできます。

クラウド型とオンプレミス型の比較

運用基盤ごとの特徴と確認点を比べて、自院の拠点や運用体制に合う方式を検討します。

  • クラウド型:院内サーバーを置かず、複数拠点で情報を使いやすい方式です。
  • クラウド型の確認点:月額費用、回線の冗長化、通信障害時の代替運用、サービス終了時のデータ返却条件。
  • オンプレミス型:院内などにサーバーを置き、機器更新、バックアップ、パッチ適用、障害対応の一部を自院か保守事業者が担います。院内運用と構成管理に向きます。
  • オンプレミス型の確認点:サーバー更新費、保守要員、災害対策、老朽化対応を長期計画に含めます。
  • 共通の確認点:診療継続の復旧目標、データ保管場所、委託先を文書にまとめ、どこまでを誰が受け持つかを明確にします。

クラウド型は、クラウド基盤や専用回線、VPN、多要素認証などを利用します。そのため、サーバー更新やバックアップを自院だけで抱えにくいのが特徴です。

パッケージとスクラッチ開発の使い分け

方式ごとの特徴を比べ、標準機能で満たせない範囲を確認します。

  • パッケージ型:診療録、オーダー、看護、医事会計などの標準機能を使い、施設固有の部分は設定や連携で補います。
  • スクラッチ開発:独自の診療フロー、研究業務、複雑な施設間連携を作り込みたい場合に適しています。

パッケージ型は、導入実績や制度改定への対応が蓄積されているため、品質と導入期間を見通しやすい点が特徴です。一方で、標準業務に合わせて運用を変える必要が生じる場合もあります。

スクラッチでは、制度改定や安全管理、保守を自院と開発側が継続して管理します。監査ログやデータ移行、担当者交代への対応も、その対象に含まれます。

まず、標準機能で満たせる範囲を定めます。そのうえで、現場の差が診療上の重要な要件なのか、単なる慣れなのかを見極め、限定的な個別開発を検討します。

ポイント

迷ったときは、クラウドかオンプレミスか、パッケージかスクラッチかを分けて比べます。拠点数と院内の運用体制に合う組み合わせを絞ると、選択肢が整理されます。

医療機関向け電子カルテシステムの導入・開発の進め方

業務の把握、施設要件、候補の確認、設計・設定・連携開発、データ移行・教育・切替を順につないだ図。
候補選定の後に設計と切替準備が続く構成です。

電子カルテの導入では、契約後に設定を始める前に、業務とデータ、連携先を先に決めておく必要があります。セキュリティや切替方法も含め、各段階に責任者と判断基準を置きます。

小規模な診療所でも、院長や看護職、医療事務などが早くから参加すると、稼働直前の手戻りを抑えやすくなります。

▶ 詳細はこちら:医療機関向け電子カルテシステム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

企画・要件定義で決める事項

要件定義では、現場の業務と施設の条件を整理したうえで、必要な機能や候補製品の確認方法を決めます。

  • 業務の把握:診療、看護、検査、画像、薬剤、会計、文書、地域連携の業務を、来院から退院後まで書き出します。
  • 課題の具体化:紙やExcelの二重入力、電話確認、手作業の転記などを一覧にし、改善の目的を安全性、待ち時間、記録負担の観点で整理します。
  • 施設要件:施設規模、診療科、端末数、拠点数を整理し、今後の増床や在宅対応も含めます。RFP(提案依頼書)で必須と望ましい要件、対象外を分けます。
  • RFPの記載:患者情報・診療録、権限、監査ログ、データ出力を明記します。障害時運用、バックアップ、標準規格、既存機器接続、契約終了時のデータ返却も加えます。
  • 候補の確認:同じ患者・診療シナリオでデモを依頼し、機能一覧では分からない入力速度や修正のしやすさを確かめます。

設計・設定・連携開発での注意点

要件が確定したら、対応方法を分けて整理します。範囲が曖昧なままだと、要望が後から増え、テスト対象と費用が膨らみます。

  • 標準機能:製品の標準機能で対応する範囲。
  • 設定変更:設定で変える範囲。
  • 連携:APIや連携エンジンで補う範囲。
  • 個別開発:独自に作り込む範囲。

診療科ごとのテンプレートや帳票は、全施設で共通に必要な要件と、特定の担当者だけが使う便利機能に分けて検討します。

連携設計では、患者IDから受付、会計までのデータ項目と、電子処方箋やオンライン資格確認の送受信時期を定義します。HL7 FHIRやSS-MIX2、DICOMなどの標準規格を使い、独自形式に閉じすぎない設計にします。これは、将来の電子カルテ情報共有サービスを見据えるためです。

連携エラーが起きたときに、誰が検知し、どの画面から再送し、患者安全に影響する場合は誰が承認するかも決めておきます。

データ移行・教育・切替の進め方

切替準備では、まず移行対象を決めます。そのうえで、職種別の教育と稼働前の検証を順に進めます。

  • 移行対象:旧システムの全情報を移すとは限らず、稼働初日から必要な情報を選びます。
  • 古い記録:参照用データや紙で保管する方法もあります。
  • 移行範囲:費用だけでなく、データ品質や検証期間、どこまでを誰が受け持つかを基に決めます。

移行対象として考えられるのは、患者基本情報や現在の病名、アレルギーです。継続処方や直近の検査、重要文書なども対象になり得ます。

2025年のある病院の導入事例では、必要性と費用対効果で移行対象を絞りました。旧システム固有の書式は院内で作り直す判断をしたことが、短期稼働につながりました。

教育は、説明会を一度開くだけでは不十分です。医師、看護師、医療事務、検査、薬剤、管理者ごとに、受付から記録、オーダー、修正、承認、会計までの実業務を練習します。

  1. 本番に近いデータで切替リハーサルを行い、端末不足や権限設定、連携エラーを確認します。印刷や、停電・通信断時の紙運用も確かめます。
  2. 本稼働後の1〜2週間は問い合わせ窓口を厚くして、現場の声を設定変更と追加教育に反映します。

ポイント

要件の範囲が曖昧なままだと、要望が後から増えて費用が膨らみます。業務やデータ、連携先、切替方法を先に決め、各段階の責任者を置くと、稼働直前の手戻りを抑えられます。

医療機関向け電子カルテシステムの費用相場と5年TCO

費用は、病床数や部門数、端末数によって変わります。既存データ量や医療機器連携も関わります。さらに、カスタマイズや24時間サポート、ネットワーク整備も、費用の差を生みます。

病院向けは公開されている価格が少なく、全国一律の相場として示すことはできません。

厚生労働省は、2026年の調査事業で、導入・運用費用の実態把握と、オンプレミス型・クラウドネイティブ型のコスト比較を研究課題にしています(出典: 厚生労働省「令和8年度 地域医療基盤総合推進調査事業」、2026年)。規模別・方式別の実態データも、まだ整備の途中です。

▶ 詳細はこちら:医療機関向け電子カルテシステム開発の見積相場や費用/コスト/値段について

施設規模別の費用目安

施設規模別の費用目安を比べるときは、価格の前提や、見積もりに含まれる項目も確認します。

  • 診療所向けクラウド型:初期0〜150万円、月額1〜5万円程度。端末、レセコン連携、訪問診療、データ移行、操作研修の有無で変わります。
  • 公開料金の確認:税別か、1施設単位か、追加ユーザーや連携が別料金かを確かめます。表示価格は比較の起点で、導入総額とは限りません。
  • 無床・有床診療所、小規模医療機関:初期100〜800万円、月額5〜30万円程度を仮置きできます。
  • 中小病院:初期500万〜3,000万円程度が目安です。
  • 中大規模病院:総合的な構成では初期3,000万円〜1億円超の可能性があります。

病院向けの数字は、部門連携や機器、移行、冗長化、保守などを含む類似の基幹システムからの推定で、公的な統一価格ではありません。そのため、同じ要件で見積もりを取り、金額の根拠を確認します。

初期費用以外の見積もり項目

見積書では、導入時と稼働後の費用を分けて確認します。初期費用だけでは、継続費用や更新費用を比べられないためです。

  1. 導入時:要件定義、ライセンス、設定・開発、連携の費用がかかります。端末、基盤、ネットワーク、認証、バックアップも含まれます。
  2. 移行・切替:データ移行、テスト、教育、切替支援。
  3. 稼働後の利用料:月額利用料、保守。
  4. 稼働後の運用:制度改定対応、問い合わせ、回線、端末更新、バックアップ保管。
  5. 追加費用:追加帳票、機能追加、障害時の現地対応。

安く見える提案ほど、見積もりに載っていない項目がないかを丁寧に確かめます。

比較には、5年間のTCO(総保有コスト)を使います。計算式は、初期費用と、月額・保守費の60か月分を足し合わせたうえで、次の費用を加えます。

  • 端末・回線の費用。
  • 移行・教育の費用。
  • 追加開発・障害対応の費用。
  • 更新費。

クラウドは、サーバー購入費を抑えやすい反面、継続費用が発生します。オンプレミスは自由度が高い代わりに、更新費や保守費がまとまって発生します。

診療停止のリスクや職員の運用負担も金額に換算し、TCOと合わせて比べます。

ポイント

費用は、初期費用だけでなく、月額・保守や端末、移行、教育、更新費を含む5年間のTCOで比べます。同じ条件の相見積もりにそろえると、金額の差の理由が分かりやすくなります。

医療機関向け電子カルテシステムの開発会社・ベンダーの選び方

開発会社やベンダーを中心に、施設条件、導入後の結果、データ返却、障害・問い合わせ対応を注釈した図。
稼働実績と契約後の支援条件を同じ評価の中で確認できます。

開発会社やベンダーは、知名度や機能数だけでなく、類似施設の稼働実績や連携設計力、現場を支える体制で比べます。

医療IT専業の会社、総合的なシステムインテグレーター、クラウドサービス提供者では、得意な領域が異なります。そこで、同じ評価表で確認します。

導入実績の確認方法

「医療機関への導入実績が多い」といった説明は、そのままでは判断材料として足りません。自院に近い事例と、稼働後の結果を確かめます。

  • 施設条件:病床規模、診療科、救急の有無、複数拠点、既存機器。
  • 移行条件:紙カルテからの移行など、自院に近い条件の事例。
  • 導入後の結果:記録時間、問い合わせ件数、障害対応、追加費用、現場の評価。

製品を納めた実績と、要件定義から切替後の運用まで責任を持った範囲は、分けて聞きます。

再委託先がいる場合は、連携開発やデータ移行などを実際に担う相手を確認します。また、組織として引き継げるか、障害時に一つの窓口で調整できるかも見ます。

技術・安全管理・データ可搬性の確認事項

技術面では、接続性と性能、復旧、契約終了時のデータ返却を確認します。画面で閲覧できることと、別のシステムで再利用できる形式で出力できることは、同じではありません。

  • 接続・データ:API、標準規格、データ項目、外部接続方式。
  • 運用性能:性能上限、バックアップ、復旧目標、ログの保存期間。
  • データ返却:契約終了時の形式、期間、費用。サンプルデータで実演を依頼します。

安全管理では、職種・役職・施設単位の権限、多要素認証、端末管理を確認します。さらに、暗号化や脆弱性対応、パッチ適用も確かめます。加えて、外部媒体の制御や監査ログ、リモート保守、委託先管理まで見ていきます。

厚生労働省の安全管理ガイドラインは、2026年6月に改訂された第7.0版で、概説や経営管理、企画管理などの編に分けて整理されています(出典: 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第7.0版」、2026年)。

提案書に「準拠」と記載があるかだけでなく、どの機能と運用で対応するのかを説明してもらいます。

導入後の保守・支援体制の比較

支援の内容は、問い合わせや障害など用途によって異なります。そのため、契約の範囲と継続体制を分けて比べます。

  • 障害・問い合わせ対応:操作質問、制度改定、障害、セキュリティインシデント、機器交換、追加要望への支援内容。
  • 契約条件:受付時間、一次回答目標、重大障害の連絡経路、復旧目標、代替運用、現地対応の条件。
  • 費用範囲:月額保守に含む作業と別途見積もりの作業。分けておくと稼働後の予算超過を抑えやすくなります。
  • 更新・教育:制度・標準仕様の更新方針、テスト環境、職員への追加教育、管理者向け運用レポート。
  • 引き継ぎと比較:引き継ぎ資料を納品物に含め、3社以上へ同条件で依頼します。

納品物には、管理者マニュアルや構成図、権限一覧を含めます。連携仕様や障害時手順も、納品物として求めます。

比較では、同じRFPと診療シナリオを使い、価格だけでなく回答の具体性とリスクの説明力も見ます。

▶ 詳細はこちら:医療機関向け電子カルテシステム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方

▶ 詳細はこちら:医療機関向け電子カルテシステム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

ポイント

開発会社は、類似施設の稼働実績や稼働後の結果、障害時の支援体制を基準に比べます。提案書の記載だけでなく、回答の具体性を同じ評価表で確かめると、差がはっきりします。

セキュリティ・標準化・AIの最新動向

2026年の選定では、診療機能に加えて、将来の更新を見据えた標準化と安全管理も考えます。国も、標準規格に準拠したクラウドベースの標準型電子カルテを進めています。

目標は、遅くとも2030年までに、概ねすべての医療機関で標準化された電子カルテを導入することです(出典: デジタル庁「健康・医療・介護」、2026年6月)。ただし、導入時期が先になる場合でも、標準規格への対応方針を確認しておけば、将来の連携や更新で不利になりにくくなります。

2026年の安全管理で優先する事項

アクセス範囲は、職種・役職・施設・業務の単位で定め、共有アカウントは避けます。そのうえで、運用手順には認証や機器管理を含めます。さらに、復元テストとログ確認も加えます。

  • 認証・接続:多要素認証と外部接続の制限。
  • 機器・脆弱性:端末・ネットワーク機器の台帳、脆弱性とパッチの管理。
  • 監査・復旧:バックアップの復元テストと監査ログの確認。

厚生労働省の2026年度版チェックリストは、保守契約の範囲内は事業者が対応できているか、範囲外は医療機関が担うかを確認する考え方を示しています(出典: 厚生労働省「令和8年度 医療機関・薬局におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト」、2026年)。

BCPでは、通信断や停電、サーバー障害などを想定します。ランサムウェアや連携先の停止も、想定の対象です。紙の処方・記録への切替、参照する患者情報、復旧後の再入力を訓練します。

連絡網、厚生労働省などへの報告判断、復旧後の証跡確認も確かめます。平時の点検と障害時の判断を職員が実行できることが、安全につながります。システムの導入そのものが、安全対策になるわけではありません。

標準規格とAIの取り入れ方

標準規格とAIは、連携やデータ管理の方針と、人が確認する運用を分けて考えます。

  • 標準規格の役割:導入時にすべての連携を完成させるためだけのものではありません。
  • 対応状況の確認:HL7 FHIR、SS-MIX2、DICOM、APIを確認し、独自項目は意味、変換方法、出力形式を文書化します。
  • 連携の優先順位:標準型電子カルテや電子カルテ情報共有サービスを見据え、今必要な連携と将来対応を分けます。
  • AIの用途:音声入力、診療録の要約、文書の下書き、検索、集計など、職員を補助する用途から始めます。
  • AIの承認と管理:AIは人の業務を支援し、有資格者が確認・承認します。診断や投薬の最終判断は人が担います。

標準規格は、患者情報を施設・サービス間で安全に交換し、将来の更新時にデータを持ち出すための基盤です。

AIの出力は、確定した記録ではなく、根拠を確認できる下書きとして扱います。要件には、誤生成の修正履歴や参照情報、患者データの外部送信・学習利用を含めます。さらに、停止や手動切替、ベンダー障害への対応も必要です。

導入・開発で起こりやすい失敗と対策

失敗は、製品機能の不足だけで起きるとは限りません。目的があいまいなままの選定や、現場代表者の不足、移行や教育の後回し、保守契約で受け持つ範囲の見落としも、不満や追加費用につながります。

カスタマイズの増えすぎを防ぐ方法

要望の必要性と現場への影響を比べ、実装する範囲や見送る要望の扱いを決めます。

  • 過剰な再現を避ける:紙帳票の見た目や職員ごとの入力方法をすべて再現すると、費用とテスト工数が増え、制度改定時の保守も難しくなります。
  • 要望を評価する:患者安全、診療時間、法令・制度上の必須性、代替運用を確認し、標準機能、設定、連携、個別開発から対応を決めます。
  • 変更を管理する:カスタマイズを単純に拒まず、標準化の効果と移行負担を比べます。採用しない要望は理由と代替策を記録し、将来の追加開発候補として管理します。

移行と稼働後の運用で起きやすい問題

移行時のデータ品質を検証するとともに、稼働後の対応体制と改善指標を、あらかじめ定めておきます。

  • 移行時のリスク:旧データの欠損、重複患者、表記揺れ、日付形式、文字化け、画像・文書の紐付け違い。
  • 移行検証:項目を洗い出し、テスト移行、件数照合、サンプル確認、現場承認を複数回行います。
  • 移行範囲:全量移行が難しい場合は参照方法、保管期間、検索性、開示請求への対応を決めて対象を絞ります。
  • 稼働後の体制:問い合わせ集中期、障害の優先度、代替運用からの復帰、再入力の責任者を決めます。
  • 改善指標:記録時間、待ち時間、入力漏れ、レセプト返戻などをKPIに設定します。連携エラー、問い合わせ解決時間、障害件数、職員利用率も対象にします。

導入前の基準値を測っておくと、感覚だけでなく数字をもとに改善を続けられます。

よくある質問(FAQ)

電子カルテの選定では、施設ごとに正解が異なります。そのため、よくある疑問も自院の条件に置き換えて考えることが大切です。導入前によく聞かれる3つの疑問を、判断の見方とあわせて答えます。

医療機関向け電子カルテシステムはどれくらいの費用がかかりますか?

診療所向けクラウド型は初期0〜150万円、月額1〜5万円程度が目安です。病院は、連携範囲や病床数によって、初期費用が500万円から1億円超まで変わります。

病院の数字は公開された統一相場ではなく、構成から見た概算です。そのため、月額・保守や端末、回線を含む5年間の費用を、同じ条件の相見積もりで比べます。移行、教育、更新費も含めて確認します。

クラウド型なら通信障害が起きても診療できますか?

クラウド型でも、通信が止まれば通常どおり使えるとは限りません。回線の二重化、モバイル回線などの代替、障害時に参照できる患者情報を確認します。

紙の記録や処方への切替と、復旧後の再入力手順も決めておきます。ベンダーの稼働率だけでなく、院内ネットワークや端末、認証機器を含めて、復旧の責任を明確にします。

AI機能を電子カルテに搭載しても安全ですか?

安全性は、AIの有無よりも、使う業務とデータ、最終承認者によって決まります。音声入力や文書の下書きなど、人が確認できる用途から始めます。

誤生成の修正履歴と参照根拠を確認し、患者データの保存や学習利用、外部送信、停止手段も確かめます。診断や投薬の最終判断は、AIに委ねず、担当者が確認して確定します。

まとめ

電子カルテは、診療録の電子化に加えて、部門連携や医事会計、画像・検査、地域連携などを含む基幹システムです。セキュリティや障害時運用も含めて考える必要があります。

選定では、施設タイプと優先課題を定めたうえで、クラウドとオンプレミス、パッケージと個別開発の組み合わせを比べます。

導入前に確認する項目

RFPには、診療シナリオや必須機能、連携先、移行範囲を記載します。さらに、5年TCOやセキュリティ、BCP、標準規格、AI利用方針も含めます。保守範囲とデータ返却条件も書き添えます。

ベンダーには、同規模・同診療科の実績と担当体制を確認します。障害時の連絡経路や制度改定への対応、稼働後KPIの支援方法も確かめます。

初期費用の安さだけでなく、診療を止めずに使い続けるための総額と体制を重視すると、長期的な失敗の防止につながります。

最初の取り組み

導入に向けては、現場課題の整理から候補の比較まで、段階を追って進めます。

  1. 現場業務を患者の流れに沿って一覧にし、電子カルテで解決したい課題を3つ程度に絞ります。
  2. 必要なデータと連携を整理し、標準化や安全管理、データ可搬性、AIの人間承認を要件に含めます。
  3. 複数の候補へ同じ条件でデモと見積もりを依頼します。導入直後だけでなく、更新や施設間連携も見据えて選びます。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。